急襲
「じゃあ、いいかしら?」
全員が揃い、落ち着いたところでフランネルが口を開いた。
「仮説に基づいた作戦は、総統本人から説明してもらうのが一番いいわよね?」
フランネルの言葉に、思わず聞き返す。
総統本人が説明する?
つまり、総統がここへ来るということか。
皆も同じことを考えたのか、部屋の空気に緊張が走った。
「…つまり、総統が来るということかしら?」
しばらくの沈黙の後、グラッドが慎重に尋ねる。
「総統は来ないわよ」
フランネルは、あっさりと否定した。
「じゃあ、どうやって説明してもらうんだ?」
グラッドが訝しげな視線を向ける。
「これよ、これ」
そう言って、フランネルは懐からガラケーを取り出した。
「なるほどね。総統の顔も知られずに済むし、その方が都合がいいってことね」
グラッドが納得したように頷く。
「そういうわけではないのだけど…」
フランネルは困ったように眉を下げた。
「まあ、いいわ。掛けるわよ」
それ以上説明するのが面倒になったのか、フランネルはすぐにガラケーを操作し始めた。
ポチ、ポチ、ポチ。
慣れた手つきでボタンを押していく。
一つボタンが押されるたびに、なぜか場の緊張が高まっていく。
そして
「…あれ? おかしいわね?」
フランネルが眉をひそめた。
「何かあったのか?」
その様子を見て、思わず尋ねる。
「…通信できないの」
フランネルが小さく呟いた、その瞬間。
ビーッ!
ビーッ!
ビーッ!
けたたましいアラート音が鳴り響いた。
続いて、館内放送が流れる。
『緊急事態! 緊急事態!』
『通信施設に多数の魔物が襲撃! 戦闘員は直ちに対処へ向かえ! 繰り返す! 通信施設に多数の魔物が襲撃! 戦闘員は直ちに対処へ向かえ!』
緊迫したアナウンスが館内に響き渡る。
「…意趣返し?」
フランネルは慌てる様子もなく、目を細めながらぽつりと呟いた。
「おい! 私たちも魔物の討伐を手伝う! 通信施設とやらに案内しろ!」
ルドベックが勢いよく立ち上がる。
「恩を借りっぱなしでは性に合わん!」
「そうね。アタシも恩は返したいわ。いいわよね?」
グラッドも立ち上がり、スピレアへ確認する。
「うん。手伝いに行こう」
スピレアも立ち上がり、力強く頷いた。
「よし!」
俺も三人のように立ち上がり、戦闘へ向けて心を整えた。
「はぁ…」
そんな俺達を見て、フランネルは呆れたようにため息をつく。
「このアインステラが、魔物ごときに落とされるとでも?」
そして、余裕たっぷりの笑みを浮かべた。
「そういうことを言っているわけではない!」
ルドベックがすかさず反論する。
「分からないの?」
フランネルは、再びため息をついた。
「ここはアインステラよ?」
そして、自信満々に続ける。
「地上では使用を制限している武器も、ここなら思う存分使えるの」
「しかし、人手は多いに越したことはないだろ!」
ルドベックは、それでも食い下がる。
「機械を扱えない素人が戦場に行っても、邪魔になるだけよ」
「うっ…」
フランネルの自信に満ちた視線と厳しい言葉に、ルドベックがたじろぐ。
「それに、フランちゃんたちにも、あなたたちにもやることがあるでしょう?」
フランネルは、諭すような口調で続けた。
「ここはフランちゃんたちの組織に任せて、私たちは自分たちの目的を果たしに行くわよ」
「行くって、どこへだ?」
ルドベックが眉をひそめて尋ねる。
フランネルは腰に手を当て、余裕の笑みを浮かべた。
「決まっているでしょう?」
そして、堂々と言い放つ。
「総統に会いに、サカリウムへ行くのよ」




