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精霊術師の終着点 〜 短い言葉に込めた重い物語 〜  作者: ワイパス
アインシュ族
132/138

告白

日本語…

聖霊文字…

魔族…

精霊…

勝手に思考が頭を巡る。

「作られた歴史って訳か…」

身体は疲れているはずなのに、どうしても眠る気にはなれなかった。

ベッドに横になり、天井をぼんやりと見つめながら呟く。

魔族…

名付け…

夢…

記憶…

頭の中を、次々と考えが駆け巡る。

「…ダメだ。考えるな!」

俺は上半身を起こし、首を大きく振って無理やり思考を振り払った。

「俺は…転生者なんだ…」

自分に言い聞かせるように、弱々しく呟く。

その時。

コンコンコン。

扉を叩く音が響いた。

「アスター、まだ起きてる?」

続いて、スピレアの声が聞こえてくる。

一人でいると、また余計なことばかり考えてしまいそうだった。

まさに渡りに船だ。

「起きてるよ。少し部屋で話さない?」

俺はベッドから立ち上がり、扉を開けた。

「うん。私もアスターと話したかったの」

スピレアは頷きながら、真っ直ぐに俺の顔を見る。

その瞳には、はっきりとした決意が宿っていた。

「な、なら…ちょうどよかった。入って」

その視線の熱に少し押され、逃げるようにベッドへ向かう。

そして腰を下ろすと、隣をポンポンと叩いた。

「ここ、座って」

「お邪魔します」

スピレアは少し緊張した様子で、俺の隣に腰を下ろした。

「…」

気まずい沈黙が、部屋いっぱいに広がる。

そして

「あの…」

「その…」

二人同時に声を発した。

「…」

しかし、どちらからともなく口を閉じる。

再び沈黙。

「スピレア…」

「アスター…」

今度は、お互いの名前を同時に呼んだ。

「ははっ」

「ふふっ」

思わず笑いが漏れる。

「ははは、なんだよ」

「ふふふ、アスターこそ」

笑いを堪えながら言うと、スピレアも口元を押さえながら笑い返してくる。

我慢の限界だった。

「はははははっ!」

「ふふふふふっ!」

何がおかしいのか、自分でもよく分からない。

それでも、二人して声を上げて笑い合った。

「はぁ…それで、話っていうのは?」

ひとしきり笑い合ったおかげで、先ほどまでの気まずい空気はすっかり消えていた。

俺は改めてスピレアへ話を振る。

「ふぅ…よし!」

スピレアは小さく深呼吸をすると、覚悟を決めるように呟いた。

「最初はね。アスターのこと、お伽噺に出てくる勇者様みたいだって憧れてたの」

そう言って、スピレアは静かに語り始める。

「…?」

突然の話に意味が分からず、首を傾げながら黙って聞いた。

「でもね。一緒に旅をするようになって、アスターってどんな人なんだろう、とか。何が好きなのかな、とか…色々考えるようになったの」

スピレアは少し照れくさそうにはにかむ。

「そうしたら、少しずつアスターのことを身近に感じられるようになったの」

そして、一度言葉を切った。

「それでね…私、気づいちゃったの」

スピレアは、真っ直ぐに俺の目を見る。

「…私は、アスターが好き」

少しの間を置いて、今度ははっきりと言った。

その瞬間、自分の正体についての疑念が脳裏をよぎる。

スピレアを騙しているような気がして、胸がズキリと痛んだ。

「でも…俺は記憶がないから…本当は、悪い人かもしれないよ…?」

弱々しい声しか出なかった。

それ以上は言えなかった。

思考を巡らせれば、自分の過去に簡単に辿り着いてしまいそうで…それが怖かった。

それでも、スピレアを騙したくはない。

その二つの感情から絞り出せた、精一杯の言葉だった。

「アスターが何者でも、私は受け入れるよ」

スピレアは迷うことなく答える。

「アスターが悪い人じゃないって、私は信じているから」

真っ直ぐな視線が、俺の良心に突き刺さる。

「…」

その視線に耐えきれず、思わず俯いてしまった。

「…自分が何者なのか分からないって、怖いんだよね?」

少しの沈黙の後、スピレアが優しく尋ねる。

「でも、大丈夫だよ」

そして、俺の手に自分の手を重ねた。

「これからは、私が支えてあげるから。今までアスターが私を支えてくれたようにね」

「…」

「できれば…これからも、ずっと一緒に支え合いたいな」

最後の言葉は、恥ずかしそうな小さな声だった。

「だったら…」

今からでもバルダックに帰って、一緒に暮らそう。

そう言おうとした。

しかし、その言葉を最後まで口にすることはできなかった。

スピレアが突然立ち上がったからだ。

「…?」

ふと顔を上げる。

スピレアの顔は、耳まで真っ赤になっていた。

目も忙しなく泳いでいる。

どう見ても、もう余裕がなさそうだった。

そして、俺の言葉を遮るように慌てて口を開く。

「返事は、後でいいから!」

「え?」

「またね!」

それだけ言うと、スピレアは逃げるように部屋を飛び出していった。

「あっ…待って…」

呼び止めようとしたが、間に合わなかった。

静かになった部屋に、一人取り残される。

「…どうしよう」

また一つ問題が増えてしまった。

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