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精霊術師の終着点 〜 短い言葉に込めた重い物語 〜  作者: ワイパス
アインシュ族
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続行

「スピレア…?」

スピレアの姿を見た瞬間、ある考えが頭に浮かんだ。

俺は、一目散にスピレアのもとへ駆け寄る。

そして、その肩を掴んだ。

「へっ? アスター?」

スピレアが目を丸くしてこちらを見る。

「スピレア! こんな旅なんて辞めて、一緒にバルダックへ帰ろう!」

必死に訴えながら、スピレアの肩を揺らす。

「そして、皆で平和に暮らそう!」

必死になりすぎて、声まで大きくなっていた。

「えっ? ちょっと待ってよ、アスター?」

スピレアは、身体を揺さぶられながら困惑した声を上げる。

「このままじゃ、スピレアは死んじゃうんだよ!」

言葉が止まらない。

「それに、お父さんとお母さんも助かったんだから! もう旅なんて辞められるじゃん!」

俺は必死だった。

スピレアを旅から離脱させる。

そうすれば、もうこれ以上。

何も考えなくて済む。

何も知らなくて済む。

俺は、自分の正体から逃げるための口実を、必死になって得ようとしていた。

「アスター、落ち着いて…痛いよ…」

スピレアが、揺さぶられながら苦しそうに言う。

どうやら、無意識のうちに力が入りすぎていたらしい。

「あっ…ごめん…」

その言葉で、ようやく我に返った。

慌ててスピレアの肩から手を離す。

「どうしたの? アスターらしくないよ?」

スピレアが心配そうにこちらを見つめてくる。

「…」

その視線から逃げるように、俺は顔を逸らした。

すると、スピレアが少し困ったように微笑んだ。

「それにさ…昔から夢だったんだ」

そして、静かに言葉を続ける。

「皆が平和に暮らせる世界って」

スピレアは、まるで自分自身に言い聞かせるように語る。

「だから、今さら投げ出さないよ」

そう言って、俺を真っ直ぐに見つめた。

その瞳には、迷いがなかった。

あまりにも純粋で、真っ直ぐな眼差しだった。

だからこそ

俺には、その目を直視することができなかった。

「でも…スピレア、死んじゃうんだよ…?」

最後の抵抗だった。

弱々しい声で、もう一度だけ訴える。

「ふふっ」

すると、スピレアはおかしそうに笑った。

「魔王は討伐するんでしょ?」

そして、優しく微笑む。

「アスターが言い出したことじゃん」

「…」

何も言い返せなかった。

ただ、過去の自分の無責任な言葉を恨みながら、俯くことしかできなかった。

「本当に、魔王討伐をするの?」

代わりにフランネルが口を開いた。

「うん。その予定だよ」

スピレアが頷いて答える。

「討伐の方法は?」

フランネルは、淡々と尋ねた。

「それは…まだ分かんないや…」

スピレアは困ったように眉を下げる。

「はぁ…」

フランネルは、やっぱりね、と言いたげにため息をついた。

そして

「方法なら、あるわよ」

自信満々に言い切った。

「えっ…?」

「嘘…?」

「なっ…」

予想外の言葉に、スピレア、グラッド、ルドベックが一斉に反応する。

「総統が、ある仮説を立てたのよ」

フランネルはそう言いながら、机の上に置かれた本へ視線を落とした。

「その仮説を裏付ける資料として、それらしきものを盗んできたんだけど…読めないのよね」

そう言って、困ったようにため息をつく。

そして、誰か読めないかと尋ねるように、グラッド、ルドベック、スピレアへ順番に視線を向けた。

しかし、三人とも揃って首を横に振る。

やがて、その視線が俺へと向けられた。

「…」

ドキリ

と心臓が大きく脈打つ。

冷や汗が背中を伝う。

俺は、これ以上この文字に関わりたくなかった。

だから、その文字と視線から逃げるように小刻みに首を横に振った。

「仕方ないわよね。おそらく、日本語で書かれているもの…」

フランネルが、ぽつりと呟く。

「えっ…?」

その言葉に、スピレアが反応した。

そして、ちらりと俺を見る。

一瞬、スピレアと目が合ったが反射的に反らしてしまう。

「どうかしたの?」

スピレアの反応を不思議に思ったフランネルが、首を傾げる。

「ううん! 何でもないよ!」

俺の様子から察してくれたのか、スピレアは慌てたように両手を振って答えた。

「…そう?」

フランネルは、どこか引っかかるものを感じているようだった。

しかし、それ以上は追及しなかった。

「まあ、仕方ないわね。今日はもう遅いし、眠りましょう」

そして、話を切り上げるように続ける。

「部屋は用意してあるわ」

「ついていらっしゃい」

そう言うと、フランネルは部屋の外へ歩き出した。

俺たちは、その後を追って廊下へ出る。

そして、用意されていた部屋へ、一人ずつ案内されていった。

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