名産?
「それにしても、アスちゃんって何者なの?」
教会を抜け出し、人通りの少ない川辺までやって来た。
適当な石に腰を下ろくと、ローレルがこちらを見つめて尋ねてくる。
その目は、普段の気だるげな雰囲気とは違い、こちらの本質を見抜こうとするように鋭かった。
「…おそらく、転生者ってやつだと思う」
五行すべてに適性がある。
神父やローレルの反応を見る限り、魔力容量も相当らしい。
そう考えると、それくらいしか説明がつかなかった。
「転生者…?」
ローレルが眉をひそめる。
「あー、なるほどね。そういうことか。了解了解。」
少し考え込んだあと、納得したように頷いた。
…本当に分かっているのか?
このギャル、適当に相づちを打つタイプにしか見えない。
少し意地悪したくなった。
「本当に分かってるのか? 転生者って何だ?」
ニヤリと笑って聞いてみる。
「あれっしょ? 女神様が特別な力を授けて、別の世界で人生をやり直させるって昔話に出てくるやつ。」
即答だった。
…正解だ。
いや、この世界では常識なのか?
そんな考えが頭をよぎる。
「黙り込んじゃってどしたん? あーしなら分かんないって思ってた感じ?」
ローレルが悪戯っぽく笑いながら顔を覗き込んでくる。
「…」
図星だった。
何も言い返せない。
「アスちゃん、分かりやすすぎてウケるー。」
ローレルがケラケラと笑う。
悔しい。
だが、反論できる材料が何一つなかった。
…このギャル、侮れない。
「まあまあ。まだ時間あるし、この村を案内しようか?」
空気を読んだのか、スピレアが間に入ってくれた。
ローレル相手では、このまま負け続ける未来しか見えない。
渡りに船だった。
それに、この村について知っていることといえば、牢屋が一番安全だったことくらいだ。
「いいね! 案内頼む!」
勢いよく返事をする。
「逃げるなし。」
ローレルがぼそりと恨み言を漏らした。
…聞こえなかったことにしよう。
「この村って、バルダックだっけ? 何か名物でもあるの?」
話題を完全に観光へ切り替える。
すると
「…」
「…」
「…」
スピレアも、グラッドも、ローレルも黙り込んだ。
…え?
案内するって言ったの、そっちだよね?
妙な沈黙が流れる。
やがて、スピレアがおずおずと口を開いた。
「…温泉、かな?」
温泉?
温泉だって?
それは最高じゃないか。
昨日から風呂に入れていない身としては、まさに至高の名産だった。
「行きたい!!」
即答だった。
しかし、三人の反応はなぜか微妙だった。
グラッドは困ったように頬をかき、
スピレアはどこか申し訳なさそうに笑い、
ローレルに至っては、露骨に嫌そうな顔をしている。
…なんだ?
この世界では温泉は人気がないのか?
三人とも風呂キャン界隈なのだろうか。
そんな失礼なことを考えていると、
「…いいけど、ちょっと遠いわよ?」
グラッドが渋々といった様子で了承した。
何か引っかかるものはあった。
だが、温泉に勝てる理由などあるはずもない。
そのまま温泉へ向かうことにした。




