魔力容量
「まず、魔力っていうのは、人それぞれ持てる量が決まっているの。その上限を魔力容量って呼ぶんだよ。
普段は容量の三割くらいしか魔力を溜めていないの。でも、魔力石を使って一時的に魔力を過回復させれば、その人の本当の魔力容量を測れるんだ。」
スピレアが測定の仕組みを丁寧に説明してくれる。
普段は三割しか溜められないものを、無理やり増やす。
…なんだか危険そうな響きだ。
そんな心配をよそに、神父が台車に大きな測定器を乗せて運んできた。
「うーん…?たぶん大丈夫だとは思うんだけど、このサイズの魔力石しか手に入らなくてね。最近は採掘量が減っているらしくて、貴重なんだよ。」
神父は測定器を見つめながら、不安そうにぶつぶつと呟く。
どうやら心配しているのは、俺ではなく測定器のほうらしい。
…こいつ、本当に神父か。
「大丈夫よ。こんなに大きな魔力石なんだもの。使い切るなんてあり得ないわ。そんなことができたら、ただの化物よ。」
グラッドが苦笑しながら神父をなだめる。
「そ、そうだよね…?」
それでも神父の表情は晴れない。
ここまでの話をまとめると、精霊術師とは五行すべてに適性を持ち、なおかつ莫大な魔力容量を持つ人間らしい。
「それじゃあ、この手形に手を乗せて。」
神父に促され、黒い石、魔力石が据えられた台座へ近づく。
石には手形が刻まれていた。
言われた通りに手を重ねる。
その瞬間、魔力石が淡い紫色に輝いた。
どうやら、こちらは何かを意識する必要はないらしい。
便利な装置だな。
そんなことを考えていると、紫色の光が徐々に弱くなっていく。
…あれ?
大丈夫なのか?
不安になって神父を見る。
神父の顔から、みるみる血の気が引いていく。
そして
…光が完全に消えた。
「ああああああっ!!」
神父が絶叫した。
「な、なんてことを……! いや、喜ぶべきなのか!? 本部には何と報告すればいいんだ!?」
喜び、驚き、困惑。
あらゆる感情が一度に爆発したようだった。
神父は落ち着きを失い、ぶつぶつと独り言を呟きながら教会の中を歩き回る。
かと思えば、魔力石を愛おしそうに撫で始め、また歩き回る。
…完全に壊れたな。
呆れながら眺めていると、肩を三度ほど軽く叩かれた。
振り向くと、グラッドが口元に人差し指を当てている。
「…こっそり逃げるわよ」
耳元で小さく囁かれた。
俺は黙って頷く。
二人で抜き足、差し足、忍び足。
気配を殺しながら、そっと教会を抜け出した。
外へ出ると、スピレアとローレルはすでに逃げ出した後だった。




