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精霊術師の終着点 〜 短い言葉に込めた重い物語 〜  作者: ワイパス
アインシュ族
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本拠地

石の中へ入ると、そこには二十人ほどが乗れそうな、エレベーターのような空間が広がっていた。

「…ここが本拠地?」

あまりにも何もない。

さっきまでの期待が一気にしぼみ、思わず尋ねる。

「そんなわけないじゃない」

フランネルが呆れたようにツッコんだ。

「全員乗ったわね?」

フランネルは全員の顔を一人ずつ確認すると、壁に手を触れた。

すると

音もなく扉が閉じる。

次の瞬間。

「…っ」

身体がふわりと浮いたような感覚に襲われた。

まるで、エレベーターそのものが落下しているようだった。

「…なんだ?」

ルドベックが不審そうに辺りを見回す。

「魔導昇降機よ」

フランネルが何でもないことのように答える。

「今から、どこへ連れて行く気?」

グラッドが警戒したままフランネルへ尋ねる。

「言ったじゃない。アインシュ族の街へ行くのよ」

「アインシュ族の街…」

しばらくの間、浮遊するような感覚が続く。

やがて、ずんっと身体に重力が戻ってきた。

「…着いた?」

そう呟いた直後、扉が静かに開く。

その瞬間。

眩しい光が差し込んできた。

「…!」

思わず目を細める。

扉の向こうから差し込んでくるのは、昼の太陽とはまったく違う光だった。

ピンク

無数の光が輝き、暗闇の中を鮮やかに照らしている。

「いらっしゃい」

フランネルが振り返る。

「ここがアインシュ族の街、アインステラよ」

そう言って、ナルシサスとクロマルを連れて扉の外へ出ていく。

「…」

グラッドとルドベックの顔を見る。

二人も、目の前の光景に驚いているようだった。

やがて互いに顔を見合わせる。

そして、意を決したように頷いた。

フランネル達に続いて扉の外へ足を踏み出す。

「…すごい」

思わず、声が漏れた。

そこに広がっていたのは、想像していたアインシュ族の集落とはまるで違う光景だった。

広大な地下空間。

その中には、高い建物が幾つも立ち並んでいる。

道路には無数の人々が行き交い、建物の壁面には巨大な広告が映し出されていた。

色とりどりのネオンが街を照らし、見たこともない乗り物が静かに宙を走っている。

森の中に隠されていたとは到底思えない。

地上のどんな街よりも発達した、巨大な都市が広がっていた。

「どう? 驚いたでしょ?」

フランネルが振り返り、胸を張る。

その顔には、勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた。

「すげぇ!」

目の前に広がる光景に、少年心を抑えきれなかった。

思わず声を上げ、興奮したまま街を見回す。

「おい!」

すかさず、ルドベックから声が飛んできた。

「…すまない。つい」

そこで、ハッと我に返る。

一人だけテンションが上がっていたことに気づき、急に恥ずかしくなった。

「…こんなものを見せられたら、仕方ないわよ」

グラッドが苦笑しながらフォローしてくれる。

「何なら、案内しましょうか?」

フランネルが、ニヤニヤを隠しきれない様子で尋ねてきた。

「是非!」

反射的に答えてしまった。

「ここは敵の本拠地だということを分かっているのか! 愚か者!」

ルドベックが激怒し、詰め寄ってくる。

「そうよ。スピレアが大変な時に、呑気に観光なんてしていられないでしょう」

グラッドからも冷ややかな視線が飛んできた。

「…ごめん。つい…」

自分の軽率な行動を恥じ、素直に謝る。

「ふふっ。観光してても大丈夫よ」

フランネルが楽しそうに笑う。

「今頃、パパとママと家族団らんの時間を過ごしているんじゃないかしら?」

「…家族団らん?」

その言葉に引っかかった。

「…助けてくれたのか?」

「当たり前じゃない」

フランネルは、さも当然のことのように素っ気なく答えた。

「そうか…ありがとう」

胸の奥から、力が抜けていく。

パウロで起きた出来事。

フランネルの言葉。

スピレアの旅の理由。

それらが一本に繋がった。

「…どういうことよ?」

「どういうことだ?」

グラッドとルドベックが、状況を理解できずに尋ねてくる。

「俺から言っていいのかなぁ」

スピレアの秘密を、本人の許可なく話していいものなのか。

そう考えると、口が重くなる。

弱気になり困ったように眉を寄せながら、フランネルへ視線を向けた。

「スピレアから直接、話してもらったほうがいい気がするんだけど…」

「それなら、本人に話してもらいましょう」

フランネルはあっさりと答える。

「声を聞ければ、あなたたちも納得するでしょ?」

そう言うと、懐から一台のガラケーを取り出した。

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