隠し扉
それから、しばらく森の中を歩いた。
やがて、フランネルたちが一際大きな石の前で立ち止まる。
「着いたわよ」
フランネルが振り返って告げた。
辺りを見回す。
見渡す。
木々
木々
木々
集落らしきものはおろか、人の気配すら感じられない。
「…どこに着いたんだ?」
思わず首を傾げる。
「本拠地よ」
フランネルは、何でもないことのように答えた。
「…」
もう一度、注意深く辺りを見回す。
やはり何もない。
「どこにあるんだ?」
まるで馬鹿にされているような気がして、少し苛立ちながら尋ねる。
「ここよ」
そう言うと、フランネルは目の前の大きな石へ向かって歩き始めた。
「…?」
首を傾げてその様子を見守る。
石にぶつかる。
そう思った瞬間。
フランネルの身体が、大きな石の中へ吸い込まれていった。
「…え?」
続いて、ナルシサスとクロマルも何の躊躇もなく石へ突っ込んでいく。
二人の姿も、まるで最初からそこに何もなかったかのように消えていった。
「扉は隠してあるの」
石の向こうから、フランネルの声だけが響いてくる。
「おお!」
思わず声が出た。
何だこれ。
めちゃくちゃカッコいい。
少年心をくすぐられる光景に、胸が躍る。
ウキウキしながら、石へ向かって小走りで駆け出した。
そして
ガンッ!
「痛っ!」
普通に顔面から石へ激突した。
「…っ!」
鼻の頭を押さえながら、その場にしゃがみ込む。
「…あっ」
石の向こうから、フランネルの間の抜けた声が聞こえてきた。
「ちょ、ちょっと待ってね…えっと…ここを、こうして…」
何やら慌ただしく操作しているような音がする。
しばらく待っていると、
「これで…入れるわ。たぶん…」
気まずそうなフランネルの声が返ってきた。
「たぶんって…」
若干の不安を覚えながら、恐る恐る剣の鞘を石へ突き出す。
「…おぉ?」
今度は、石にぶつかる感触がない。
剣の鞘が、そのまま石を透過していく。
「おお!」
今度こそ間違いない。
「…締まらないわね」
グラッドのため息交じりの声を後から受けながら、嬉々としてそのまま石の中へ飛び込んだ。




