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精霊術師の終着点 〜 短い言葉に込めた重い物語 〜  作者: ワイパス
アインシュ族
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待伏せ

「フランネル!」

フランネルの姿を見た瞬間、反射的に後方へ飛び退き、距離を取る。

剣に手をかけながら、グラッドとルドベックへ視線を向けた。

そこには、剣を構えるナルシサスと尻尾を振るクロマルの姿があった。

どうやら、待ち構えられていたらしい。

フランネルたちの動きを警戒していると、彼女が口を開いた。

「スピレアを迎えに来たのでしょ?」

フランネルは武器を構えることもなく、まるで争うつもりなどないと言わんばかりの態度で尋ねてくる。

「ナルシサス! クロマル! 争わないで!」

そして、浜辺にいる二人へ声を飛ばした。

「分かったよ。フランちゃん!」

名前を呼ばれたクロマルが、嬉しそうに駆け寄ってくる。

ナルシサスも、名前を呼ばれたことが嬉しいのか、頬を緩めながら剣を下ろした。

その隙に、俺はグラッドとルドベックのもとへ駆け寄る。

「…待ち構えられていたのよね?」

グラッドが警戒を解かず、拳を構えたまま小声で尋ねてくる。

「たぶん…?」

フランネルたちから敵意は感じない。

けれど、状況が状況だけに、自信を持って答えることもできなかった。

「油断を誘う作戦に決まっているだろ。愚か者」

すかさずルドベックから厳しい指摘が飛んでくる。

「はぁ…」

こちらたちが一向に警戒を解こうとしないのを見て、フランネルは小さくため息をついた。

「フランちゃんたちは、スピレアのところまで案内しに来ただけよ」

呆れたような口調で告げる。

「騙されるか!」

「フランちゃんを疑うのか!」

ルドベックが即座に否定すると、ナルシサスが反射的に剣へ手を伸ばした。

「ナルシサス!」

フランネルが鋭い声を飛ばす。

「…ごめんよ、フランちゃん。怒らないでよ」

ナルシサスはしょんぼりと肩を落とした。

…何なんだ、この二人。

緊張感があるのかないのか、さっぱり分からない。

「だったら、フランちゃんたちの案内もなしに、どうやってスピレアの所まで辿り着くの?」

フランネルがルドベックを真っ直ぐ見据える。

「…それはだな…」

ルドベックが言葉に詰まった。

どうやら、そこまで考えていなかったらしい。

すると、グラッドがルドベックの肩をちょんちょんと突いた。

「…フランネルの言う通りよ。罠かもしれないけど、ここは彼女たちに従いましょう」

「罠だったらどうする?」

「その時は、暴れましょう」

グラッドは、不穏な笑みを浮かべながら即答した。

「…」

思わずグラッドを見る。

どうやら本気らしい。

ルドベックと視線を合わせて、小さく頷いた。

その様子を見てグラッドも頷いた。

「決まりね」

グラッドはそう呟くと、ようやく構えを解いた。

「分かったわ、フランネル。案内してちょうだい」

「良いわよ。着いてきて」

フランネルは満足そうに頷くと、背を向けて歩き始めた。

「待ってよ、フランちゃん!」

ナルシサスとクロマルも、その後を追いかけていく。

二人と一匹を見失わないよう、少し距離を空けてその後に続いた。

すると、しばらく歩いたところで、フランネルがふと足を止める。

そして、ナルシサスの方を振り返った。

「それと…」

急な事に思わず構えてしまう。

ナルシサスは、嬉しそうに自分のことを指差し何を言われるのか待ち構える。

「フランちゃんのことは副総統と呼びなさいって、何回言えば分かるのよ!」

「えっ?」

予想外の言葉に固まってしまった。

「バカナルシサス!」

こちらの様子など気にせずフランネルは、ナルシサスへの言葉を続けた。

「ご、ごめんよ、フランちゃん!」

ナルシサスは慌てて申し訳なさそうに謝罪する。

「だからフランちゃんって呼ぶな!」

浜辺に、フランネルの怒声が響き渡った。

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