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ブラフ

「あら?」

グラッドが少女を見つめ、目を細める。

そして、なぜか腰に手を当て、堂々と胸を張った。

…なんだか、嫌な予感がする。

そう思った次の瞬間。

「アタシたちは三人で間に合っているの。ごめんなさいね」

グラッドが得意げな顔で言い切った。

「何を言っている!」

「何を言っている!」

ルドベックと俺の声が綺麗に重なった。

「えぇ…」

少女も困惑した様子で一歩後ずさる。

心なしか、道端に横たわっていた人たちまで、少し距離を取ったような気がする。

「いや、えっと…その…」

少女が目を泳がせながら、何とか言葉を探す。

「信じないで!」

「信じるな!」

少女が本気でグラッドの言葉を信じている様子だったので、ルドベックと声を揃えて訂正する。

「…え? 嘘なの?」

少女は、ようやく少し落ち着きを取り戻したように尋ねる。

「当たり前だろ!」

「当たり前だろ!」

またしてもルドベックと声が重なった。

「なんだぁ。よかったぁ」

少女はホッと胸を撫で下ろす。

そして、すぐさま営業用の笑顔を浮かべた。

「じゃあ、スッキリしていかない?」

「しない!」

ルドベックが半ば苛立ったように即答する。

「えー、いいじゃん。減るもんじゃないんだから」

少女は頬を膨らませながら食い下がる。

「金が減るだろ!」

「まぁ、お金は貰うけど…」

少女は少し困ったように呟いた。

どうやら、そこは否定できないらしい。

「さっきも白髪の人たちに断られて、商売上がったりなの」

少女はそう言うと、今度は両手を合わせ、懇願するような仕草を見せる。

「だから、人助けだと思って。ね?」

「白髪の人たち…?」

その言葉に引っかかった。

アインシュ族のことか?

そう考え込んでいると、グラッドが少女へ一歩近づいた。

「その白髪の人たちについて、詳しく教えてくれる?」

先ほどまでの軽い調子とは違う。

グラッドは目を細め、真剣な表情を浮かべていた。

「もちろん。報酬も払うわ」

「ん?」

少女は首を傾げる。

「いいけど…あの人たちと、どういう関係なの?」

「その人たちと一緒に行動していたのだけど、街の騒動ではぐれちゃったの」

グラッドはしゃがみ込み、少女と目線を合わせる。

そして、安心させるように優しく微笑んだ。

「じゃあ、どうしてわざわざここを通るの?」

少女が怪しむような視線をグラッドへ向ける。

「白い髪だっただろ?」

二人の会話に割って入った。

「うん」

少女が真剣な眼差しで頷く。

グラッドが黙ったまま、こちらへ視線を送ってくる。

その視線に小さく頷いてから口を開いた。

「だから、あいつらはアインシュ族と間違われやすいんだ」

「アインシュ族と?」

「そう。こんな騒ぎの中で、アインシュ族だと勘違いされたら面倒だろ? だから、人目につく大通りじゃなくて、スラム街を通って逃げることにしたんだよ」

少女の反応を窺う。

どうやら、この話を疑っている様子はない。

少女の口ぶりからすると、白髪の人たちには一度声をかけている。

そして、スピレアから聞いた話を思い出していた。

アインシュ族は、おまじないによって瞳の色を変えられる。

つまり、目の前の少女にアインシュ族だと気づかれていないのなら、彼らは瞳の色を変えている可能性が高い。

そこから先は、ただの賭けだった。

もし本当にアインシュ族なら、この話で通る。

もし違っていたとしても、「アインシュ族に騙されていた人間」を演じればいい。

少なくとも、今はそれしか手掛かりがない。

「確かに…アインシュ族っぽかったね」

少女は納得したように頷いた。

どうやら、信じてもらえたらしい。

「友達なら、早く合流しないとね」

少女は立ち上がると、ニッコリと笑った。

「今どの辺にいるか、あてがあるから。付いてきてよ」

「本当か?」

思わず声が弾む。

どうやら、上手くいったようだ。

…とはいえ。

胸の奥が、チクリと痛んだ。

騙していることへの罪悪感が、遅れて良心を刺激する。

「もちろん、案内料はもらうけどね」

少女は悪戯っぽく笑った。

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