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スラム街

いつまでも食い下がるルドベックを適当にあしらいながら、グラッドの後を追う。

しばらく内壁の側を歩いた先で、一つの重厚な扉の前へとたどり着いた。

「本当にスラム街なんてあるのか?」

思わず疑いの目を向ける。

今まで見てきたパウロの街並みは、どこまでも美しく整えられていた。

そんな場所の中に、スラム街が存在するなんて想像もできない。

「あるわよ」

「あるぞ」

グラッドとルドベックが、ほぼ同時に答えた。

そして、グラッドは迷うことなく扉へ手を伸ばす。

「…開いているわね」

ゆっくりと扉を押し開きながら呟いた。

ギィィ…

重い音を立てながら扉が開いていく。

「ここから先は、もうパウロではないと思え」

ルドベックが険しい表情で忠告してくる。

「そんな大袈裟な…」

何かの冗談だろうと思いながら、軽い気持ちで扉の向こうを覗き込んだ。

「…なっ」

その瞬間、言葉を失った。

そこには、今まで見てきたパウロとは全く別の景色が広がっていた。

二重の城壁に挟まれた、取り残されたような区域。

崩れかけた建物。

整備されていない細い路地。

壁には汚れが染み付き、足元には瓦礫が散らばっている。

つい先ほどまで歩いていた、白く美しい街並みとはあまりにも違う。

同じ街の中に存在しているとは思えないほどだった。

「…」

言葉が出ない。

「行くわよ」

そんなこちらの様子を気にすることなく、グラッドは静かに中へ入っていく。

ルドベックも何も言わず、その後へ続いた。

「ま、待ってくれよ」

置いていかれないように、慌てて二人の背中を追いかける。

しかし、胸の奥には先ほどまでとは違う重い感覚が残っていた。


し尿が腐ったような鼻を刺す悪臭が漂う。

細い路地の脇には、生きているのか、それともすでに息絶えているのか判別もつかない人々が、力なく横たわっていた。

そんな光景の中をしばらく歩き、俺は耐えきれず口を開く。

「グラッド、ここでどうやって探すんだ?」

「誰かに話を聞ければ一番なんだけど…」

グラッドは困ったように辺りを見回した。

だが、周囲にいるのは疲れ切った表情でうずくまる人ばかり。

まともに会話ができそうな人は、一人として見当たらない。

その時だった。

「ねぇねぇ、お兄さんたち」

不意に幼い少女の声が聞こえる。

振り向くと、一人の幼い少女が立っていた。

くすんだ金髪に褐色の肌。

服は何度も繕われ、足元のサンダルも今にも壊れそうだった。

その少女は、どこか営業用の笑顔を浮かべて言った。

「安くしておくから、スッキリしていかない?」

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