騎士団
「分かりました。何をすればいいんですか?」
団長の申し出を受け、尋ねる。
「そうだねぇ…」
団長は顎に手を当て、しばらく考え込むように首を傾げた。
「まぁ、いい感じに魔物の攻撃を防いだり、攻撃したりしてよ」
そう言うと、カラカラと笑いながら魔物の方へ歩き出す。
「そんな適当な!」
あまりにも雑な指示に、思わず声を上げた。
「まぁ…」
団長は肩越しにこちらを振り返り、余裕たっぷりに煙を吐き出す。
その瞬間。
背後から魔物の巨大な拳が横薙ぎに襲いかかった。
しかし団長は振り返ることすらしない。
身体を半歩ずらしただけで、その一撃を紙一重でかわす。
そして、すれ違いざまに煙管を軽く叩いた。
ポンッ。
灰が一粒、魔物の拳へ落ちる。
次の瞬間
ドォンッ!!
轟音とともに業火が噴き上がり、魔物の腕を一瞬で包み込んだ。
そして、何事もなかったかのように煙管へ葉を詰め始めた。
「習うより慣れろってやつさ。期待しているよ」
そう言い残すと、団長は地面を力強く蹴り、一直線に魔物へと駆け出した。
「…相変わらず無茶なお方だ」
ルドベックは呆れたようにため息をつくと、団長の背中を追うように駆け出した。
団長は魔物の眼前を縦横無尽に駆け回る。
その足取りはまるで空中を走っているかのようだった。
煙管に埋め込まれた赤い魔石が怪しく輝くたび、足元で小さな爆発が起こる。
どうやら、その爆発を推進力に変えているらしい。
その隙を逃すまいと騎士たちが一斉に斬りかかる。
しかし、鋼のように硬い皮膚に阻まれ、刃は浅く弾かれてしまう。
そんな中、黄色い土行を纏う騎士と、赤い火行を纏う騎士だけが攻撃に加われずにいた。
よく見ると、魔物は団長を相手にしながらも、水行で火行の騎士を、木行で土行の騎士を絶え間なく牽制している。
「あそこかなぁ?」
戦況が見えた。
腰の剣を抜き、地面へ突き立てる。
水行の攻撃には土行で岩壁を築き、木行の攻撃には火行で炎の壁を生み出す。
飛来する攻撃を次々と相殺していく。
「感謝する!」
「助かる!」
二人の騎士は礼だけを残し、一気に魔物との距離を詰めた。
「攻撃はこちらで防ぎます!」
そのまま二人の盾に徹する。
氷柱や水刃が飛べば土行で迎え撃ち、木の槍や葉の刃が放たれれば火行で焼き払う。
攻撃を一手に引き受け、その隙を二人が突く。
鋭い斬撃が魔物の太腿と脇腹を切り裂いた。
鮮血が勢いよく噴き出す。
「ガアアアアッ!」
苦痛に咆哮した魔物は、標的を団長から二人の騎士へ切り替えた。
「ふぅ。ご苦労さん」
その一瞬を、団長は見逃さない。
吐き出された紫煙が蛇のように地面を這い、魔物の足へ絡みつく。
それを見た騎士たちは一斉に後方へ飛び退いた。
次の瞬間
紫煙が業火へと変わる。
轟々と燃え上がる炎が、一瞬で魔物を包み込んだ。
「グオオオオオッ!」
魔物は炎を消そうと地面へ身体を擦りつける。
「火は消させない」
木生火。
以前の戦いでの失敗を思い出し、今度は木行で風を操る。
送り込まれた風が団長の炎をさらに勢いづかせ、業火は一気に燃え広がった。
「いやぁ、容赦ないねぇ」
団長はいつの間にか地面へ降り立ち、煙管をくわえ直しながら苦笑する。
やがて魔物は力尽き、轟音を立てて地面へ崩れ落ちた。
「…まぁ、容赦がないのは、お相手さんも同じみたいだけどね」
団長の視線が、魔物の現れた大通りの先へ向く。
つられて視線を向ける。
そこには
巨大な鳥の魔物が一体。
そして、先ほど倒したものと同じ狼頭の魔物が、さらに二体。
静かにこちらを見据えていた。
「…おかわりかよ」
思わず、そう呟いてしまった。




