援軍
「この子を頼む!」
ルドベックのもとへ降り立つと、少女を託し、すぐさま魔物のもとへ戻ろうとする。
「待て、不審者!」
ルドベックが鋭い声で俺を呼び止めた。
「そうだよ。餅は餅屋って言うだろ? ここから先は、おいちゃんたち騎士団に任せな」
どこか聞き覚えのある気の抜けた声が背後から聞こえた。
振り返ると、一人の騎士風の男が立っていた。
日に焼けた肌に、左目には大きな傷跡。
兜は脱いでおり、口には煙管をくわえている。
その後ろには、完全武装の騎士が五人ほど控えていた。
「…どちら様で?」
見覚えがなく、思わず首をかしげる。
その瞬間、魔物が巨大な氷柱を放った。
男は一歩前へ出ると、
「ふぅー」
煙管の煙をゆっくりと吐き出す。
煙と氷柱がぶつかった瞬間
ドォンッ!
轟音とともに大爆発が巻き起こり、砕け散った氷の結晶が辺り一面へ降り注いだ。
「昨日も会ったじゃない。…あぁ、昨日は兜を被ってたから分からなかったか」
男は何事もなかったかのように振り返り、のんびりと言う。
その間にも魔物は細い氷柱をガトリングのように連射してきた。
ルドベックは少女を地面下ろすと、一歩前へ踏み出す。
迫り来る氷柱を、剣で次々と叩き落としていく。
「団長殿。戦闘中に敵から目を離すのはおやめください」
攻撃を防ぎながら、呆れたように忠告した。
「あっ!」
ルドベックのその一言でようやくこの男が団長だと気付く。
「ごめんごめん」
団長はルドベックに軽い調子で謝ると、こちらへ笑みを向けた。
「さぁ、こんな若い子たちにばかり戦わせていたら、騎士の名折れってもんだ。総員、かかれ!」
先ほどまでの気の抜けた雰囲気は消え、凛とした声が響く。
その号令を合図に騎士たちは一斉に駆け出し、魔物を取り囲んだ。
こうして、騎士団と魔物の戦いが幕を開ける。
「今の、ちょっと格好よかったでしょ?」
…と思った次の瞬間、団長は照れくさそうに笑った。
やっぱり緊張感のない人だ。
「不審者くん、だったっけ?」
「アスターです!」
即座に訂正する。
「ごめんごめん。ルドベックがそう呼ぶもんだから、ついね」
団長は悪びれる様子もなく笑うと、新しい煙管を取り出し、葉を詰めて火をつけた。
「アスターくん。悪いんだけど、少し手を貸してくれないかな?」
紫煙をゆっくり吐き出しながら続ける。
「うちの後衛担当が別の現場へ回されちゃってね。手が足りてないんだよ」




