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飛行機

「勇者様召喚の儀、確かに成功させましたぞよ教皇」

「うむ、其奴らを見事真の勇者に育て上げ隷属のネックレスを身につけさせよ」

「神々の御意向も我らの手に」

「今日はドラゴンの贈り物まであったそうじゃないか?」

「ああ、あの胡散臭そうな真実を知る商人か」

「確か人物鑑定をしたものは百を知る商人として名を馳せているようでシエルと言う名だけ鑑定に成功した様子」

「レベルのほどは分からなかったにせよドラゴンを一撃で仕留めています。いかがなされましょう?」

「ドラゴンを一撃で仕留める商人か? 下手な勇者より奴に隷属のネックレスを贈りたいのぅ」

「そうですよね。確かにそうなのですが、もうシエルはこの街を抜けているようでして……」

「何?! もう検問所を突破したと言うのか?」

「いえ、検問を通らずして渡ったか。もしくは検問官の謀叛か……」

「何にせよ。もうこの街では捕まらないものかと」

「ここ数日の検問官を呼べ」

「はっ」

 尋問に遭った検問官たちは知らぬ存ぜぬ。それもそのはず。シエルたちは女神の意向で行動する者。

 真の宗祖、シエル・デ・フロンテとはシエルの一番初めの顔なのだから。


「しかし、フロンテ様と同じシエル。早くその身体を丸肌にしたいわい」

 薄汚い教皇の笑い声が教会に響いた。



ーーーー


 一方その頃。

 シエルは背筋を走る悪寒に首を傾げながら、目の前の大鍋をかき混ぜていた。

「うーん……誰かに狙われてる気がするっすね」

『貴様の胡散臭さのせいではないか?』

「いや、商人の勘っす。まあいいや」

 ドラゴンの骨を削り、オークの皮を薄く伸ばし、ワイバーンの筋を糸のように編み込む。

 最後に魔石をぽちゃん。

「ここをこうして……錬金!」

 眩い光と共に現れたのは。

 巨大な白銀の翼。

 流線型の胴体。

 二つのプロペラ。

「できましたよロード様!」

『なんだこれは?』

「飛行機っす」

『……飛ぶのか?』

「飛びます」

『誰が?』

「俺たちが」

『何故だ?』

「速いから」

『速ければよいのか?』

「ロマンっす」

『ろまん?』

 魔王は理解できないという顔をした。

『我は空を飛べるぞ?』

「ロード様一人ならそうっすけど、荷物運べないじゃないですか」

『む』

「それに寝ながら移動できるんすよ」

『なんだと!?』

「ご飯も食べられる」

『ほう』

「酒も飲める」

『よし乗る』

 魔王の即答であった。

 そこへ近くの森からオークの群れが現れる。

『敵か』

「ちょうどいいっすね」

 シエルは飛行機の側面に長い筒を取り付けた。

『何をしている?』

「ドラゴンブレス砲っす」

『なんだそれは』

「ドラゴンの肺袋に火属性魔石を詰めて圧縮して──」

『聞いておらぬ』

 ドゴォォォン!!

 光の奔流が森ごとオークを吹き飛ばした。

『……』

「安全確認完了っす」

『どこが安全なのだ!?』

 魔王は初めて、自分が世界征服を諦めた理由を思い出していた。

 ――人間には理解できない奴がいる。

 そして目の前の商人は、その最たる存在である。

「さぁロード様! 離陸っす!」

『待て! まだ心の準備が──』

「大丈夫っす!」

『何が!?』


 ゴォォォォ!!


 飛行機は轟音と共に大地を駆ける。


 数秒後。

 大空へ飛び立った。

『ぎゃああああ!! 高い!! 落ちる!!』

「落ちないっすよ!」

『魔王たる我がなぜ叫んでおる!?』

「大丈夫っす。ちゃんとシートベルトありますから」

『しーとべると?』

「ドラゴンの腸っす」

『降ろせぇぇぇ!!』


 その頃。

 地上では農民たちが空を見上げていた。

「おい、なんだありゃ……」

「鳥か?」

「いや、ドラゴンだ!」

「違う! なんか笑いながら手を振ってるぞ!」

「『シエル商会、空の旅始めました!』って旗が出てる!」

「商人だぁぁぁ!?」

 こうして後に「空飛ぶ百知商会」と呼ばれる伝説が始まる。

 そして、教皇が血眼になって探している頃には、シエルたちはすでに大陸の向こうで「空港」を作り始めていたのであった。



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