オークとオーブンレンジ
魔王城から直ぐに開けた草原に来たものの冒険者のボの字も無ければ村のムの字もなく、ただ枯れかけの大地を歩いていた。
『飯のうまい村はまだか?』
「まだまだっすねぇ……ロード様って魔物を殺すのに抵抗あったりします?」
『いや、ないがどうした?』
「俺って殺生ダメなんっすよ。女神様の加護ってやつで長生きだし錬金術で結構なんでも作れるんすけど核が必要なものばかり……だから大抵ダンジョンとかでのたれ死んでるパーティーの核とかを拝借して商売道具作ってるんっすけど、ロード様が嫌じゃなければ10キロ先にオークの集落があるみたいなんっすよ。そこでちょちょーっとオークロードとかオークジェネラルとかオークナイトくらいの大物の核があればたぶんそこら辺の村で食べる飯より美味いものが作れるんすけど」どうされます?
と聞くのが早いかロード様。
その小さなスライムという身体で一瞬にして索敵したらしく遠くの、ちょうど10キロ程先で爆炎が上がった。
「おーいえ〜い。ありがとうございますっすロード様」
『して、これをどう調理するのじゃ』
「まずはオークロードの核を拝借して〜鉄と錬金!」
『なんじゃこの箱は?』
「オーブンレンジです♪」
「六千年程前の文明の時っすかね。ロード様お生まれではなかったんです?」
『そうだなまだ生まれて間もない頃だろうあの時はほんの一瞬我が手を出すまでもなく人間どもは滅んだな』
「そーなんすよ。あの時は三人目の嫁がお腹に赤ちゃんこさえてる時期だったんすけど核戦争で地上は火の海ひどい有り様でってまぁその当時のものっすね核で動くんで動力源はオークの核でいいんっすよ」
「そして牛の乳とコカトリスの卵、を混ぜたいんでロード様とりあえずコカトリスの卵割ってください」
しゅぱん。
割れたは良いが中身が台無しに。少ししょげているロード様が可愛くて。
「ここにボウルを用意したんで、上からシュパッと割っちゃってください」
『うむ、わかった』
『できた。できたぞ』
喜んでいるロード様を横目に、俺は泡立て機でコカトリスの卵と牛乳を混ぜ始めた。そして砂糖も加えた。そして石と土で錬金術を使いコップも作った。それを2つのコップに流し込み電子レンジで5分プリンの完成だ。
「コレがプリンっすよロード様まだまだコカトリスの卵が大きかったんで作れますよ。マジックボックスに入れときますね」
『ほうほうほう、うまそうじゃのぅ』
『このスライムのようにぷるんぷるんになっとる。断面が素敵じゃ中も甘くてうまい。口の中でほどける』
「よかったっす。昔は王様とか貴族様しか食べられなかった高級菓子っすからね」
『ふむ……余がまだ世界征服を始める前の頃か?』
「んー、四人目の嫁と離婚した頃っすね」
『嫁が多いのぅ』
「六千年も生きてると増えたり減ったりするんすよ」
『減るとはなんじゃ』
「寿命っす」
ロード様のスライムの身体がぴたりと止まる。
『……そうであったな。人間は死ぬのであった』
「まあ、俺は死なないんで毎回看取る側なんすけど」
『ほう』
「最初の嫁なんて『あなたのその間抜け面を百年見ていたい』って言ってたんすけど、九十七年で先に逝っちゃいましたね」
『三年足りんではないか』
「そこは今でも文句言いたいっす」
くくっとロード様が笑う。
『おぬし、悲しくないのか』
「悲しいっすよ。でも泣いても腹は減るんで。泣きながらカレー作って食ってました」
『変な男じゃのぅ』
「よく言われます」
そんな話をしていると。
――ぐるるるるる。
大地が鳴った。
いや違う。
ロード様の身体から音がしている。
『……腹が鳴った』
「プリン二個じゃ足りなかったっすか?」
『もっと食いたい』
「じゃあ今度はオークジェネラルの核で炊飯器作るっす。卵かけご飯なんて最高っすよ」
『たまごかけごはん?』
「世界を滅ぼせる魔王様でも抗えない禁断の料理っす」
『ほう! すぐ作れ!』
「了解っす!」
『あと、その……』
「はい?」
『さっきの卵割り、もう一度やりたい』
ぷるぷる震えながら、少しだけ恥ずかしそうに言うロード様。
『あれは楽しかった』
「じゃあ次は十個くらい割ってもらうっす」
『任せよ!』
その瞬間。
十キロ先で再び巨大な爆炎が上がった。
「ロード様! まだ鳥がいるっす!」
『違う。なんか楽しそうなドラゴンがおった』
「ドラゴン!?」
『うむ。飛んでおったので落としてみた』
「食材ゲットっすね」
『食材なのか!?』
「ドラゴンステーキとか美味いじゃないっすか」
『待て待て待て! ドラゴンは普通食わんじゃろ!?』
「六千年前は結構食べてたっすよ」
『文明とは恐ろしいのぅ……』




