貴様なぜ死なない?
拙い文字書きです。遅筆です。
禍々しい黒い雲、漆黒の魔王城。人生でいつかは来てみたかった城の中、度重なるエクスプロージョンを受けてまさに死地を死に生き返りながら進むこと三日。狭くくぐもった通路から大広間にでて俺は魔王と対峙していた。
『血迷ったか人の子よ』
尊厳のあるエンシェントドラゴンの姿をした魔王が上から俺を見下ろしていた。
「いやぁ、別に血迷った訳でも敵対しようって訳でもないんですがね。ちょいとばかし血を分けて欲しいなぁなんつって」
『なんとふざけた事を、終焉の業火ゴットフェニックス、ゆけ』
見るからにふざけ腐った暑そうな鳥が飛んできて、俺は一瞬にして塵になり、また復活を遂げた。
「あーあー、残念。せっかくの魔王様なら俺を消せると思ったのに生きかえっちまいやがった」
『貴様なぜ死なない?』
不思議そうに訊く魔王に、俺は笑いながら応えた。
「見ての通り不老不死、女神さまの加護だとよ」
何も食わなくても生きていけるし、もう千年以上生きた。この世界は破滅と再生を繰り返し、今じゃなんの罪もない子どもが明日食う水や食料すらなくなった。
「ここに来りゃ、ここに来れば、死ねるかもしれないと思ったのと、あんたの血さ。あんたの巣食った血が大地を潤す肥やしになる。俺は商人としてあんたに商売しにきたのさ。この世界の未来のために」ってね。格好いい話だろう?
そう話せば、ほう、我の血か。
『千年生きた商人と言ったな? 我を存分にもてなす用意はあるか?』
優雅に放たれた言葉に、俺は間髪入れず
「ないっ。ないって、何もかも手に入れてました。みたいな魔王さまに死なないだけのただの商人が商売するとかもてなすとかできる訳ないって」
『偉く潔い言いっぷりだな。我は六度この世を滅ぼした。いや、六度看取った。と言うべきか今の世界が我に滅ぼされていいくらい肥えていてほしいと願う。じゃからの我を旅のお供に連れてゆけ、連れて行くための変身アイテムさえお主が持っていればよい』
「変身アイテムかぁ、あるにはあるけど千年は時間指定で解けないけどいいんすか?」
『千年か、まぁ、我とて長く生きる。まばたき程度の時間潰しもよかろう』
「時間潰しって、じゃあ血を戴いてもいいんすか?」
『それはお主の腕の見せ所よのぅ』気が向いたらオッケーと、グッとサインを頂いたところで死に戻りの秘薬エンドレスワルツを差し出し、飲むよう跪いた。
するとシュワシュワと魔王の身体が小さくなり、気づけば、最弱の異名を持つスライムへと姿を変えていた。
『お主、我を愚弄する気か?!』
終焉の業火ゴットフェニックス
出たよ。スライムからゴットフェニックス。
しかも自分の姿ごとゴットフェニックスの火の鳥の形になってる。
「ふふっふ、すんません笑って」
『本当じゃ、元に戻さんかこの無礼者!』
「あれ、時間差じゃないと戻らないんすよ。それにゴットフェニックスを放てる最強のスライム超カッコイイすよ」
『何を馬鹿にしおって』
ちょろいけど、満更でもない風の魔王が可愛くて。
「めっちゃカッコ可愛いっす」
心からの言葉が漏れ出た。
『まぁ、この姿になったからには仕方がない、お前と従魔契約をしてやろう』
「格好いい名前付けてやればいいんっすよね?」
『よく知っているな、この世界の従魔など絶たれたというのに』
「そこん所は、俺長生きなんで」
うーん。と数刻悩んでつけたのが
「ロード、道って意味なんすけど、導く道で、ロードとかどうっすか?」
『ロードか、悪くないな』
魔王様おやめください〜とかいう野次馬がエクスプロージョンを唱える中、俺たちは従魔契約を結び、魔王城を後にした。
枯れ果てた大地にロードが身体を擦り付ける度に緑がしげり、道となった。
「血は要らないみたいっすね」
笑って問いかけると、
『我ほどになれば造作も無い』自慢げに話すロードの姿があり、俺は改めて礼を言い。
「俺の名は、シエル。ロード様宜しくっす俺も何度も看取ってきやした。愛した妻、娘や息子。来年も同じ場所で春に花見をしようって約束したんっすよ。千年前のあの時もでも誰一人叶えちゃくれねぇ。来年は、春は、あの花はもうどこにもないんっすでもロード様は俺と同じだ本当によろしくお願いしますっす」
こうして一人と一匹は旅に出た。
終焉を迎えようとしている大地に緑が明るく光を灯す中。
『飯の旨い村へ連れて行け』
はじめてのミッションは飯の旨い村となった。
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