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クソザコナメクジから始まる最弱勇者~スライムすら倒せない俺が世界を救うって本当ですか?~  作者: 小鳥遊 千夜
第三章 本物の勇者編 

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第58話 師の背中

 

「リヒト先生!俺達も戦います!」

 ケイトが悲痛な声で叫ぶ。


「そうです。私も騎士として弾避けぐらいにはなれますから。」

 アスティも頷いた。


 その言葉に、リヒトは小さく笑う。


「ありがとう。でも大丈夫です。」

 優しく安心させるような笑顔だった。


「でも、相手は魔軍大将軍なんでしょう!?」

 ケイトがなおも食い下がる。


「だからこそ、です。」

 リヒトは静かに首を横へ振る。


「君達はまだ、この戦いに入ってはいけません。」

 その声は穏やかだった。


「でも……!先生の腕は…」


「ケイト。」

 優しく名前を呼ぶ。


「君達は未来の勇者です。だからこそ、こんなところで命を懸ける必要はありません。

 君達にはもっと先がある。その未来を守るのが、今の僕の役目ですから。」

 そう言って、少し照れ臭そうに笑う。


「だから、今はまだ僕の背中を見ていて下さい。」

 その笑顔に四人は何も言えなくなった。


「相変わらずだな。」

 ベレスはその様子を眺めながら鼻で笑う。


「性分なので。」

 リヒトは苦笑する。


 ベレスの視線が、リヒトの左腕へ向く。

 戦いで失った腕を補う魔導義手。


「……フン。だが、片腕を失った貴様一人で俺と戦えるのか?」


 リヒトは自分の義手を一度見つめ、ゆっくり握ると穏やかに笑った。


「ええ、問題ありません。この腕も僕の身体の一部ですから。

 それに弟子達の前で格好の悪い所は見せるつもりはありません。」


「…強がりを。」

 ベレスが鼻で笑う。


「皆さん、ここは僕に任せて下がっていてください。」

 リヒトはケイト達へ背を向けたまま言う。


 ケイトは悔しそうに拳を握る。


 ヘカテがケイトの肩へ手を置く。

「……大丈夫や!リヒトは伝説の勇者、簡単には負けへん。せやから今は先生を信じるんや。」


「……はい。」

 ケイトはゆっくり頷き四人が後退する。


 ベレスは満足そうに笑い、巨大な槍を構える。

「余計な邪魔が入らん方が俺も楽しめる。」


「僕も同感です。互いに全力でいきましょう。」

 リヒトも剣を構える。


 ベレスの口元が大きく吊り上がる。

「ハハハハハ!!それでこそだ。行くぞ!!勇者リヒト!!」


 次の瞬間。


 ――ドンッ!


 大地が砕け、ベレスが消える。


「速いっ……!」

 ケイトが目を見開く。


 次の瞬間には、ベレスがリヒトの目前に迫る。


「潰れろォ!!」


 ――ゴォォン!!


 轟音が響く中で、リヒトが剣で受け止めるが、衝撃だけで石畳が陥没する。


「くっ……!」


「まだまだァ!!」

 

 槍が暴風のように振るわれる。


 一撃一撃が城壁を崩せる威力で、リヒトは紙一重で受け流し、弾いていく。


 その度に火花が嵐のように散る。


 ――ガガガガガッ!!


「見事だ!!」

 ベレスが笑う。


「だが、これは受け切れるか?」


 槍を一回転させ魔力が迸ると、槍が地面を叩く。


 ≪奥義 豪魔極神槍(ごうまきゃくしんそう)!!!≫

 衝撃波が街を駆け抜け、建物の窓が一斉に砕け散る。


 ケイト達は思わず腕で顔を庇う。


「これが……。魔軍大将軍…!!。」


 煙の中でリヒトの姿が消えていた。


「終わりか?」


「いや、まだだよ。」

 その声の方をベレスが振り向く。


 そこには高く跳び上がったリヒトが、光を纏った剣を構えベレスに迫る。

「そこです。」


 《光踏一閃――ルミナス・ステップ!!》


「甘い!!」

 ベレスの槍が迎え撃つ。


 ――ギィィィン!!


 眩い火花と衝撃で雲が裂ける。


「ハハハハ!!それでこそ我が宿敵だ!!」

 ベレスが笑う。


「あなたも、少しも衰えていませんね。」

 リヒトも静かに笑みを浮かべる。



「当然だ!!貴様を倒すためだけに!!俺は今日まで槍を振り続けてきたのだからな!!」

 ベレスが吠える。


 轟音が王都中へ響き渡る、その戦いはもはや人と魔族の戦いではない。


 伝説と伝説。


 二つの頂が激突する、決戦であった。



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