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クソザコナメクジから始まる最弱勇者~スライムすら倒せない俺が世界を救うって本当ですか?~  作者: 小鳥遊 千夜
第三章 本物の勇者編 

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第57話 最強の勇者と魔軍大将軍

 


 王都では兵士や住民たちが瓦礫を運び始めている。


「こっち手伝って!」

「怪我人を先に!」

「この辺はもう安全だ!」


 ケイト達も復興を手伝い、モナカが額の汗を拭く。

「……街って壊れるのは一瞬なのに、直すのは大変なんですね……。」


「ですが、生きているからこそ、取り戻せます。」

 プラティナが静かに頷く。


「ま、あのワン公のおかげで派手に壊されたからなぁ。」

 ヘカテは苦笑する。


「皆で頑張れば、きっと元通りになりますよ。」

 リヒトも瓦礫を持ち上げながら微笑む。


「勇者様、本当にありがとうございます。」

「ありがとうございました!」


 住民が頭を下げ、子供達まで駆け寄ってくる。


「勇者さーん!」


「そんなに持ち上げないでください。」

 リヒトは困ったように笑う。


その時だった。


「…………。」

 誰かが空を見上げる。


「……?」


 風が止み、鳥の声が消え、空気が冷えていく。


「……これは?」

 ヘカテの表情が変わる。


「来たようですね。」

 リヒトだけが静かに目を細めた。


 重い足音で、ゆっくりと一本道の向こうから、一人の男が歩いて来る。


 黒い鎧に巨大な槍。

 その身体から漏れる魔力だけで空気が震えていた。


 兵士が思わず叫び周囲を囲む。


「敵襲!!魔族だ!!」


 しかし男は周囲の状況に気に掛けることもなく、歩みを止めない。


「ひっ…ひいぃ!!」

 その圧倒的な魔力を前に兵士達は動くことが出来ない。


「皆さんは下がっていてください。」

 リヒトが兵士達を下がらせ、皆の前に立つ。


 その瞳は、ただ真っ直ぐにリヒトだけを見ている。


「……久しいな。」


「ああ、久しぶりだね。ベレス。」

 リヒトが小さく笑う。



「ま、まさか……。魔軍大将軍……!!」

 その名を聞いた瞬間、兵士の顔色が変わる。


「魔軍大将軍、それって確か魔王軍ナンバー2の……」

 ケイト達も息を呑む。


「な、なんでこんなところに……!」

 兵士達も動揺を動揺を隠せない。


「キミ一人かい?」

 リヒトが周囲を確認しながら訪ねる。


「雑魚など連れて何になる?」

 ベレスは鼻で笑う。



「今日の目的は一つだ。」

 巨大な槍を肩へ担ぐ。


「勇者リヒト、貴様を殺しに来た。」


 圧倒的な殺意が放たれ、兵士達は膝をついた。


「ぐっ……。息が……。」


「身体が……動かねぇ……。」

 ケイト達も歯を食いしばる。


(なんだ……この威圧感……?

 ヴァレフォールなんか比較にならない!)


「相変わらずですね。」

 そんな中でリヒトだけが平然としていた。


「貴様もな。俺の覇気を前にして大した人間だ。」

 ベレスが笑う。


「先生……。知り合いなんですか……?」

 ケイトは思わず尋ねる。


「知り合いだと?」

 ベレスが先に答えた。



「違う、宿(・)敵(・)だ。」

 鼻で笑う。


「前魔王軍と人類が戦っていた頃、俺は幾度となく刃を交えた。」


「本当に、何度も戦いましたね。」

 リヒトは苦笑する。


 ベレスは顔へ手を添える。

 右眼に刻まれた一本の傷。


「この傷が見えるか?俺に傷を付けた唯一の人間だ。」


「え……。」

ケイト達が目を見開く。


「俺を退け、前魔王様を討ち取った男、……歴代最強と呼ばれた勇者。

 それが、こいつ(リヒト)だ。」

 ベレスが静かに語る。


 

(先生が……前魔王を……倒した……?歴代最強の勇者だったなんて…)

 ケイトの思考が止まる。


「勇者とは聞いていましたが……。そこまでのお方だったなんて……。」

 プラティナが小さく呟く。


「だから……あんなに強かったんですね……。」

 モナカも息を呑む。


「…昔の話ですよ。」

 リヒトは照れ臭そうに頭を掻く。


「貴様だけだ。俺と互角に戦えた人間は……」

 ベレスが槍をゆっくり構える。


「前回は倒し損ねてしまったが、だから今日こそ……」

 槍先がリヒトを指す。


「決着を付けよう。」


「ええ、こちらもそのつもりです。」

 リヒトも静かに剣へ手を添えた。


 二人の間で、空気が震えた。

 その姿はまるで、長い年月を経て再び相まみえた二人の英雄。


 誰も割って入ることのできない。


 "伝説"そのものだった。



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