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クソザコナメクジから始まる最弱勇者~スライムすら倒せない俺が世界を救うって本当ですか?~  作者: 小鳥遊 千夜
第三章 本物の勇者編 

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第56話 魔軍大将軍、出陣

 

 ――魔王城、円卓の間。

 黒い円卓に最高幹部達が揃っている。

 並の魔族なら、この場に立っているだけで膝を折るほどの濃密な魔力。

 円卓を囲む者達は、それぞれが一国を滅ぼせるほどの実力者ばかりだった。


 その沈黙を破ったのは、重く低い一声。

「……報告しろ」

 魔軍大将軍ベレス。

 その一言だけで、部屋の空気がさらに張り詰める。


「はっ……!ヴァレフォール十番隊隊長ですが……」

 魔族の兵が、震えながら跪く。


 言葉に詰まる。

「戦死、いたしました……!」


 一瞬――誰も動かない。


「……は?」

 最初に声を出したのは、四勇騎のルーモス。

 椅子にだらしなく座っていた身体を起こし、兵士を見据える。


「おいおい、魔王軍の軍隊長だぞ? ハッ…冗談にしちゃ笑えねぇな。 」


 軽い口調だが、目は笑っていない。


「事実だ。現場にいた者は全滅。だが記録は残っている」

 ベレスが短く言う。


 机に、魔導映像が映る。


 そこに映し出されるのは、現場の光景。


 荒れ果てた王都。そして――

 光を纏った剣士と、崩れ落ちるヴァレフォールの姿。


「……この剣妓はまさか……」

 四勇騎のキリヤの目が細くなる。


「ああ、見間違えるはずがねぇな。“あの男”だ」

 四勇騎のロッシュヴァリーが、腕を組む。


「……勇者リヒト」


 誰かがその名を呟き、空気がさらに冷える。

 四勇騎の表情が揺れ、四勇騎のリーダーヴァレリアが静かに目を伏せる。


「……生きていたのね」

 どこか感情を抑えた声で呟く。


 キリヤは、わずかに歯を食いしばる。

「……師匠」

 

「おいおい、まだそんな呼び方してんのかよ。」

 思わず漏れたその言葉に、ルーモスが横目で笑う。


「黙れ。剣を教えてくれたことに変わりはない。」

 キリヤは即座に睨み返す。


「へいへい。だが……厄介なのが戻ってきたな」

 ルーモスは肩を竦めた。


「で、どうすんだ、誰が行く?……なんなら俺でもいいぜ?」

 ルーモスが挑発するように笑う。


 だがキリヤは即座に首を振った。

「お前に師匠の相手は荷が重い。」


「ああ?」


 その時、


「――それでしたら適任者がおります。」

 静かな声で円卓の奥に佇むメガネの青年――魔王軍参謀のアザゼル。


「そうでしょう、ベレス殿。あなたはかつて彼と戦った事があるとか……」


 その視線が――ベレスに向く。


「……いいだろう。」

 ベレスが、立ち上がり床が軋む。


「丁度、決着を付けたかった所だ。」

 ゆっくりと槍を手に取り、並の兵士なら立っていられない程の圧倒的な殺気を放つ。


「おいおい、ナンバー2様直々かよ……」

 ルーモスが、軽い口調で呟く。


「フン、ヤツにはそれだけの価値がある。」

 ベレスは、振り返らずに鼻で笑う。


「勇者リヒト、その首を取れるのは――俺だけだ。」

 鋭い眼光が闇を貫く。


 ――ギィィ……


 扉が閉まり、静寂が会議室を包む。


その中で、アザゼルだけが小さく微笑んだ。


「……楽しみですね。」


 眼鏡の奥で、冷たい光が揺れる。


「勇者と魔の頂点。どちらが勝とうと――」


 口元が歪む。


「世界は動く。」


 その笑みは、底知れぬ悪意を孕んでいた。 



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