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クソザコナメクジから始まる最弱勇者~スライムすら倒せない俺が世界を救うって本当ですか?~  作者: 小鳥遊 千夜
第三章 本物の勇者編 

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第45話 レベル1の勇者

 


 三日後、日が傾く。


 リヒトの訓練場には、荒い息だけが残っていた。


「はぁ……はぁ……」


 ケイトは地面に手をつく。


 全身が重く、

 腕も、足も、思うように動かない。


 だが。


 それ以上に――


 引っかかるものがあった。


「……なぜだ?」


 小さく呟く。


 モナカが駆け寄る。


「ケイトさん、大丈夫ですか!?」


「……ああ」


「本日はここまでにしましょう。」


 リヒトが木剣を肩に担ぎながら言う。


「相変わらず、修行はハードだったわね。でも

 少しずつだけど、動きは良くなってる気がする。」


「連携も形になってきてるし」


 修行の疲れはあるが、プラティナの方は手ごたえを感じてるようだ。


 その通りだ。


 実際、三日前とは確実に違う。


 動きは良くなっている、反応も早くなっている。


 ――なのに。


「……なあ」


 ケイトが、ぽつりと呟く。


「なんで俺だけ……上がってないんだ?」


 空気が止まる。


 モナカの顔が曇り、プラティナが視線を逸らす。


 アスティだけが、じっとケイトを見ていた。


「……レベル、ですか?」


 静かに言う。


 この三日間。


 モナカも、プラティナも、アスティも。


 それぞれに成長があった。


 数値としても、はっきりと。


 だが――


 ケイトだけが

 一切、変わっていなかった。


「……なんでだよ?」


 拳を握る。


「ちゃんとやってる、誰よりも動いてる」


「それなのに……」


 声が、少しだけ震える。


「俺だけ、()()()()()()()()()


 沈黙。


 少し離れた場所で――


 アスティは、その様子を見ていた。


(……やはり)


 小さく、目を伏せる。


(この方は……)


 胸の奥に、わずかな痛み。


(“そういう存在”なのですわね……)


 だが、その言葉は口には出さない。


 出せるはずもなかった。


 ただ――


 その小さな身体で、ぎゅっと手を握る。


(それでも……)


 その時。


「…ケイト」


 リヒトの声が落ちた。

 いつの間にか、すぐ近くに立っていた。


「気にしてるね」


 穏やかな声。


 逃げ場のない優しさ。


「……当たり前だろ」


 顔を上げずに言う。


「俺だけ、成長してないんだぞ」


 少しの沈黙。


「じゃあさ」


 リヒトは、軽くしゃがみ視線を合わせる。


「レベルが上がらなかったら――戦えないの?」


「……!」


 言葉が詰まる。


 リヒトは、ゆっくりと言う。


「確かにレベルは分かりやすい指標だ」


「強さの目安にもなる」


「…でもね」


 少しだけ笑う。


「それが全てじゃない」


 義手で、自分の胸を軽く叩く。


「僕は、天才じゃなかった。

 才能も、特別な力もなかった」


「それでも、戦えた」


 ケイトを真っ直ぐ見る。


「技を磨き。経験を積んだ。」


「何度負けても、前に出た」


 一つ一つ、言葉を置くように。


「そしてそれが――武器になる」


 風が、静かに吹く。


「君にはもうあるよ」


「……え?」


「逃げなかっただろ?

 三日間、何度倒されても立ち上がった」


 少しだけ、優しく笑う。


「それは“勇気”。立派な武器だよ。」


 胸の奥が、じんわりと熱くなる。


「レベルなんて上がらなくてもいい」


 はっきりと言い切る。


「戦える方法は、いくらでもある」


「君は――」


 一瞬、言葉を選ぶようにして。


「ちゃんと、“勇者の戦い方”をしてる」


 沈黙。


 ケイトは、ゆっくりと顔を上げる。


「……まだ、やれるかな?」


 リヒトは、にやりと笑った。


「当たり前でしょ」


 立ち上がる。


「むしろここからが本番だよ」


 木剣を軽く回す。


「レベルに頼らない戦い方――教えてあげよう」


 その言葉に。


 ケイトの目に、わずかに光が戻った。


 そしてその様子を――


 アスティは、静かに見つめていた。


(……ええ)


 小さく、微笑む。


(あなたは、それでいいのですわ)


(“それでも進む者”こそが――)


 言葉にはしない。


 だがその瞳には、確かな確信が宿っていた。





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