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第67話 間話:剣闘士アレン

「うぐっっ……」

「ぐぁっっ……」


 三十階への階段を上っているのだが、階段に呻き声を上げて倒れている冒険者が多い。

 三十階の熔岩洞窟にはレッドゴーレム、三十一階の雪原には雪熊がいる。

 調子に乗って三十階までやって来たDランクには、どっちらも強敵なのだろう。

 まあ、俺にはどちらも雑魚だ。


「なんか怪我人多いですね?」

「そうみたいだな。何かに殴られたようだ」

「つまりゴーレムの方ですね。ヘヘッ。ダラシないヤツらだぜ」


 前を歩くガイに話しかけると、興味なさそうに倒れている冒険者を見た。

 雪熊にやられた場合は爪での切り傷が出来る。

 切り傷が無くて、殴られた痕しかないなら、レッドゴーレムにやられたというわけだ。


「そうとは限りませんよ。随分とやられていますね。何があったんですか?」

「ちょっ! そういうのはやめましょうよ」


 よせばいいのに副隊長が怪我人に聞いている。あんなの傷口に塩を塗るような行為だ。

 俺ならゴーレムにやられたなんて、恥ずかしくて口が裂けても言えない。


「ぐっ、凄く強いゴーレムにやられた」

「ブフッ!」

 

 駄目だ。笑ってはいけない。大人なら我慢しないといけない。

 真剣な顔で怪我人が言ったので、慌てて目を逸らして口を両手で押さえた。

 だけど、ちょっと遅かった。周囲の怪我人達が俺を睨みつけている。


「ぐっ、笑いたければ笑えばいい。笑えるのは今のうちだけだ」

「いやいや、今のは思い出し笑いですよ。そんなに凄いゴーレムがいたんですね。気をつけないとなぁー」


 何とか誤魔化そうとしたけど、火に油を注いだみたいだ。

 パーティの仲間まで睨んできた。


「すまないな。コイツは頭が少し弱いんだ。許してやってくれ」

「別に気にしてねえよ。俺達も十五人でやれば倒せると思った。だが、アイツは化け物だ」

「ブフッ! フッ、フッ!」


 副隊長と怪我人が真面目に話しているが、絶対に笑うのは我慢しないといけない。

 何でも、茶色いゴーレムが冒険者を手当たり次第に襲っているらしい。

 しかも、全身のどこからでも、丸い岩の弾をもの凄い速さで撃ち出すそうだ。


 頭を強く打ちすぎたのか、自分達が弱いと認めたくないのか、架空の最強ゴーレムと戦った事にしたいらしい。

 弱いと認めたくない気持ちは分かるが、流石に機敏に動き回って、格闘するゴーレムは嘘だ。

 作り話なら、茶色で少し頑丈ぐらいがちょうどいい。


「もしかすると四十階ぐらいで、たまに出会う強いモンスターじゃないか?」

「その可能性もありますね。これ以上被害が出る前に、探して倒した方がいいでしょう」

「ちょっと本気ですか? さっさと帰りましょうよ」


 隊長と副隊長が馬鹿人の話を信じたのか、馬鹿な事を言い始めた。

 茶色のゴーレムなんて居ないんだから時間の無駄だ。

 もう十二日間もダンジョンの中にいる。

 流石に温かい風呂と温かい食事と温かい人肌が恋しくなる。

 探したいなら二人だけでやってほしい。


「駄目だ。早く帰りたいなら四人で手分けして探す」

「そんなぁ!」

「怖いんですか? ゴーレムぐらいなら一人でも倒せるでしょう」

「いや、そりぁ、まぁ……」

「じゃあ、決まりだ」


 怖いとは少しも思ってないが、こんな馬鹿な話に付き合うのは無駄だと思っている。

 だが、不満顔で抗議しても無駄だった。隊長と副隊長に強引にやると言われてしまった。

 二人がこうなったら、三十階のレッドゴーレムを全部倒すまで帰るのは無理だ。


 ♢


「はぁ……何が化け物だよ。馬鹿者の間違いだろう」


 三十階に到着すると、予定通りに四人で手分けして、茶色いゴーレムを探す事になった。

 やる気は全然ない。だけど倒した証拠に、レッドゴーレムの素材を手に入れないといけない。

 まあ十体ぐらい倒せば、サボっていたとは言われないだろう。


「あの二人、すぐにいい格好するんだよな。付き合わされる、こっちはいい迷惑だよ」


 避難したのか、倒されまくったのか、三十階には冒険者の姿が見えない。

 溶岩が流れる音と弾ける音以外は静かなものだ。

 俺の愚痴がよく響き渡っている。


「グオオォ!」

「あぁー、いたいた。チャチャと倒すか」


 指示された場所を適当に歩き回っていると、やっとゴーレムが現れた。

 色は赤に見えるけど、茶色と言われたら茶色かもしれない。

 まあ、倒せばいいからどっちでもいいや。


「ほら、来いよ。Bランク冒険者様が相手してやるよ」


 ゴーレム相手に剣は必要ない。手の平を振って、かかって来いよと挑発した。

 真っ赤な顔したゴーレムが向かってきたが遅すぎる。

 探している高速ゴーレムではなさそうだ。


「これは駄目だな……」


 一発ぐらいは攻撃させてやろうと思ったが、あまりにも遅すぎる。

 俺の所に来るまで待っているだけで疲れそうだ。

 仕方ないので、俺も向かっていった。


「グオオォ!」

「ヘヘッ。食らうかよ!」


 真っ直ぐに向かってくる俺に対して、ゴーレムは立ち止まって、両手を組んで振り上げた。

 地面に向かって両拳を叩きつけて、俺を叩き潰したいようだ。

 だが、そんな見え見えの攻撃が当たるわけがない。だけど、格の違いを教えてやる。

 両拳が振り下ろされるタイミングに合わせて、右拳を振り上げた。


 ドゴォン——


「グガァー‼︎」

「オラッッ‼︎」


 ゴーレムの両拳と俺の右拳が激しく激突した。

 筋力LV7、体術LV7、打撃LV6の鍛えられた右拳は、両拳を弾き返してバラバラに砕いた。


「グガァァ‼︎」

「ヘッ。本物のパンチには程遠いな!」


 両拳を砕かれた衝撃で、ゴーレムは後ろにヨロヨロと仰け反った。

 倒れそうにはないが、もう一発打たせるつもりはない。

 ガラ空きの懐に飛び込んで、右拳、左拳を胴体に打ち込んで、右足で左足を蹴り砕いた。


「グゴォ……ガアァ……」

「トドメだ」


 上半身と下半身が分かれたゴーレムが、地面に崩れ落ちていく。

 ゴーレムの上半身が地面に落ちる前に、頭に向かって右足を振り回して蹴り砕いた。

 頭を失った上半身は地面に落ちると、下半身と一緒にバラバラに壊れていく。


「やっぱり雑魚だったな」


 調べるを使って確認した後に、白い魔石とレッドゴーレムの魔導核を鞄の中に入れた。

 やはり幻のブラウンゴーレムは存在しないようだ。

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