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第68話 昔の仲間

「そろそろ引き揚げだな」


 冒険者を三十一人倒して、目的の紅蓮石は十二個も手に入った。

 三十五階の赤い宝箱から手に入る、『神金剛石』も七個入手したいが、欲張ると怪我してしまう。

 一度安全な上を目指して、進化してからまた来ればいいだろう。


「いらないのは返しておくか」

 

 ゴーレムLV2の体内で帰り支度を始めた。体内には大量の奪った鞄が入っている。

 ゴーレムから降りて、人間の姿で大量の鞄を持って歩いていると怪しまれる。

 持ち歩く鞄は三つぐらいにして、貴重なアビリティ装備と金を詰め込んでいく。


 今回の戦闘で手に入れたアビリティは『打撃』『射撃』『氷耐性』『睡眠耐性』『腐食回復』の五つだ。

 腐食回復を持つマントを腕に巻いてみたが、腐った肉は治らなかった。

 錆びた金属武器や腐った弁当を回復する能力しかないようだ。


 他にも打撃を強化する手袋を、斬撃の手袋の上から着けてみたけど、打撃の効果は無かった。

 攻撃方法によって、わざわざ斬撃と打撃の手袋を交換しないといけない。

 とりあえずゴーレムLV2の時は、打撃を着けた方が良いので、交換して戦力アップした。


「この辺でいいな。誰かが見つけるだろう」


 通路の行き止まりまで行くと、そこに鞄を大量放棄した。

 流石に階段で放棄したら、犯人だと言っているようなものだ。


「全然いねぇな。この先はもう行き止まりだぞ。まったく、いなかった時はどうすんだよ」

「おい、またかよ……」


 前方の広い空間に人影が見えた。壁にペタッと張り付いて、急いで壁のフリをする。

 せっかく不用品を放棄して軽くなったのに、また倒して放棄しないといけない。

 さっきも十五人で襲ってきたから、また人数を揃えてやって来たのだろう。

 まったく懲りないヤツらだ。


「まだ気づいてないな。面倒だからゴーレムから降りるか?」


 見える冒険者は一人だけだ。

 ゴーレムから降りれば、普通に挨拶して通れると思う。


「んっ? アイツ、アレンじゃないのか?」


 冒険者を見ながら、どうしようかと考えていると、輝く銀髪が気になった。

 ゴーレムの覗き穴から顔をよく見てみると、あの生意気そうな面は間違いなく、アレンだ。

 問題はBランクパーティに所属するアイツが、何で三十階にいるかだ。


「もしかして、クビになったんじゃないのか? ハハッ。なるほど、クビになったんだな!」


 ここにいる理由が分かって、思わず声を出して笑いそうになった。

 俺が閉じ込められている間に、失敗してクビにされたんだろう。

 もともと実力不足なんだから、逆に遅すぎたぐらいだ。

 ようやく俺の正しさに馬鹿共が気づいたようだ。


「いやいや、違うな。俺が死んだから意地を張るのをやめたのか」


 考えて出した答えが間違いだと気づいて、すぐに馬鹿共というのは否定してやった。

 俺が選んだ仲間達だ。馬鹿じゃない。優秀だからBランクまで行けた。

 俺が生きている間にアレンをクビにしたら、俺に何を言われるか分からないと、ビビっていたんだ。

 だから、俺の死を切っ掛けに、喜んでアレンをクビにしたんだろう。賢く最低の奴らだな。


「まあ、俺もその最低な奴らの仲間に入れさせてもらおうか」


 アレンは俺の邪魔をして、俺を不幸に突き落とした憎き相手だ。倒すという選択しかない。

 アイツがいなければ、今頃はAランクパーティになっていた。

 装備と持ち物を全部奪って、もっと不幸のドン底に落ちてもらう。


「おっ! 茶色だ」


 壁のフリをやめて、最高に楽しい気分でアレンの向かって歩き出した。

 俺に気づいたアレンはビックリしている。怖がらせないように、ゆっくり歩いていく。

 普通のレッドゴーレムだと思わせておいて、小岩の弾丸を膝から股間に発射する。

 まずは軽く苦しみもがいてもらう。


「死ねぇ」


 ドンと右膝から一発の弾丸を発射した。当たれば悶絶撃沈は確定だ。

 だが、弾丸が当たる前にアレンの左拳が素早く動いた。

 バガッン‼︎ 空中の弾丸が粉々に殴り壊された。


「おっと! 危ねぇ、本当に撃ってきた」

「なに? 防いだだと?」


 弾丸を殴った左拳を軽く振りながら、アレンはヘラヘラ笑っている。

 初見で俺の騙し打ちじゃなくて、騙し撃ちが効かないのは初めだ。


「お前がブラウンゴーレムだろ? 随分と悪さしたみたいだな。Bランク冒険者様がブッ倒しに来てやったぜ。全身バラバラに砕いてやるよ!」

「ほぉー、お前如きがこの俺をか」


 アレンが笑いながら、ボキボキと拳を鳴らして、面白い事を言ってきた。

 久し振りに会ったが、前よりももっと馬鹿で生意気になったようだ。

 俺を指差した後に親指を立てて、地獄に落としてやると地面に向けた。


 倒した冒険者に俺の事を聞いたみたいだが、一発防いだだけで調子に乗り過ぎだ。

 凄まじい弾丸の雨を、たった二本の腕で防げるなら防いでみろ。


「己の愚かさを地獄で後悔しろ」


 分厚いゴーレムLV2の両手をアレンに向けて、手の平に大きな穴を開けた。

 ここから手加減なしの弾丸を何十発も連続発射する。

 すぐに倒れて命乞いすれば許してやる。無駄な抵抗をするようなら、何百発に変更だ。


 ドガガガガガッッ——


「やべぇ、やべぇ! 両手から岩ゲロ吐いてやがる! マジやべぇ!」


 一番ヤバイのお前の語彙力だ。

 これは殺戮の弾丸『ジェノサイドブレット』だ。


 臆病者のアレンは弾丸の雨を拳で防がずに、円を描くように逃げ回っている。

 まあまあ素早い動きだが、そんな浅知恵で逃げられるはずもない。


「これで終わりだ」


 右手で弾丸を撃ち続け、左手を逃げ道に先回りさせて、再び撃ち始める。

 あとは左右の手を狭めていくだけだ。

 もう逃げ場はどこにもない。あるのは逃れられない敗北だけだ。


「ハハッ! 容赦ねぇなあ!」


 完璧に逃げ道を塞ぐと、アレンは背中の丸盾に手を回した。

 盾を正面に構えて、低い姿勢で突撃してくる。

 玉砕覚悟の特攻のようだが、左右の手を一気に狭めて、集中攻撃に切り替えた。


 ダァン——


「ハッ!」

「んっ?」


 だが、そのタイミングに合わせて、アレンは高く跳躍した。

 俺に向かって真っ直ぐに飛んで、弾丸の雨を飛び越えている。

 左手で盾を持ち、右手は俺を殴ろうと待機している。

 

「くだらん」


 弾丸の雨は嫌いなようだ。撃つのをやめて、右拳を構えて、打つに切り替えた。

 そして、胸の位置に飛んでくるアレンに向かって、強烈な一撃を打ち込んだ。


 ドガッ——


「食らえ」

「ウラァッ‼︎」


 お互いの拳が激しく激突する。

 俺の攻撃のタイミングに合わせて、アレンが拳を突き出した。

 一瞬の力比べが終わって、お互いの右拳が弾かれた。


「くっ、互角だと⁉︎」

「おっと! やべぇ、絶対に砕いたと思ったんだけどなぁ」


 あり得ない事が起きた。アレンが殴り飛ばされるのが普通だ。

 それなのに俺の拳と激突した右腕は無傷だ。

 アレン自身も地面によろけながら着地すると、平気な面で立っている。


「おい、デカブツ。さっさと打って来いよ。次はそのへなちょこパンチを砕いてやるよ」

「このガキがぁ……」


 ブチッ‼︎ ニヤニヤと笑いながら、アレンは右手を振って、拳の催促をしてきた。

 そんなにへなちょこパンチを食らいたいなら、地面にめり込む特大のパンチを食らわせてやる。


「やってみろ‼︎」


 大人の上半身程の大きな右拳から、一切手加減なしの必殺の一撃が放たれた。

 その必殺の拳に向かって、アレンが右拳を振り回した。


 バキィン——


「ヘヘッ。ほら、砕けた」

「くっ!」


 だが、正確には狙われたのは手首だった。

 アレンは俺の必殺の拳を避けると、手首に右拳を叩き込んだ。

 破壊された手首から、千切れた右拳だけが地面の上を飛び跳ねていく。

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