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第65話 レッドゴーレムLV2

「意外としぶといな」

「キュイ‼︎ キュイ‼︎」


 地面に広がる岩杭に、突き刺された状態で二匹の緑小竜が暴れている。

 剣で頭でも切り落とせば倒せるだろうけど、下手に近づいて尻尾の槍に刺されたくない。

 このまま篭城した状態でトドメを刺すのが安全だ。


 緑小竜の周囲の地面に魔力を集めて、四方を一気に岩壁で閉じ込めた。

 このまま岩壁の中を岩で満たして、二匹には岩塊の中で窒息死してもらう。


「やれやれ、六ターンもかかってしまった」


 予想よりもちょっとだけ手間取ってしまった。まあ、許容範囲内だ。

 緑小竜を閉じ込めた岩塊は、十五階に行く時にでも壊せばいいだろう。

 今は安全の為に放置する。まだ、死んでないかもしれない。


「思ったよりは楽勝だったな。まあ、油断しなければ、これが普通か」


 二十九階の階段に向かって余裕で歩いていく。

 やはり左腕を切り落とされたのは、油断し過ぎたみたいだ。


 だが、高速の拳を決死のカウンターで攻撃されるのはマズイ。

 流星拳は真っ直ぐに飛んでしまうから、急な方向転換が出来ない。


 前にも水中遺跡の階段で、冒険者達に剣と槍を前に構えられて、苦戦させられた。

 攻撃のタイミングを合わせられて、矢や槍で頭を狙われたら終わりだ。

 俺の流星拳が届く前に、俺の頭を壊されて死んでしまう。


「レッドゴーレムみたいに、全身を岩で覆って動けばいいんじゃないのか?」


 カウンターに弱いなら、攻撃が効かないぐらいに身体を頑丈にすればいい。

 岩塊を鎧のように装着して、思い通りに動けるようになれば、問題は解決する。

 ついでに地下三十階まで行けば、レッドゴーレムとして冒険者を好き放題に襲える。

 練習する価値は十分にありそうだ。


「頭と胴体は行けるな。でも、手足は流石に無理か……」


 試しに下半身だけを、厚さ十センチぐらいの岩鎧で覆ってみた。

 だけど、関節を動かせるようにしても、重過ぎて動きにくい。

 これだと、動かないレッドゴーレムにしかなれない。


「やっぱり筋力で動かすのは無理だな。流星拳と同じで魔力で動かすしかない。だったら、あれだな」


 二十階に閉じ込められていた時に、ストレス発散に岩人形を作って壊していた。

 あの人形を作って、手の平の上で自由に動かせられるぐらいに練習する。

 小さな岩人形で出来ないなら、レッドゴーレムになるのは不可能だ。


 ♢


「くっ! 力加減が難しいな……!」


 襲ってくる緑小竜を倒しながら、古代林を抜けて、安全な二十九階の階段に到着した。

 階段に座って、右手の手の平の上で、岩人形をぎこちなく動かす。

 モンスターがいる場所での、歩きながらの岩人形の練習は危険過ぎて死んでしまう。

 人形じゃなくて、上空のモンスターの方を見たい。


「まずは歩けないと何も始まらない。さっさと改良しないとな」


 適当な岩人形を作っても、思い通りには動かせない。

 人型クッキーじゃないんだから、きちんと関節を意識して作らないといけない。

 全身鎧を参考に新しい岩人形の製作を始めた。


 二時間後……


「くっ、全然駄目だ!」


 ガシャン‼︎ 出来損ないの岩人形LV2を階段に叩きつけて壊した。

 まだ九十歳のババアの方が上手く動ける。ギクシャクと関節が錆び付いてやがる。


「コイツには、常識にとらわれない柔軟な発想が必要なんだ!」


 本物そっくりのレッドゴーレムの人形を強く握り締める。

 目や鼻や口、身体は姉貴の手帳の絵の通りに作れた。

 だが、動きが硬過ぎて駄目だ。岩だけど柔軟な動きが必要だ。


「ハッ! 水と岩だ! そうか、ビッシリと詰まり過ぎて動けなかったのか!」


 魔法剣士の水鎧に岩塊が浮いているのを思い出して、閃めいてしまった。

 岩人形ではなく、綿の人形をイメージして作らないといけなかった。

 だが、岩は綿と違って柔らかくない。

 だとしたら、砂をイメージした小岩を詰め込むしかない。

 

「ヤバイな。想像力が止まらない! 最強のレッドゴーレムが作れそうだ!」


 常識というツマナライものから解放されると、途端にアイデアの雨が降り出した。

 一つの大きな岩ではなく、小さな岩の集合体で岩人形を作ればいい。

 

 三十分後……


「よし、完成だ! 『レッドゴーレムLV2・二十七分の一モデル』だ!」


 最高傑作が誕生した。右手の上で十センチ程の岩人形がグニャグニャ動いている。

 魔力を全体にバランスよく流す事で、動きを正しくコントロール出来ている。

 操り人形と同じだ。一本の糸で全てを操る事は出来ない。


「よし、早速実戦テストだ!」


 休憩も練習ももう十分だ。階段を駆け下りていく。

 二十九階にはちょうどいい練習相手がいる。


 ♢


 地下二十九階……


「暑くないけど、暑そうだな」


 階段を下りて、『溶岩洞窟』と呼ばれる場所に到着した。

 茶色い岩盤の地面には、大きな赤黒い溶岩の川が流れている。

 溶岩の川に近づいてみたけど、服は燃えたりしない。

 そこまでの熱さじゃないようだ。


「さてと、観光はこの辺でいいだろう。スライムを探すか」


 観光は終わりにして、ロウソクの炎に照らされたような、赤い洞窟の探索を始めた。

 ここには『マグマスライム』という溶岩の身体を持つスライムがいる。

 地下一階のスライムとは違い、二本の鞭のような腕を振り回し、目や口のような穴が空いている。

 動きは俊敏で好戦的、身体に触れたものを高熱の身体で燃やす。


 しかも、剣や槍で切ったり刺しても簡単には死なない。

 巨大なハンマーで押し潰して、身体をバラバラにしないと倒せないそうだ。


 もちろん、そんなスライムがいるわけない。

 姉貴の手帳の情報は当てにならないので、実際に自分の目で確かめないといけない。

 とりあえずハンマーはないけど、ゴーレムLV2で殴り潰せば問題ないだろう。


「おっ、あれじゃないか?」


 茶色い岩盤の上に、燃えるように赤く輝く塊が動いている。

 大きさは七十センチ程で、俺の目にはスライムというよりも、二本腕の燃えるタコに見える。

 まあ、どっちでもいいので、ゴーレムLV2の戦闘準備を始めた。


 まずは全身から丸い小岩を大量に作り出す。それを身長二百七十センチの人型にしていく。

 俺はゴーレムの胸の中心で、椅子に座るように楽に操る。もちろん覗き穴は必要だ。

 最後に中身の小岩が見えないように、表面を綺麗に岩肌で覆い隠せば、ゴーレムLV2の完成だ。


 ギギィ、ドォシン……


「よし、動かせる」


 右足を慎重に持ち上げて、一歩だけ歩かせた。

 着地した瞬間にちょっとグニャとなったが、小岩を少し増やせば問題ない。

 マグマスライムを倒すのは後回しにして、上手く操れるように最終調整するか。

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