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第57話 新技開発

 階段を下りて、二十三階の『荒野』に到着した。

 巨大な赤い岩壁の下方に開いている階段口には、見張りの冒険者が五人も立っていた。

 犯人の仲間が捕まったと教えると階段を上っていった。


 荒野の乾いた赤い大地には、夕陽が二十四時間浮かんでいる。

 たまに枯れ木や枯れ草、大岩が地面から顔を突き出している程度の殺風景な場所だ。

 そんな乾いた大地を水浸しの服で歩いていく。ひと泳ぎした後の服が乾いてくれない。


「一応魔石を集めておくか」


 騒ぎを起こさずに命結晶を手に入れるには、買取るしか方法がない。

 こんな事なら、冒険者の鞄から金をもっと盗んでおけば良かった。

 まあ、金額の大きな硬貨は盗ませてもらった。


 蝶の一ギル硬貨、鳥の百ギル硬貨、猫の千ギル硬貨は鉄色だ。魚の十ギル硬貨は銅色をしている。

 狼の一万ギル硬貨からは金色の硬貨になる。流石に熊の絵が描かれている十万ギル硬貨は見つからなかった。


「くさい臭いがしてきたな」


 下水道に似た腐敗臭がしてきた。近くに『グールネズミ』の集団がいるようだ。

 グールネズミは二十三階のモンスターで、長い前歯と前足にはオレンジ色の長く鋭い爪が生えている。

 ボサボサの黒い体毛は臭くて、身体の高さは大人の下半身ぐらいはある。

 十二匹ぐらいの集団で襲ってきて、前歯で噛み付いて、高熱が出る感染症をプレゼントしてくれる。


「さっきので分かったけど、やっぱり範囲攻撃が必要だな。範囲攻撃ねぇ……」


 ここ一ヶ月は俺を閉じ込める壁を壊す為だけの魔法を考えていた。

 一撃の威力や連射性能だけを重視していた。

 だが、さっきのように冒険者に囲まれた状況では、狙いを定めて一発ずつ丁寧には撃てない。

 殺傷力の高い無差別範囲攻撃が必要だ。


 例えば、篭城した俺の四方八方に岩壁を連続で作って、壁を発射するのはどうだろうか。

 頑丈な岩の家を作って、その中から二十四時間戦えば、相手の方が疲れて降参する。

 俺の魔力と体力はほぼ無限だ。実現可能だから、とりあえずやってみるか。


 ドガッ——


「ヂュヂュ⁉︎」

「こっちだ!」


 十八匹近くいる黒い集団が見えたので、そこに向かって岩塊を発射した。

 驚いている汚いネズミ達に手を振ったら、怒ってやってきた。


「さてと、噛まれる前に篭城するか」


 手順は簡単だ。岩壁を四方に作って、天井に蓋をすれば完成だ。

 あとは覗き穴を四方の壁に一つずつ空けて、岩壁を作って、近づいてきたネズミに発射するだけだ。


「……うーん、これだと効率が悪いな」


 実際に篭城して覗き穴から覗いてみたが、どう考えても向かってくるネズミに岩壁を当てるのは効率が悪い。

 壁に手を触れて、壁越しに岩杭でも作って、狙って発射した方が速さも威力も出しやすい。


「下側から撃った方がいいな。この辺か?」

「ヂュ‼︎」


 斜め上から斜め下を狙うよりも、水平に狙う事にした。

 覗き穴から狙いを定めて一発目を発射した。

 ドスッと黒ネズミの腹に岩杭が突き刺さって、地面に倒れた。


「よしよし、行けそうだな」


 一匹倒しても、まだまだ沢山いる。

 すでに篭城する壁を、爪でガリガリ引っ掻いている不届き者もいる。

 そんな不届き者には地面から直接岩杭を突き出して、尻を貫通させてやった。


 三分後……


「やれやれ、こっちの方が楽かもしれないな」


 岩杭を撃って突き出しての攻撃を繰り返していくと、ネズミの駆除が終わった。

 実戦結果から考えると、篭城する岩壁にネズミが群がってきたところを、地面からの広範囲岩杭の乱れ突き出しが効果的みたいだ。

 一匹ずつ倒すよりも、一回でまとめて倒す方が楽で良い。あとは技名を考えるだけだ。

 

 ♢


 二十三階では遭遇した冒険者とは関わらないようにしていた。

「命結晶持っていませんか?」と聞くのは、「俺が犯人ですよ」と言っているのと同じだ。

 やって来たグールネズミを『ジェノサイドトラップ』で倒すだけにした。


「『獅子王』か……一人で倒せるのか?」


 階段を下りて、引き続き赤い大地が広がる二十四階の荒野を歩いていく。

 獅子王は二十四階のモンスターで、大型の白いモジャモジャした体毛の獰猛な猫だ。

 頭の左右に前方に向かって伸びる鋭い角があり、牙と前足の爪も鋭い。

 それに勘も鋭いから、遠距離攻撃は躱されまくって全然当たらない。


「まあ、流星拳があるから大丈夫だろう。今なら余裕で倒せる」


 黒ネズミの集団と違って、白獅子は単独だから倒しやすいモンスターだ。

 高速パンチで反撃する隙も与えずに、一方的に殴り倒せると思う。


「いやいや、まだ甘いな。もっと強力な技が必要だ」


 油断は禁物だ。ネズミやネコを倒しても調子に乗らない方がいい。

 コイツらは勝てて当たり前の相手だ。

 おそらく命結晶を手に入れて進化すると、次は地下三十階に行けるようになる。

 より強力な技が無ければ、冒険者にやられる前にモンスターにやられてしまう。


「考えろ、考えろ、考えろ……」


 駄目だ。何も浮かばない。一生懸命考えた結果、何も思い浮かばない事だけが分かった。

 とりあえず進化した後にもう一度考えよう。考える必要がないぐらいに強くなるかもしれない。


「ジェノサイドホーン……ジェノサイドクロー……駄目だ。どっちもいまいちだ」


 そう思いながらも、ちょっとは考えながら荒野を進んでいく。

 すると、赤い荒野に白い牛のような巨体が見えた。


 新技が完成する前に戦わないといけないらしい。

 両手を岩の手で巨大化したが、角も鉤爪も付けていない。

 あえてやるなら、岩の手を槍みたいにして『ジェノサイドランス』が良いかもしれない。

 でも、殴り飛ばすが突き刺すだけに変わっただけだ。この程度を新技にする事は出来ない。


 ダッダッダッ……


「ガルゥ、ガルゥ!」

「仕方ない。実戦から学ばせてもらおうか」


 白い巨体の獅子王が俺に気づいて向かってきた。

 両手を獅子王に向かって構えると、右手だけを鋭く尖らせてみた。

 とりあえず一つずつ試さないと効果は分からない。

 腹の太さもある極太槍の先端を獅子王の顔面に向けた。


「『流星槍』で行こうか」


 技名は決まった。次は顔面に決めるだけだ。

 右腕に魔力を込めて、向かってくる白獅子が飛び掛かる前に高速の一撃を撃ち放った。

 

 ズドォン——


「グガァー‼︎」

「ぐっ、腕が折れる……!」


 顔面にブチ込む事には成功したが、顔に右腕が突き刺さったまま、白獅子が俺に倒れ込んできた。

 そして、そのまま地面に押し倒されてしまった。


「くっ、重い!」


 流星槍は明らかに、正面から向かってくる大型モンスターには向いていない。

 身体の上に乗られてしまうと、倒しても消えるまでは身動き出来なくなる。

 やはり流星拳で殴り飛ばした方が良かった。

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