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第36話 階段の解毒薬

 十五階で赤い宝箱を三個見つけると、十六階を目指す事にした。

 十六階では赤い宝箱を探しつつ、『デスアウル』という大型の灰色鳥、フクロウを倒す予定だ。

 デスアウルは木の上から獲物を見つけて、無音の羽ばたきで高速で襲い掛かってくる。

 森林地帯の無音の暗殺者として、冒険者達に恐れられている存在だ。


「モンスターは任せた。俺達は宝箱探しに集中したい」

「ああ、気にせずに探していいぞ。上は俺が見ているから」

「じゃあ、頼んだぞ」


 ジェイがデスアウルと木の上の宝箱を担当してくれるそうだ。俺とメルは地面に集中できる。

 十五階の赤い宝箱は、地面と木の上から見つかったから、青い宝箱は違う場所の可能性が高い。


 だが、宝箱探知のLVを上げた方が見つかる可能性は上がる。

 余計な欲をかいて、岩の中とか木の天辺とか変な場所を探している時間はない。


 コン、コン……


「隊長! ありました!」

「分かった。すぐに掘る」


 地面に槍を突き刺して、メルが呼んでいる。

 岩スコップを作って、槍の刺さった地面を掘っていく。

 すぐに赤い宝箱が見えてきた。やっぱり青い宝箱は木の天辺にあるかもしれない。


「青いのが全然見つかりませんね」

「探すやつが多いからだろう。それでも赤いのを見落としているから可能性はある」

「そうですね。諦めたら試合終了ですよね」

「その通りだ。よし、次を探すぞ」


 十五階以上の青い宝箱のアビリティは使えるのだろう。

 探している冒険者が多いのか、赤い宝箱しか見つからない。

 それでも探さなければ赤い宝箱も見つけられない。

 青い宝箱は探し続けた者にしか手に入らないのだ。


 四時間後……


「なぁ、これを見つけたら絶対にもう行くからな」

「まだ昼を少し過ぎた程度だ。夜には着ける」

「砂漠まで探そうとしなければそうかもな」


 ジェイが二十階に急がせるが問題ない。

 昨日は夜八時に寝て、夜中の二時に起きて宝箱を探し始めた。時間はまだまだタップリある。

 デスアウルの爪を手に入れて、メルの短剣もアイアンダガーから『アサシンダガー』に強化した。

 十六階にあった三つ目のモヤモヤを頼りに、地面を槍で突き刺して探していく。


 コン、コン……


「よし、あったぞ!」


 四等分したモヤモヤ範囲の三等分目で当たりが来た。

 魚釣りをしているみたいで、このヒットの手応えがなかなかクセになる。

 メルとジェイを呼ぶと、二人が来る前に岩スコップで地面を掘り起こしていく。


「……また赤か」

「これでもう気は済んだだろう? それに探すなら二十階の方が中身は良いぞ」


 地面から現れた赤い宝箱を見てガッカリしていると、ジェイがまた二十階に行こうと言ってきた。

 ただし、今回は二十階の青い宝箱を探しに行こうというものだった。


 確かに暑い砂漠の中を探したくない。あそこは砂、砂、砂しかない。

 たまに瓦礫が落ちていたり、オアシスと呼ばれる草木が生えた湖があるだけだ。

 次に探すなら、十九階のピラミッドの方が探す環境は良い。


「そうだな。そうするとしよう」

「だったら、早く行こうぜ」


 ジェイの提案を受け入れると、十六階の宝箱探索を諦めた。

 隠し部屋がありそうな遺跡を探した方が見つかりそうだ。


 ♢


「隊長、この瓶は何ですか?」


 森林地帯を抜けて、十七階への階段を下りているとメルが聞いてきた。

 階段の途中に台が置かれていて、その台の上に紫色の液体が入った小瓶が二本置かれている。


「それは解毒薬だ。十七階に毒サソリがいるから、ギルドが階段に無料で置いているんだ」

「へぇー、太っ腹なんですね」

「やれやれ、お前はまだまだ子供だな。タダより高いものはないだぞ」

「そうなんですか?」


 小瓶の中身を教えて、誰が置いているのか教えると、メルは普通に感心している。

 前にもしっかり教えたのにもう忘れている。冒険者ギルドと換金所には金の亡者と腐った奴しかいない。

 この一見親切そうに見える解毒薬の罠を教えてやった。


 まず、ゾンビがいる二十階の前後の階段にも『聖水』が置かれている。

 聖水を飲めば、ゾンビに噛まれても短時間なら治療できる。

 状態異常を持っているモンスターの近くには、ギルドが治療薬を置いている。

 ただし、置くのはたったの五本だけだ。こんなのは薬を買わせる為の試供品だ。


 前に数が足りないと苦情を言ったら、「以前、大量に置いていた時に、薬を全部持っていって売り捌いていた冒険者がいたので、もうそれは出来ません」と断られてしまった。

 確かに一本2000ギルの解毒薬が階段に置いてあったら、持っていく奴はいる。


 でも、冒険者全員がそんな悪い奴じゃない。

 用心の為に台から持っていって、使わなかったら台に戻すやつがほとんどだ。


「それで瓶の数が少ないんですね。人の親切を悪用するなんて悪い冒険者がいるんですね」

「何を言っているんだ? 確かにそいつも悪いが、ギルドの方がもっと悪い。お前の分の解毒薬と聖水合わせて、14000ギルもしたんだ。こんなの詐欺だからな」

「私の分まで買ってくれたんですね。隊長、ありがとうございます」


 丁寧に教えてやったのに、子供には本当に悪い奴が理解できないようだ。

 台に解毒薬や聖水が無かったら、命に関わる大問題になる。

 だから高い金を出して、二人分の薬を換金所で購入してきた。

 こんな使うか使わないか分からない薬に、金を払わされるんだから、こっちは脅迫されている気分だ。


「そんなに文句言う程の金額か? 命の値段なら安いだろう」

「五日分の食費代は安くはない」


 金持っている冒険者には、宿屋暮らしの苦労も子育ての苦労も分からないらしい。

 これだから苦労の一つもした事がない子供は困るんだ。人生の経験値が足りない。


「まあ、薬があるなら心配ないな。十九階までは寄り道なしだからな」

「分かっている。だが、オアシスで水分補給はするからな。飲み水がないと死んでしまう」


 階段を下りていくと、階段の出入り口に薄茶色の砂の地面が見えてきた。

 砂漠は蒸し暑いジャングルとはまた違った暑さだ。

 ジャングルは気持ち悪い暑さで、砂漠は痛い暑さだ。


「暑くても出来るだけ肌は隠しておけ。あとでヒリヒリ痛いからな」

「分かりました」


 砂漠の注意点を教えると、メルの頭にフードを被せた。

 一面砂の地面は走りづらく、歩くだけでもいつもの数倍の体力を消費する。

 力尽きた冒険者は砂の中から、骨になって発見されるだけだ。

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