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第35話 間話:狩人ジェイ

「何だよ、これは?」


 しっかり睡眠を六時間取ると、おっさんと娘は十五階の森林地帯の宝箱探しを始めた。

 この辺がモヤモヤすると娘が言うと、おっさんに岩の槍を渡された。

 これから地面を槍で突き刺しながら、木の上と地面の中に宝箱がないか探すそうだ。

 父娘で頭がイカれている。


「娘が虐待されているんじゃなかったのかよ?」


 適当に柔らかい濃茶色の地面に、槍を突き刺しながら歩いていく。

 換金所のオヤジに「娘を虐待している冒険者がいるから、証拠を押さえて捕まえてくれ!」と頼まれたのに、話が全然違う。

 おっさんの方が娘に飼い犬のように支配されている感じがする。

 どう見ても日常的に暴力を振るったり、食事を抜きにしているようには見えない。


 身体に虐待されている痣も見当たらないし、もう無実のようなものだ。

 さっさと護衛じゃないと話して、こんな槍は投げ捨てたい。


 だけど、まだ一日目だ。

 おっさんが我慢している可能性や上手く隠している可能性もある。

 もうしばらく監視を続けるしかなさそうだ。


「はぁ……俺もモンスター狩りの方が良かった。こっちの方が重労働だ」

「おーい! もっとテキパキやれ! 一宝箱二時間が基本だぞ!」

「何だよ、それ? 無理に決まっている。普通五時間はかかる」


 一緒に始めたのに、遠くの方におっさんと娘がいる。

 おっさんが怒鳴り声を上げているが、こっちは宝箱探し業者じゃない。

 テメェらプロ業者がいつも通りに二人で二時間で見つければいい。


 ドォス、ドォス、コン……


「んっ? 木でも埋まっているのか?」


 四等分された捜索範囲の二等分目を調べていると、槍の先端が何か硬い物に当たった。

 地面に四十センチ程埋まっている槍を掘り起こしていく。

 柔らかい土を退けていくと、地面から赤い宝箱が見えてきた。


「……やべぇな。本当に見つかったよ」


 イカれた父娘に適当に付き合っていたら、本当に地面から宝箱が出てきた。

 とりあえず宝箱を見つけたから、言われた通りに二人を呼んでみた。


「おーい! 見つけたぞぉー!」

「何! 本当か!」


 少し遠くにいる父娘に向かって、槍を振って大声で呼びかける。

 宝箱を見つけたら、絶対に開けずに娘に開けさせるように注意されている。


「赤と青のどっちだ?」

「赤だよ」

「やっぱり赤だったな」


 すぐに二人が走ってきて、おっさんの方が色を聞いてきたけど、そんなのは見れば分かる。

 娘の方はおっさんを気にせずに宝箱を開けている。

 二人とも宝箱を見つけて開けるのに、異常な興奮でも感じているんじゃないだろうか。


「隊長、これが『竜水銀』ですか?」

「ああ、残り二個見つければいい。あとは次の階でジェイがデスアウルの爪を三本手に入れるだけだ」

「……」


 俺かよ? 自分の娘なんだから自分で手に入れろよ。

 換金所のオヤジの言う通り、おっさんは口だけで実力は大してないようだ。

 十五階まで娘と一緒にほとんど見ているだけだった。

 襲ってきたワイルドボアも俺が一人で倒している。


「よし、次を探すぞ。まだこの階にはありそうだ」

「はい!」


 透明な雫の形をした竜水銀を娘の短剣に吸収させると、父娘は次を探そうと動き出そうとした。

 流石に十五階全部を調べて回るのは頭がおかしい。

 

「ちょっと待て。一個でいいだろう? 足りない分は帰りに五人で探せばいい」


 ダリル達が二十四階に行って、二十階に引き返すのが今日の夜ぐらいだ。

 一個二時間の宝箱を一階ずつ丁寧に探している時間はない。

 そう思って、父娘を止めた。けれども……


「いや、駄目だ。青い宝箱を探しているし、十七階は砂漠地帯だ。暑いし、毒サソリに砂サメがいるから危険だ。念入りに探すなら十五と十六階しかあり得るない。時間が足りないなら、砂漠は素通りすればいい」

「まぁ、それだったら問題ないか……」


 おっさんの方がそれらしい事を言って、続行すると言い出した。

 本当に砂漠を素通りするなら問題ないが、青い宝箱が十五、十六階で見つからなかったら探すだろう。

 砂漠でも探すと言い出したら、娘を担いで二十階を目指せばいい。

 あのおっさん一人じゃ、宝箱探しもモンスター狩りも出来ないからな。

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