第34話 五人組パーティ
昨日、換金所のオヤジから教えられた住所に行って、紹介された男三人と会ってきた。
ひと月十二万ギルの立派な貸家だったが、全然羨ましくない。だって貸家だ。
そして、今日。その三人と二十五階を目指している。
「前は俺が見ている。ジェイとマークスは左右を頼む」
斧使いの重戦士ダリルが隊長で、短い銀髪を逆立てている巨漢の二十五歳だ。
両刃の斧を持って、黒と茶の革鎧で全身を覆っている。
いかにも俺に任せておけの自信家兄貴肌タイプだ。
「今からそんなに気合い入れていると疲れますよ。二十階までは力抜いて行きましょうよ」
索敵担当の狩人ジェイは細長い身体付きで、黄土色のフード付きマントで紺色の髪を隠している。
弓と剣の両方を使えるそうだが、年齢は十八歳で俺よりも年下だ。
モンスターの気配が分かるからと、地下三階程度は完全に舐めている。
「雑魚の今だから練習するんだ。ここなら失敗しても軽傷で済む。護衛対象がいて、パーティの人数が増えれば、連携も動きもいつもと違うんだからな」
「ハッハッ。ここだと雑魚過ぎて練習にもならないって」
炎の魔術師マークスは二十一歳で、赤い髪に引き締まった筋肉質の身体で、武器は槍を使う。
戦士風の服からも魔法剣士を目指していたのに、魔術師になってしまった感じが漂っている。
役割が俺と被るから、俺の存在感がかなり薄くなった気がする。
「今日は十五階まで目指そう。そこからは宝箱と素材を集めながら進んでいく」
だから、三人の会話に混ざって、隊長としての存在感をアピールする。
悪いがダリルには、しばらくの間は副隊長に降格してもらう。
「俺達は構わないが、お嬢ちゃんは大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。この靴と指輪がありますから」
ダリルはメルが付いて来れるのか心配しているが、メルは素早さ上昇と体力上昇の神器を装備している。
もしかすると俺の方が大丈夫じゃない可能性もあるぐらいだ。
「心配無用だ。俺がしっかりと鍛えているから、その辺の新人冒険者よりも優秀だ」
「それは助かる。だが、こちらの実力不足だ。護衛対象の安全の為に少しだけ進行速度は落とさせてもらいたい」
「やれやれ仕方ないな。少しだけにしてくれよ」
「申し訳ない。助かる」
隊長と副隊長の上下関係をしっかりと周りに見せる為に、上から目線で物を言う。
ダリルの申し出は非常に助かるが、遅すぎると困るのも事実だ。
今回のダンジョン探索は五日間を予定している。まずは十五階までの移動に一日。
十五階から二十五階までの探索に二日。二十五階から町までの帰りに二日を予定している。
食糧はその辺の冒険者に分けて貰えば、最悪何とかなるが、硬い階段に一週間以上は寝たくない。
♢
「ジェイ、マークス! 顔面を狙え!」
ダリルの指示と同時に二本の矢と炎の塊が、四足歩行で突撃してくる洞窟グリズリーの顔面に直撃した。
グリズリーは顔の火を消そうと悶え苦しんでいるが、そこにダリルが斧を振り上げて接近する。
「ハッ!」
「グゴォ……」
ズガァ! 気合いを入れて振り下ろされた斧が、グリズリーの頭を縦に割った。
俺が苦戦したモンスター達が、三人の連携攻撃で次々倒されていく。
まあ、俺なら一人で倒せる相手ではある。
「順調だな。これなら十五階の階段まで行けそうだ」
「当たり前だろ、おっさん。何なら十五階の調査まで今日中に済ませてやるよ」
「おっ⁉︎ そ、そうか、それは頼もしいな……」
たった二歳しか違わないのに、このガキが俺をおっさん呼ばわりした。
生意気な口を利く狩人はムカツクが、コイツらとは一回だけの付き合いだ。
我慢しないといけない。
二十五階まで行く目的は主に三つある。一つ目は武器『アイアンダガーの強化』だ。
強化素材は、洞窟グリズリーの爪三本、デスアウルの爪三本、竜水銀三個だ。
これは簡単に終わる可能性が高い。『竜水銀』は十五階から十九階までの赤い宝箱から入手できる。
次に二つ目の目的は『四つの神器の強化』だ。
【神器の手袋:筋力上昇LV3】
【LV4強化素材:毒サソリの尻尾五本、ブルータートルの甲羅五枚、獅子王の皮五枚】
【神器の指輪:体力上昇LV3】
【LV4強化素材:砂サメの皮五枚、黄金虫の甲殻五枚、ゾンビの骨五本】
【神器の指輪:自然治癒力LV2】
【LV3強化素材:ホーンディアの角五本、ワイルドボアの牙五本、砂サメの牙五本】
【神器の靴:素早さ上昇LV2】
【LV3強化素材:デスアウルの羽根五枚、槍魚人の槍五本、獅子王の爪五本】
神器の強化素材は二十四階までで全部手に入る。
魔石と不必要な素材はダリル達に全部渡す代わりに、こっちは宝箱と必要な素材は全部貰う約束をしている。
タダ働きになるが、貰える強化素材だけでも、売ればかなりの金額になる。
悪くはない取引きだ。
三つ目の目的は『二十五階の青い宝箱』だ。
青い宝箱のアビリティは五階ごとに変わるから、キリがいい二十五階まで行く事にした。
俺一人でも十四階まで、メルを連れていく事は出来るから、七階の青い宝箱探しは延期した。
全ての目的を達成して町に帰れば、俺達の実力は大きく跳ね上がっている。
「なぁ、おっさん? 宝箱って探さないと駄目なのか?」
「おっ……どうしてだ?」
十五階への階段を下りながら、また生意気なガキがおっさんと言った。
怒りたい気持ちを我慢して、質問の意図を聞いてみた。
「少し考えれば分かるだろう。時間が足りないんだよ。もっと効率的にやろうぜ」
「確かに俺も宝箱探しに時間がかかると思っていた。モンスター狩りと宝箱探しの二手に分かれるのが良いと思うんだが、どう思う?」
「……」
狩人と重戦士の二人が俺の完璧な計画に欠点があると言ってきた。
重戦士と魔術師が二十四階まで二人で行って、強化素材を集めてくるらしい。
その間に俺とメルと狩人の三人で、宝箱を探す方が効率的だそうだ。
「俺の実力では獅子王は四人じゃないと倒せないと思っていたから、その考えは頭の中から抜け落ちていたよ。申し訳ない」と俺が謝れば満足なのか?
それとも、「お前達二人で倒せるなら行けばいい。さっさと行けよ! どうせ、俺は二十五階まで行く予定なんだから時間は変わらない!」と俺がお前達の愚かさを教えるべきなのか?
もちろん、そんな事は思っていても言ってはいけない。
「あぁー、それでもいいんじゃないのか?」
だから、文句は言わずにダリル達の意見を尊重して、自由にさせる事にした。
「よし、二十階の階段を待ち合わせ場所にしよう。早く終わったら、ゾンビの白魔石を集めればいいからな」
「ジェイ、モンスターを見落とすなよ」
「分かってる分かってる。そっちは往復十三階なんだから早く行けよ」
「二人を任せたからな。怪我させるんじゃないぞ」
「大丈夫だって。おっさんにも怪我一つさせないって」
三人は俺を無視して話し合いを終わらせると、ダリルとマークスの二人が十五階の階段を下りていった。
残された俺達三人は今日はここで休憩して、明日の朝に宝箱探しをする事になる。
「チッ……Dランクのくせに舐めやがって」
メルを連れて狩人とは離れた場所に寝転んだ。
さっき分かった事がある。あの三人の中では、俺も護衛対象に含まれている。
本当は効率じゃなくて、邪魔な俺とメルを狩人に子守りさせたかっただけだ。
絶対に凄い青い宝箱を見つけて、死ぬほど羨ましがらせてやる。




