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第31話 地下十三階ホーンディア

 週末土曜日の朝、一人でダンジョンにやって来た。

 メルには、土日は宿屋で宿屋謹慎してもらう。


「これはいいな。これなら行けそうだ」


 地下五階の青い宝箱で手に入れた、神器の靴:素早さ上昇LV1を履いている。

 この靴のお陰で、いつもよりダンジョンを素早く進めている。

 これなら目標の地下十五階まで行けそうだ。


 今回の目的は、神器の強化素材を集める素材採取ツアーだ。


【神器の手袋:筋力上昇LV2】

【LV3強化素材:猿獣人の皮五枚、洞窟グリズリーの皮五枚、ワイルドボアの皮五枚】


【神器の指輪:体力上昇LV2】

【LV3強化素材:パラライズスネークの牙五本、沼ワニの牙五本、ホーンディアの角五本】


【神器の指輪:自然治癒力LV1】

【LV2強化素材:ブルークラブの甲羅五個、スカイフィッシュの魚鱗五枚、人面枯れ木の板五枚】


【神器の靴:素早さ上昇LV1】

【LV2強化素材:ウルフの皮五枚、パラライズスネークの皮五枚、ホーンディアの皮五枚】


 金が全然足りない。これを全部換金所で買っていたら破産してしまう。

 メルをワイルドボアが生息している、地下十五階まで連れて行くのも危険過ぎる。

 どう考えても宿屋謹慎させて、俺一人でやるしかない。


「一番注意するのは痺れ蛇だけだな」


 単独でダンジョンに挑む場合に一番注意するのは状態異常だけだ。

 地下十七階の毒サソリ、地下二十階のゾンビと、状態異常を与えるモンスターは多い。

 半年前の俺も十五階ぐらいまでしか行かないようにしていた。


「まずはブルークラブの甲羅五個だな」


 地下七階に到着した。ウルフの皮五枚は、昨日手に入れた皮を使ったから必要ない。

 まずは七階から九階にいるモンスターから、自然治癒力LV1の強化素材を集める。

 メルの自然治癒力がLV3だから、LV4まで強化する必要がある。


「ハッ! オラッ!」


 七階のブルークラブは剣で突き刺し、八階のスカイフィッシュは剣で頭を切り落とす。

 九階の人面枯れ木はいつも通りに岩杭で、縦に真っ二つに割って倒した。


「フッフッ、余裕だな。さて、強化するか」


 地面に落ちている魔石と人面枯れ木の板を拾った。

 これで自然治癒力LV1の強化素材が集まった。

 右手の人差し指に填めている指輪に板を押し当てる。

 板は指輪に吸い込まれると、指輪がピカッと光ったが、変化はこれで終わりらしい。


「これで次に必要な素材が分かるな」


 まずは最初の目標を達成した。右手を握って『調べる』を使った。


【神器の指輪:使用者に自然治癒力LV2を与える】

【LV3強化素材:ホーンディアの角五本、ワイルドボアの牙五本、砂サメの牙五本】


「最悪だな。十八階の砂漠まで行けるかよ」


 強化素材の中に、十八階の砂漠地帯に生息する砂サメの名前があった。

 今日中に他の神器と同じように、LV3まで強化できると思ったのにこれは無理だ。


 ♢


「ふぅー、今日は凄く楽だな」


 宝箱探しと違って、順調に真っ直ぐに地下十三階までやって来れた。

 まあ、倒したのは猿獣人と痺れ蛇と沼ワニの三種類だけだ。順調なのは当然だ。


 地下十三階と十四階は洞窟山脈と言われている。天候は晴れで気温は少し肌寒い。

 横に真っ直ぐに上下に分かれて伸びる山道と、洞窟の中を通りながら進んでいく。

 その洞窟山脈にターゲットの『ホーンディア』が生息している。


 ホーンディアは紺色と白色のマダラ模様の大きな鹿で、頭に枝分かれした乳白色の角が生えている。

 コイツの角と皮を手に入れれば、体力上昇と素早さ上昇の神器を強化する事が出来る。

 とりあえず素早さ上昇だけは強化して帰りたい。


「この壁を調べるのは難しいな」


 ホーンディアを探しながら、一応宝箱がありそうな場所も探していく。

 山道は上り坂や下り坂が複数あり、分かれ道もある。左右を垂直の高い岩壁に挟まれている。

 見上げる岩壁の所々に木が生えていて、緑色の葉っぱが茂っている。

 あんな高い所の葉っぱはホーンディアも食べないだろう。


「行き止まりは……こっちか」

 

 地図を見ながら、分かれ道は人が通らない方を選んで進んでいく。

 しばらく山道を進んでいくと、目当てのホーンディアと遭遇した。

 馬よりも少しだけ身体は小さいが、角を含めると馬の頭の高さと同じぐらいはある。

 目が合うと、「ピー!」と甲高い鳴き声を上げて走って来た。


「さてと、まだ通用すればいいんだがな」


 好戦的なモンスターは倒しやすい。

 左右の手の平をホーンディアに向けると、小さめの岩塊を発射していく。

 岩塊は大きな角で弾かれ、左右に避けられる。身体に当たっても全然止まらない。


 だが、これでいい。全ては俺だけに意識を真っ直ぐ向けさせる為だ。

 足裏から地面に魔力を流すと、ちょうどいいタイミングで『ウォール』と念じた。


 ドガァン——


「ピー‼︎」


 突然地面から現れた岩壁にホーンディアは激しく激突した。

 激突した衝撃で停止して、岩壁の上半分がバキバキとへし折れて地面に倒された。

 五ヶ月間の自宅修行で鍛え上げられた俺の岩壁が、五ヶ月前と同じように壊された。


「ピー! ピー!」

「やっぱりしぶといな」


 ホーンディアは軽い目眩でも起きたように頭をブンブン振ると、怒ったように鳴き声を上げる。

 角も身体も頑丈だからほとんど無傷だ。まあ、分かっていた事だから問題ない。

 今度は岩壁ではなく、岩杭を前足を狙って地面から突き出した。


「ピー‼︎」


 バキィ! 突き出た岩杭にホーンディアの右前足がへし折れ、胸の中心に先端が浅く突き刺さった。

 俺の岩杭は地面に近いと威力が上がり、地面から離れていると威力が下がる。

 足長ホーンディアには、痺れ蛇や沼ワニのような高威力は期待できない。


 だが、動けない相手を姉貴の凄い剣で倒すのは楽勝だ。


「待たせたな。すぐに楽にしてやる」

「ピー……ピー……」


 鞘から剣を抜くと、足を引き摺るホーンディアに近づいていく。

 姉貴はこの剣を地下三十五階まで使っていた。

『剣術LV2』の俺でも、この辺の雑魚の身体なら切る事が出来る優れ物だ。

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