表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/172

第30話 間話:メル

「すごく暇……」


 週末土曜日の朝、宿屋のベッドで一人でゴロゴロしている。

 隊長は「靴を強化してくる」と言って、一人でダンジョンに行ってしまった。

 私はおじ様とおば様に見つかったら駄目なので、宿屋で外出禁止になっている。

 でも、すごく暇だ。


「靴は持っていかれたけど、武器と指輪があるなら大丈夫かも?」


 昨日、ブロンズダガー改を『ウルフダガー』に強化した。

 さらにウルフダガーも神鉄と沼ワニの素材を使って、『アイアンダガー』に強化した。

 銅色だった刀身は分厚くなって鉄色に変わって、牙のように鋭くなった。


 素早くなれる靴は隊長が履いていったけど、私には強化した短剣と筋力上昇LV2の指輪がある。

 今の私なら一階のスライムぐらいは倒せると思う。

 どうせ、隊長は日曜日の夜まで帰らないから、好きに遊んでも分からないはずだ。


「よし、行ってみよう!」


 短剣と指輪を持って、鞄を背負うと宿屋を出た。

 今日の目標は『自分の食費は自分で稼ごう!』に決めた。

 スライムを五十匹倒したら、換金所でお金に交換してもらおう。

 そして、そのお金でお昼ご飯を食べる。


 町中をおじ様とおば様に見つからないように進んでいく。

 ダンジョンの前も念入りに確認して、人が少なくなった瞬間に……


「今だ!」


 と一気に走って、急いでダンジョンの扉を開けて中に入った。


「ふぅー、緊張しました。さあ、出発!」


 気合いを入れると長い階段を下りていく。

 白い階段から薄茶色いの地面に変われば、地下一階に到着だ。


 地下一階は何度も歩き回ったから、地図が無くてもある程度分かる。

 まずは真っ直ぐ進んで、分かれ道を左に進んだ。右に進むと地下二階への階段がある。

 左にはあまり人が来ないから、スライムが倒されずに残っている。


 グニュ、グニュ……


「あっ、やっぱりいた。よぉーし、倒してやる!」


 道を歩いていくと、壁をゆっくり這うように進んでいる青色のスライムを見つけた。

 スライムの動きは遅いけど、たまにカエルのように飛び跳ねて、体当たりしてくるから注意が必要だ。


「エイッ!」

「……‼︎」


 グサッ! 短剣を鞘から抜くと、スライムの身体に下から上に向かって突き刺した。

 青色の水が飛び散って、スライムの身体に刀身が根元近くまで突き刺さっている。

 完全に突き刺すまでは、まだちょっと筋力が足りないみたいだ。


 それでも短剣を素早く引き抜いて、もう一度スライムの身体に突き刺した。

 短剣が突き刺さると、スライムはビクンと痙攣して、破裂して消えてしまった。

 その代わりに親指ぐらいの大きさの、黒色の魔石が現れて地面に落っこちた。


「よし! 私でも倒せる!」


 落ちている魔石を拾うと、背中の鞄の中に入れた。目標は残り四十九匹だ。

 お昼前に終わらせて、隊長に内緒で換金所近くの食堂でご飯を食べよう。

 おじ様とおば様に見つかると、禁止されているけど、パパッと食べれば大丈夫だ。


 ♢


「すみません、ここで魔石をお金に替えられますか?」

「んっ?」


 目標のスライム五十匹を倒したので、換金所に向かった。

 換金所のカウンターは高いから、カウンターの向こう側のおじさんに両手を振って、存在感をアピールする。

 頭の先が少しは見えているから、きっと気づいてくれるはずだ。


「あぁ、ごめんごめん! 可愛いお嬢ちゃんだったから見えなかったよ。それで何の用で来たんだい?」


 赤毛のおじさんが気づいてくれたけど、私の話は聞こえてなかったみたいだ。

 鞄を持ち上げてカウンターの上に置くと、仕方ないのでもう一度話した。


「この魔石とスライムゼリーの換金できますか?」

「あぁ、換金に来たのか。お父さんのお手伝いかい? 偉いねぇ。お父さんはどこかな?」

「いえ、私一人で来ました」

「そうかそうか、それは偉いねぇ。お父さんの冒険者カードは預かっているかな?」

「うっ……」


 おじさんは微笑みながら話を聞いてくれるけど、私はカウンターの上に両手で乗っかって話している。

 両手がプルプル疲れてきたから、そろそろ椅子でも用意して欲しい。

 でも、期待するだけ無駄だと思うから頼んでみた。


「すみません、椅子ありますか? 腕が疲れちゃって……」

「あぁ、ごめんごめん。お嬢ちゃん、すぐに用意するよ。ちょっと待ってて……」

「はぁーい」


 頼んだら、おじさんは椅子から立ち上がって、椅子を探しに行ってくれた。

 座っていた椅子を渡してくれた方が早いと思うけど、おじさんの椅子は駄目みたいだ。

 しばらくしたら、同じような椅子を持ってきた。


「ちょっと重たいよ」

「ありがとうございます」


 おじさんにお礼を言うと、カウンターに置かれた大きな椅子を持ち上げて、床に置いた。

 椅子の上に膝を立てて座ると、すぐにおじさんが聞いてきた。


「それでお嬢ちゃん、お父さんの冒険者カードはあるかな? それが無いと規則で換金できないんだよ」

「ごめんなさい、お父さんはいないです。一人で来ました」

「そうかぁ……ごめんな。保護者のような人はいるのかな?」


 お父さんがいないと言ったら、おじさんがちょっと気まずそうな顔になった。

 別にそれはいいけど、早くお昼ご飯を食べたい。早く換金して欲しい。

 それなのに質問ばかりしてくるから面倒くさい。

 だから、換金できるのか結果だけを聞いてみた。


「いないです。私一人です。私一人だと換金できないんですか?」

「あぁー、一人なんだ……いや、出来ない事はないよ。年齢制限は無いからね。でも、職業を習得してないと駄目なんだよ。ごめんね、お嬢ちゃん。もう少し大人になってから来てね」

「むぅー!」


 おじさんは明らかに断る雰囲気で話しているけど、私は盗賊の職業を習得している。

 スライムも一人で倒してきたから駄目じゃないと思う。その事をキチンとおじさんに教えた。


「ほぉー、それは凄いな。ちょっと調べてみるから、お嬢ちゃんの頭を触っていいかい?」


 すると、おじさんは少し驚いた顔をしてから、調べたいと言い出してきた。

 手を触られるのは無理だけど、頭ならギリギリ我慢できそうだ。


「はい、どうぞ」

「すぐ終わるから動いたら駄目だよ……」

「はぁーい」


 許可するとおじさんが手を伸ばして、頭の上にポンと軽く置いた。

 でも、おじさんの顔が少しずつ怖い感じに変わっていく。


「何だ、これは……ハッ‼︎ お、お嬢ちゃんの名前はメルちゃんでいいのかな?」

「はい、そうですけど……」


 名前を教えてないのに、おじさんが私の名前を言ってきた。

 きっと『調べる』で私の名前を見たんだと思う。でも、驚く理由が分からない。

 

「あの腐れ外道め‼︎ やっぱり噂通りの、いや、噂以上のロリロンリーだったのか‼︎ 虐待に暴行……人間のやる事じゃない!」

「……」


 何かよく分からないけど、おじさんが顔を真っ赤にしてめちゃくちゃ怒っている。

 職業を習得していると分かったなら、早く換金して欲しいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ