60話 GUNREPAIRER GIRL
パンデモニウム女学園の練習場――――
普段は魔法の発動の練習として使われる場所だが、今日は発砲音が響いていた。
発砲音と同時に的のカカシの頭部が吹き飛ぶ。
リボルバーを手にした真壁が次の標的を狙おうとしたとき、声をかけられた。
「おうヴィック」
「おいっすー。練習とはご精が出ますなー」
ヴィクトリアの姿を認め、銃を下ろす。
「どう? 射撃の調子は」
「以前と比べると少しずつ命中率はあがってると思うぞ」
「そりゃボクの造った銃があったればこそだよ☆」
ふふんと自慢げに胸をそらす。
「まあな。ただ、止まっている的を撃つのはカンタンだけど、動いている的を狙うのが難しいんだよな……」
リボルバーを一度ホルスターに収め、素早く引き抜いて発砲。だが、弾丸はカカシのすぐ横へ逸れた。
「早撃ちの練習もしてるけど、これがまた難しくて……」
弾丸を補充すべく、リボルバーの撃鉄の横にあるレバーを手前に引く。
「あれ?」
「どったの? イタル」
「いや、いつもならシリンダーが勢いよく出るんだけど、出てこなくて」
ヴィクトリアが見せてと言ったのでリボルバーを渡す。受け取るとすぐにシリンダー部分を確かめた。
「あーこれ、シリンダーのバネが伸び切っちゃってるね」
「マジか、直せるか?」
するとヴィクトリアがちっちっと指を振る。
「その質問は愚問だよ。ボクを誰だと思ってるのさ?」
「いよっ! 天才美少女発明家のヴィクトリアさま! 生徒会で辣腕をふるう副会長どの!」
真壁のよいしょにヴィクトリアが顔を紅くする。
「……自分で言っておいてなんだけど、なんか恥ずかしいな……」
◇◆◇
ふたりは練習場からヴィクトリアの研究室兼自室へと場所を変え、ふたりともテーブルに座していた。
真壁は目の前でヴィクトリアが修理するのを見つめるなか、手際よくシリンダーが分解され、新たなバネと交換を。
一度元の位置に戻してレバーを引くと勢いよくシリンダーが飛び出した。
「これでよし!」
「さんきゅ! やっぱヴィックは頼りになるな!」
えへへと天才美少女発明家が笑う。
「そうだ! ついでだからメンテナンスもしておくよっ。イタルが自分でもできるようにするから見ててねっ」
ドライバーを取り出して各部のネジを外していき、部品ごとに仕分ける。
「まずは銃身の掃除だよ」
取り出したのはクリーニングロッドと呼ばれる細い棒だ。先端に長方形の穴があいている。
その穴に布を通して巻き付け、銃身の中へ入れていく。
「こーやってくるくる回しながらゴミを取るんだ」
真壁がうんうんと頷きながら作業を見学する。やがてクリーニングが終わり、ロッドを引き抜く。
「で、お次が」
次に取り出したのは半円型の容器だ。中央には細い突起が付いている。
逆さまにすると突起から垂れる油を布に染み込ませ、銃身の各部位に差していく。
「こまめに油を差さないとね。あと付けすぎに気をつけること!」
「OK!」
最後に乾いた布でよく拭き、部品を元の位置に戻してネジを締め直す。
「はい。これで終わりだよ☆ でもチューンナップしたほうがいいかもね。今度考えておくよ」
「さんきゅ!」
ヴィクトリアから受け取ったリボルバーのグリップを片手で握り、適当なところへぴたりと狙いを付ける。
「……いよいよ明日だね」
「ん? ああ、ヴィックの実家に行く件か……」
先日、ヴィクトリアの両親から手紙が届いたのだ。以前ヴィクトリアが魔鉱石について相談するために出した手紙についての返信である。
それによれば、直接会って話したいのだそうな。
「そういや、ヴィクトリアの故郷ってなんて名前だっけ? ヴ、ヴェ……なんとか」
「『ヴェルクハイム』だよっ」
ヴィクトリア曰く、機械文明が発達した街なのだそうな。
「で、そのヴェルクハイムに住む両親に会って話を聞くってわけか」
「うん! とっても良い街だよ! なんたってボクのひいひいそのまたひいじいちゃんが発展させた街だからね☆」
「そうか! ますます行くのが楽しみになってきたな!」
ガンベルトから弾丸を抜き出してシリンダーに込めていく。
「魔鉱石を新たに見つける方法を聞き出して全部集める。んでもって――」
弾丸をすべて込め終え、ぱちんと銃身をはめる。
「元の世界に戻る!」
「うん……そうだね」
嬉々とする真壁を見つめるヴィクトリアは寂しそうな笑みを浮かべる。




