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59話 フランケンシュタインの赤ちゃん②


「遅いのぅ……」


 生徒会室にてヴェルフェが腕を組みながら言う。


「ですね。真壁さんはともかく、ヴィクトリアさんまでまだ来ないなんて……」


 リリアがふたつの空席を見やりながら。


「クリスもまだ来てないヨ」

「そういえばそうじゃな。三人そろってまだ来ていないとは……なにか予想外の出来事でもあったんじゃろうか?」

「ですね……」

「まあ、あれこれ考えてもしょうがない。会議を始めるぞ。リリア、今回も要望書は来てるかの?」

「はい」

 

 リリアが目安箱から回収した要望書を出そうとしたとき、生徒会室の扉が開いた。


「みんな、遅くなってごめん!」

「遅いぞ。いままで何をして……」


 ヴェルフェが驚きの表情を浮かべたので、リリアがヴィクトリアのほうを見る。

 クリスとともに現れた彼女が抱きかかえているのを全員が目にしたとき――――


 ばさりと要望書が落ちる音。


「ヴィ、ヴィクトリア……その子は? もしやホムンクルスを生み出したのか……? 禁断の実験に手を出すとは……!」

「まさか……ヴィクトリアさんに隠し子が……!?」


 リリアが思わず口を両手で覆う。


「ふたりとも落ち着くネ。その子はどうしたネ?」


 テンの問いにヴィクトリアが「実は……」と事の経緯を話す。

 

「なるほど……薬を誤って飲んで赤子になってしまったと」


 話を聞き終えたヴェルフェが腕を組みながらテーブルの上ではいはいする真壁を見る。


「まったくお主というやつは……なぜそのような真似をしたのじゃ?」

「そのことなんだけど、透明になれる薬と間違えて」

「もうよい。それでわかったわ」


 はあーっとため息をつく。


「そ、それで……真壁さんは元に戻れるのでしょうか?」

「あの薬はかなり年月が経っているのと、半分ほどしか飲んでないみたいだから、あさってには戻ると思うよっ」


 テーブル上の真壁が「だあー」と声をあげ、ヴェルフェのもとへ近づく。


「な、なんじゃ?」


 ヴェルフェにつかまろうと腕を伸ばし、テーブルから落ちそうになるのを慌てて受け止める。

 

「これ、危ないじゃろうが! まったく……」


 真壁がじっとヴェルフェを見ていることに気づいた。


「なんじゃ? 言いたいことがあるのなら言わんか。しかし、いい気分よのぅ。今まで見下ろされてきたわしが逆にこうして見下ろせるときが来ようとは」


 つんつんと柔らかな頬をつつく。


「今のお主はまさに赤子の手をひねるように……」


 そこまで言いかけたとき、腕にじわりと温かいものを感じた。

 

「オッ、オイ! 何をするか!? わしの制服に小便を漏らすとは!」


 八つ裂きにしてやるといきり立つヴェルフェをリリアとテンが押さえる。


「会長! いけません!」

「いったん落ち着くネ!」

「放せッ! 放さんかぁあああッッ!!」


 憤懣やる方ないヴェルフェに対して真壁はきゃっきゃっと笑うだけだ。


「まあまあ、子どものしたことだし……大目に見てあげてよ」


 ヴィクトリアが真壁を抱き上げる。


「ぬぅう……覚えておれよ」

 

 やっと落ち着きを取り戻したヴェルフェがクリスからタオルを受け取って拭く。


「それで真壁はあさってには元に戻るんじゃろな? それまでは誰かが面倒を見ないといかんな……」

「ワタシはお断りだヨ」


 テンの言葉にヴェルフェが「わしもじゃ」と頷く。そこへリリアが「あの」と遠慮がちに手をあげる。


「よろしければ私が面倒をみたいのですが……」


 だが、そう言うリリアの両眼は開いており、そこから桃色の瞳孔をのぞかせる。


「私、いろんな()()を試してみたかったんです……」

 

 手を口にやり、真壁を見ながらハァハァと息を荒くし、ぺろりと舌なめずりを。


「リリア、サキュバスのお主が言うと健全に聞こえんのじゃが……どちらにせよ、こやつの面倒はヴィクトリアにまかせるでな」

「ええっ! ボクが!?」

「元はといえば、お主の監督不行届きが原因じゃろ? その責任を取らねばならぬでな」

「そんなぁ〜」


 がくりとうなだれるヴィクトリアの三つ編みを真壁がぐいぐいっと引っ張る。


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