58話 祭りのあとで
学園の敷地に留まる飛空艇の前にはアスタリーナ含めチーム一同と真壁含めヴェルフェチームが勢ぞろいしていた。
全員ユニフォームから制服へと装いを変えている。
「今回の生徒会対抗祭、楽しかったですわ」
「うむ、良い試合じゃったな」
「ええ本当に……あんなに白熱する競技があるなんて、世界はまだまだ広いですわね」
アスタリーナが真壁のほうを見る。
「そうでしたわ。真壁さん」
真壁のもとへと歩み寄る。
「お約束の品を差し上げます」
そう言って首の後ろに手を伸ばし、金具を外す。そして淡く輝く石――魔鉱石を真壁の手に握らせた。
「あなたが元の世界に戻れるよう祈っておりますわ」
「さんきゅ!」
真壁さんと呼ばれたので彼女のほうを見ると手を両手で包むように握られた。
「あなたの提案した『バスケ』で楽しい思い出が出来ましたわ。あたくし、まだ胸がどきどきしてますの」
ぐいっと引っ張り、自らの胸に当てる。豊満な膨らみを通してどくどくと脈打つ動悸が伝わってくる。
「お、おぉふ……良い思い出になったようで何よりです……」
だらしなく鼻の下を伸ばす真壁の背後ではヴェルフェチームがじろりと突き刺すような視線を。
ヴィクトリアが真壁に近づき、尻を思いっきりつねった。
「いっ! なにすんだよ!」
「……えっち!」
ぷいっとそっぽを向く。
その様子にアスタリーナがふふっと微笑む。
「あなたにはぜひ我が校のコーチになっていただきたいですわ」
「ええっ!?」
これには両チーム全員が目を丸くした。
「それも悪くないな……」
ぽりぽりと頭を掻く。
「けど、悪い。俺はヴェルフェチームのコーチ兼監督と同時に生徒会の一員なんだ」
ヴェルフェがうむと頷く。
「真壁はもうわしたちの立派な仲間じゃ」
今度は全員が頷いた。
「残念ですわね……さて、あたくしたちはそろそろ出発しますわ。さあ皆さま行きますわよ」
深紅の絨毯を踏みしめながら、チーム全員が飛空艇へと乗り込む。
最後にアスタリーナがくるりと振り向き、「御機嫌よう」と言い残すとぱたりと扉が閉まった。
稼働音を響かせながら飛空艇はゆっくり上昇していく。飛空艇の舷側の窓からチーム全員が手を振ったので、ヴェルフェチームも手を振って別れを告げる。
そして飛空艇は回頭し、その場を後にした。
「嵐のように来て、これまた嵐のように去っていったのぅ」
ヴェルフェが飛空艇が見えなくなるまで見送りながら。
「イタル、魔鉱石をクリスに渡してっ」
言われたとおり、石をクリスに渡す。受け取ったクリスは自らの腹部の開閉部を開ける。そこには今まで得た魔鉱石が輝きながら収まっていた。
そこへアスタリーナから勝ち取った魔鉱石を収めるとくっついて一体となり、より輝きを増した。
するとクリスの両眼が輝く。
「現在の魔鉱石、37%です」
全員がおおっとどよめく。
「あれ? なんだか流暢になっていませんか?」
リリアが首を傾げながら。
「ふふんっ。魔鉱石のおかげさ☆ 石が集まると能力が向上するんだよ!」
ヴィクトリアが両手を腰に当てながら自慢げに。
「スゲーな! もっと集まったら空とか飛べるんじゃないか!?」
「さすがにそこまではむりだけどね」
「何はともあれ、これで元の世界へ一歩近づいたな! この調子で残りも集めていくぞ!」
ヴェルフェがばっと拳を挙げ、全員で「おーっ!」と鬨の声よろしく歓声をあげた。
◇◆◇
――数日後。
大会を終えた学園はいつもの日常に戻り、ヴェルフェたちも生徒会室でいつもの業務に取りかかっていた。
「さて、次の議題じゃが――」
「会長、目安箱が要望書でいっぱいになったので回収してきました」
リリアが大きめの袋を持って入ってくる。そして机の上に中身をあけた。
「うおっ! これ全部『バスケ部を作ってほしい』じゃねーか!」
「全部で135枚あるヨ」
「うむ……あの大会で思わぬ反響を呼んだようじゃな……」
「そりゃボクたち大活躍したしね!」
ヴィクトリアがえっへんと腕を組みながら。
「まあこの件はひとまず置いといて、要望のあった演劇部の予算なのじゃが」
「大会が始まる前に来ていた要望ですね!」
リリアがぱんっと手を叩く。
「うむ。その件なのじゃが、解決しそうなのじゃ」
一同からおおっと驚きの声。
「よくそんな予算あったな? かつかつだと聞いてたぞ?」
真壁の疑問にヴェルフェがうむと頷く。
「実はどこぞの誰かが大会で賭博行為をしておってな……その責任を問われて罰ということで罰金を充てさせたんじゃ」
ちらりと部屋の片隅にうずくまるシルヴィーに目をやる。
「ウチの、儲けが……酒代が……」
涙目でうっうっとこぼす。
「これで今回も演劇部の劇を観られることになったわけじゃ。万事解決じゃな!」
かかかと笑うと、いきなり警報音が鳴り響いた。
「な、なんだ!? また警報か!?」
全員が窓の方へ近づく。すると闇夜から船らしきものが近づいてくるのが見えた。
同時に学園の中央に位置する砲塔が展開されていく。
そこへいきなり扉が開かれた。エリザだ。
「会長! 大変です! アスタリーナがまた来ました!」
「なんじゃと!?」
エリザ含め全員が外に出、飛空艇を見上げる。
「今度はいったい何なんじゃ……」
「またなにか催しがあるのか?」
「いいえ、分校が来る催しはまだ先のはずです」
真壁の隣でリリアが手帳をめくりながら。
やがて飛空艇が着地し、全員がごくりと固唾をのむなか、船首の扉が勢いよく開いた。
そこからユニフォームに身を包み、ボールを脇に抱えたアスタリーナが颯爽と登場する。
「また来ましたわよ! 今回は真壁コーチを賭けて勝負ですわ!」
びしっと真壁を指さし、おーっほっほっほと甲高い声で笑う。
真壁含め、生徒会一行はがくりとうなだれる。
「……もう勘弁して」
真壁たちは魔鉱石を勝ち取った! 現在の魔鉱石37%。満タンまであと63%――――
バスケまったくやったことないのになんとかそれらしく書けました!
(たぶんこれが一番大変だったかも……)
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