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51話 激突! ヴェルフェチームVSアスタリーナチーム!


 両チームともにコートに入り、それぞれがポジションにつく。

 対するアスタリーナチームのスターティングメンバーはアスタリーナ、ゴーレム、アラクネ、ヘカトンケイル、透明人間の五名だ。

 コートの中央には猪に似たモンスターの審判がボールを手にし、審判を挟むようにしてアスタリーナとヴィクトリアが立つ。

 

「副会長のあなたが直々に出てくるなんて、余裕があると見ていいのかしら?」

「ボクだって会長には負けてないよっ」


 互いに火花を散らすなか、審判がルールの再確認を。


「――ルールは基本的にバスケのルールに則り、魔法や魔道具の使用は一切禁じます。あくまで己の肉体や能力のみで競ってください。よろしいですね?」


 ふたりがこくりと頷いたのを見て審判も頷き、ホイッスルを咥える。


「ティップオフ!」


 ピーッと甲高い音と同時にボールが高く上がった。と、同時にアスタリーナとヴィクトリアも跳ぶ。

 ボールにふたつの手が触れようとしたとき、先にヴィクトリアの手が触れた。


「とった!」

『先手はヴェルフェチームです!』


 着地し、そのままドリブルしながら敵地へと――


「ここから先は通さないわよ!」

「通れるものならやってごらん!」


 アラクネのラウラとヘカトンケイルのマーニャが行く手を阻む。


「……っ!」

『ラウラ選手とマーニャ選手による鉄壁のディフェンスです! この防衛陣を突破できるのか!?』


 ヴィクトリアがドリブルしながらどうするか考えていると横から声が。


「ヴィクトリア! こっちじゃ!」


 ヴェルフェが手を振りながら。


「頼んだよヴェルフェ!」


 ヴィクトリアの投げたボールをばしっと受け止める。だが勢いが強すぎたのか、けんけん足だ。


「うおっ! とと……」


 ピーッとホイッスルの甲高い音。次に審判が両腕を交互に回す。


「トラベリング! ヴェルフェ選手!」

「なんじゃと!?」

『おおーっと! ヴェルフェ選手ファウルを取られてしまいました! せっかくの先手を取ったのにこれは痛いぞー!』


 ボールを審判から受け取ったアスタリーナが笑う。


「おーっほっほっほ! 初っぱなからこれでは先が思いやられますわね!」

「ぬぅ……」

 

 ぐぬぬとヴェルフェが歯噛みしていると真壁がぱんぱんと手を叩く。


「気持ちを切り替えろ! ディフェンスに回るんだ!」


 真壁の一声によって全員がディフェンスに回る。


「さあ行きますわよ!」


 ドリブルしながら攻めていくアスタリーナの前にリリア、ティアが阻む。


「行かせません!」

「そのボールをよこしな!」


 アスタリーナは床をきゅきゅっと鳴らしながら止まり、左右を見回す。

 パス相手が見つかったのか、左側に目をやる。それを見逃すティアではない。

 すぐさまボールを奪おうとするが、ボールは反対側へ――


しまっ! フェイントか!


 気づいた時にはすでにボールはパス相手、透明人間のビジーに渡った。


「ゴラミー先輩お願いします!」


 浮いているように見えるボールは高く上げられ、ゴーレムの手へと渡る。


「ゴルルルッ」


 そしてそのまま巨大な手ごとダンクシュートを決めた――


『決まった――! 先制点はアスタリーナチームだ! ゴラミー選手ダンクを決めました!』

「やりましたわ!」


 アスタリーナがガッツポーズを決めると同時に得点板に得点が表示された。


 ヴェルフェ∶0−2∶アスタリーナ


「アスタリーナ様ァアアアア――!!」

「ステキすぎますぅううう――――!!」


 ディフェンスからオフェンスに回ったヴェルフェチームはまずリリアにボールが渡され、ティアへパスを。


「次こそ……!」


 ドリブルしながら自陣のバックコートを抜け、敵陣のフロントコートへと踏み出す。

 だがこれもラウラとマーニャのそれぞれ蜘蛛の八本の脚と十数本の腕が行く手を阻む。


「くっ……通れない……!」

「こっちだよっ。パスちょーだい!」

 

 ヴィクトリアの声が聞こえた時にはすでにそのほうへ投げていた。

 ヴィクトリアがボールをつかもうと――


 パシッという音と同時にボールがぴたりと空中で止まった。いや、ビジーの見えない手によって取られたのだ。


「どうぞキャプテン!」

「でかしましたわ!」

 

 放たれたボールはすでにフロントコートへ走り出していたアスタリーナのほうへ向かい、これを受け止めた。

 そしてそのままぐっと足首に力を入れるようにしてジャンプを。

 ゴールポストの下にいるリリア、テンの両名の頭上を越えながら後ろ向きにダンクを――――


ばすんっ。


『き、決まりました――! リバースダンクですっ!』


 着地し、アスタリーナが二度目の得点を表すかのようにVサインをびしっと決めるとたちまち観客席からどっと歓声が上がった。



 ヴェルフェ∶0−4∶アスタリーナ


『アスタリーナ選手のパフォーマンスにより、会場は興奮のるつぼです! あっどうやらファンの何人かが失神してしまったようです!』


「……まずいな。完全に向こうのペースだ」


 ベンチにて真壁がぽつりとこぼす。観客席はアスタリーナチームの応援一色だ。

 ヴェルフェチームを応援するものはごくわずかと言っていい。


どうする……? 交代させるか?


 そんな真壁の心のなかを見透かしたかのようにエリザが声をかけた。


「真壁殿、出場したいのだが」

「エリっち……」

「私がこの流れを断ち切ってみせます!」


 エリザの頼もしい声に真壁が頷く。


「んじゃ頼むぞエリっち」

「承知!」


 ちょうどボールがコート外に出たので真壁が「タイムアウト」と宣言し、審判に選手交代を告げる。


『選手交代です! ヴェルフェ選手と入れ替わりにエリザ選手が出る模様です!』

「頼むぞエリザ」

「おまかせください」


 入れ替わりにコートに入り、ポジションにつく。審判がホイッスルを鳴らし、ゲームが再開された。

 サイドラインにて審判からボールを受け取ったヴィクトリアが構える。

 スローインで放たれたボールはティアが受け止め、ドリブルしながら攻めていく。


「ティア、こっちへ!」


 エリザが走りながらパスの指示を。


「わかった!」


 ボールを勢いよく投げる。


「まずい! エリっちはパスを取るだけで首が取れるんだぞ!」


 真壁がベンチから叫ぶが、もはや後の祭りだ。


「なんの! これまで厳しい特訓に耐えてきた私はそう簡単に首は……!」


 言い終わらないうちに頭部が外れ、コートに直撃する。それと同時にホイッスルが鳴った。


「トラベリング! エリザ選手!」

『ああーっと! エリザ選手早くもファウルを取られてしまいました! 頭部がコートに直撃するとファウルになるようです!』

「くっ……不覚!」


 コート上でぎりっと歯噛みする。胴体はボールを受け止めたままだ。


「やっぱりダメか……」


 真壁がうなだれるとふたたびアスタリーナの甲高い笑い声が響く。


「おーっほっほっほ! なかなか楽しい曲芸でしたわ!」


 その後、勢いに乗ったアスタリーナチームは快進撃を続け、たちまち得点を獲得していった。

 ピーッとホイッスルが鳴り、審判が第一クォーターの終了を告げる。


『アスタリーナチーム21点! ヴェルフェチームいまだに0点です! 三分後に第二クォーターの開始です!』


 ヴェルフェチームの各選手がベンチに戻り、クリスからタオルを受け取って汗を拭く。

 

「おつかれ! 心配するな。次のクォーターで点を取れば」

「むりだよ……ぜんぜん練習とちがうよ……」


 ヴィクトリアが思わず弱音を吐いたのをきっかけに他の選手も愚痴をこぼす。


「まったくだよ。だいいちむこうのチームがいきなりメンバー変更するから……」


 ティアが水をひと息にあおりながら言う。


まずいな……完全に士気をそがれちまってる。


 真壁がアスタリーナチームのほうを見ると対照的に楽しそうに談話しているところだ。

 こちらには一瞥(いちべつ)もくれない。


「俺たちなんか眼中にないってことか……」


 ぽつりとこぼすと、ぽんと背中を叩かれた。テンだ。


「ワタシにまかせるネ」

「大丈夫なのか? テン」


 答える代わりにサムズアップを。


「わかった。みんな、次のクォーターではテンにパスを回してくれ」


 全員がこくりと頷く。その時ホイッスルが鳴った。インターバルの終了である。


「みんな、ワタシにまかせるネ! ここで一気に点を取り返すヨ!」


 テン含め休憩を終えたチームがコートへと戻る。

 第二クォーター、もとい第二ラウンドの火蓋は切って落とされた――――


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