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43話 バスケがしたいです……!


 場所を生徒会室へ移し、パンデモニウム女学園分校の生徒会長であるアスタリーナ含め一同はテーブルに座していた。

 クリスが全員に茶を注いだのを見計らってから真壁がおほんと空咳をひとつ。


「えー、今回集まっていただいたのは来たる『生徒会対抗祭』にて行なう競技の発表を……」

「もったいぶらずにさっさとおっしゃってちょうだい」


 アスタリーナがソーサーを手にして茶をすする。

 生徒会一行からもそうだそうだとはやし立てる声。


「……わかったよ。せっかく雰囲気を盛り上げようとしたのに」


 ぶつぶつとこぼす。


「お互い未知のルールで、かつ公平にできるという条件で俺が提案する競技は――」


 全員がごくりと固唾をのむ。


「バスケだ!」


 おおっとどよめきが起こる。


「ばすけ? 聞いたこともないぞ!」

「ボクも!」

「ワタシもだヨ!」

「そ、それはどんな競技なのでしょうか?」


 全員が興味津々で見つめたので、気をよくした真壁は黒板にバスケットコートの図を描き、そのうえでルールを簡単に説明する。


「――つまり、ボールを奪い合って最終的にここのゴールポストに入れると得点になるってわけだ」


 チョークでゴールポストをコツコツ叩く。


「どうだ? 面白そうだろ? こう見えても元いた世界ではバスケ部にいたんだ」


 だが、一行の反応は予想に反して困惑気味だ。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。ボールを持ったまま三歩以上歩いてはいかんのか? なぜなんじゃ!?」

「ゴールポストの下のエリアにも制限時間あるなんてやりにくいヨ!」

「ええと、ルールが複雑すぎて……」

「これはさすがのボクも難題だよ……」

「まあまあ実際やってみればわかるって!」

 

 真壁が説得しようとしても梨の(つぶて)だ。

 そこへアスタリーナがいきなりがたりと立つ。


「あたくし、興味を持ちましたわ!」


 目を輝かせながら真壁を見つめる。そして真壁の手をぎゅっと握りながらずいっと前へ。


「お話を聞いててとても楽しそうに思いましたわ。幸い、わが校の生徒会には運動神経抜群な生徒がおりますし」


 ぐいっと引っ張ったので真壁の手が豊満な胸に当たる。


「お、おぉふ……興味を持っていただけたようでなによりです……」


 だらしなく鼻の下を伸ばす真壁に生徒会一行がむっと顔をしかめた。特にヴィクトリアはぷくーっと頬を膨らませている。

 

「ですが、本校の皆さまは乗り気ではないようですね……困りましたわ」


 片手を頬に当てながらふぅと溜息をひとつ。


「考えてみればあたくしがいきなり押しかけ、無理やり提案しましたし……不本意ですが、本校の生徒会の皆さまのレベルに合わせた競技に……」


 そこへヴェルフェががたりと立つ。


「さっきから黙って聞いておれば! その言い草じゃとまるでわしらが劣っているようではないか!」


 びしっと指さしながらぎゃあぎゃあと文句を言うヴェルフェを生徒会一行がなんとかなだめようと。


「まあ! あたくしそんなつもりで言ったわけではないのに……()()()()のあなたたちに少しでもチャンスを与えようと」


 今度はヴェルフェだけでなく全員が怒気を露わにした。そこへ真壁が仲裁するように間に立つ。


「と、とにかくバスケで勝負するってことでいいすかね?」


 真壁が会長に伺うと「当然じゃ!」と返ってきた。まさに売り言葉に買い言葉である。


「そうこなくてはですわ。そうそう!」


 アスタリーナが何かを思い出したように手をぱんっと叩く。


「ただ普通に競技をするだけではありきたりですし、ここはひとつ賭けをしませんこと?」

「賭け? それは構わんが、お主は何を賭けるんじゃ?」


 ヴェルフェの問いを無視してアスタリーナは真壁のほうを見る。


「真壁さん、あなたは元の世界に戻るために魔鉱石を集めていらっしゃるそうですね?」

「あ、ああ……なかなか見つからなくて困ってるんだ」

「でしょうね。少しお待ちを」


 アスタリーナがいきなりぱんぱんと手を叩くと、がらりと扉が開いた。そこから姿を現したのは使用人のひとりだ。

 手には宝箱に似た小箱を手にしている。

 つかつかとアスタリーナが小箱へ近づき、蓋を開けた。

 ビロードの内張りに収められたそこには――


「ま、魔鉱石だ!」

「ええ、先日我が校の近くに落ちていましたの」


 淡く輝くそれを手に取り、一行に見せつけるようにする。

 

「素敵でしょう? ネックレスにしましたの」


 チェーンを首の後ろに回して装着を。石は彼女の豊満な胸の上で輝きを放つ。


「あなたたちが勝ったらこの石は差し上げましょう。もし、あたくしたちが勝った場合はこの石はあたくしのものですわ」

「むぅ……他に選択肢はないな。よしその賭け、受けて立とう!」


 そこへテンがぱっと手を挙げた。


「問題があるヨ。『ばすけ』をやる場所はどうするネ?」

「本校の体育館を使おう。むろんバスケが出来るよう改装の手配はわしのほうで進めておく」

「改造だったらボクにまかせて!」


 どんと胸を叩くヴィクトリアにヴェルフェが「()()じゃなく()()な」と突っ込む。

 そこへ今度はリリアが挙手を。


「それともうひとつあります。顧問の先生にも許可を取らないと……」

「シルヴィー先生か……うむ、どうしたものか……あの先生はものぐさじゃしのぅ……」

「ですね……それでなくても予算が下りるかどうか……」

「そりゃないだろ!? せっかく魔鉱石を手に入れるチャンスなんだぞ!」

「あらあら、あたくしはどちらでも構いませんわよ?

もっともその場合、この石はあたくしのものになりますが」


 アスタリーナがおほほほと笑い、ヴェルフェがうぅむと唸るとコンコンとノックの音が響く。


「入るでー」

 

 噂をすればなんとやら、シルヴィーが入ってきた。


「シルヴィー先生……!!」


 真壁がシルヴィーのもとへ駆け寄る。


「な、なんやの……?」


 真壁はそのままがくりと膝を折った。そして涙目で訴えるように。


「バスケが、したいです……」


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