41話 ヴィクトリア・フランケンシュタインの魔鉱石考察
「――それじゃ魔鉱石は爆発してなくなっちゃったってこと?」
生徒会室にてブルジア王国でのあらましを聞いたヴィクトリアが目を丸くする。
「ああ、モンスターを眠らせたらもんどり打った衝撃で魔鉱石が飛び出しちまったんだ」
「はいっ。そのまま王様が乗っていた御者台が押しつぶしました!」
真壁とリリアから話を聞いたヴィクトリアはふぅむと顎に指を当てながら。
「魔鉱石が衝撃を加えると爆発するという性質を持っているのは聞いたことないなぁ……これは新たな法則の発見だねっ」
「これまでわかった法則はたしか、ひとつめが『魔鉱石は磁石のように引かれ合う』じゃな?」
「ふたつめが『魔鉱石は魔鉱石に近づけると光る』だヨ」
「そして最後が『魔鉱石は衝撃を与えると爆発する』ですね!」
そこに真壁が「ん?」と首を傾げる。
「でもそうだとすると、ライカン倒した時は爆発しなかったぞ?」
以前、極寒のノワール地方にて魔鉱石を身に宿したライカンを氷柱で貫いて倒したのだ。
「たぶんだけどうまい具合に魔鉱石を避けたか、爆発する程の威力じゃなかったんだと思うよ」
「マジか……ヘタすりゃ爆発してたかもしれないってわけか」
ふぅむとヴェルフェが指を顎に当てて考える。
「リリア、これまでの地方紙で爆発事件の記事はあったかの?」
リリアが手帳を取り出してぱらぱらとページをめくる。
「ええと……そのような事件の記事はないみたいですね」
「そうか……各地に散らばった魔鉱石が落下の衝撃で爆発した事件がないかと思っとったのじゃが……」
「魔鉱石は飛来したあとは意外とゆっくりと落ちるんだよ。質量にもよるけど、空気抵抗の関係によって――」
さらに解説を続けようとするヴィクトリアにヴェルフェがもうよいと制止を。
ぷくーっと頬を膨らませる副会長を無視して続ける。
「魔鉱石が爆発したのは今回の事件のみと考えていいじゃろうな。まあ念のため、爆発に関する記事にも目は配るが」
「でもすべての魔鉱石が集まっても100%にならないヨ」
「ですね……そういえば真壁さんの魔鉱石は現在どのくらいあるのでしょうか?」
リリアが壁際に立つクリスに訊く。魔鉱石はすべてクリスの体内に保管されているのだ。
「ハイ ゲンザイノマコウセキハ 32%デス」
「まだそんなにしか集まってないのか……」
真壁ががっくりとうなだれながら。
ヴェルフェがブルジア王国のお披露目会の記事が書かれた地方紙に目をやる。写真には台座に保管された魔鉱石が。
「ヴィクトリア、この魔鉱石の大きさは10%くらいじゃったな?」
写真に写った魔鉱石を指さす。
「現物を見てないから何とも言えないけど、この写真で見る限りそのくらいだと思うよっ」
「うむ……」
ふたたび指を顎に当てながら考える。
「そうなると、新たに魔鉱石を探すしかないわけじゃが……これと同じ大きさの魔鉱石が見つかる確率はどのくらいなのじゃ?」
「えっとね、たぶん0.3%前後だと思うよ」
「0.3%!? それじゃ見つからないんじゃないか!?」
「魔鉱石自体かなりレアな存在なうえに、この大きさはなかなかないんだよ」
そこへテンが挙手を。
「気になったけド、ヴィクトリアの先祖はどうやって魔鉱石を集めたネ?」
「それこそボクの先祖がむかしむかーしから気の遠くなるような歳月をかけて集めたんだよ。前にも言ったと思うけど、少なくとも三百年はかかってるよ」
三百年という途方もない歳月を聞き、生徒会室を重苦しい空気が漂う。
そこへクリスがヴィクトリアの隣に立つ。
「ゴシュジンサマ スコシヨロシイデショウカ?」
「なに? どーしたのクリス」
「ゴシュジンサマノ ゴカゾクニ レンラクヲトッテハ イカガデショウカ」
クリスの言葉に全員が「それだ!」と声をそろえる。
「確かに、新たな魔鉱石を探す手がかりがつかめない以上、ヴィクトリアのご家族に助言を聞いたほうがいいかもしれん」
「あ、それじゃボク手紙書いてくるねっ!」
その日の会議はお開きとなり、各自部屋へと戻った。
◇◆◇
研究室兼自室にて風呂からあがったヴィクトリアは書き物机に向かう。
椅子に腰掛け、引き出しから便箋と封筒を取り出す。
羽根ペンにインクをひたして『元気? ボクは毎日元気でやってるよ!』から始め、次に学園の生活や手紙を出した経緯、身体を大事にしてねと締めくくる。
ヴィクトリア・フランケンシュタインと署名を入れ、折り畳んで封筒にしまう。
「うん、これでよし」
あとは学園のポストに入れて返事を待つだけだ。
ペンをしまい、ふわあっとあくびをひとつ。そしてそのままベッドへと。
サイドテーブルのランプを消して毛布のなかに潜り込む。
だが、なかなか寝付けない。原因はわかっている。
クリスが提案してくれたけど、ホントはわかってたんだ……。
なぜかそれを口にできず、代わりにクリスが提案したという形になったわけだが……。
わだかまりはそれだけではない。
イタルが帰ってきた時、ほっとしたけど、魔鉱石が無くなったって聞いたとき――――
「……なんでボク、ホッとしちゃったんだろ?」
魔鉱石が一部でもなくなったら、イタルは元の世界に帰れないのに……。
目を閉じて考えるが、答えは得られないままだ。
ボク、変なのかな……?
膝を抱えるようにしてしばらく考えていると、そのうち眠りについた――。




