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204.クリスマスのお誘い

 翔太は清掃員のサブ任務を終え、アーテルのオフィスにてパソコンで報告書を打っていた。

 もう数か月経ったったけど、報告書をパソコンに打ち込むのは手慣れたものだ。


「おー? 坊主頑張ってんなぁ」

「あ、ブークリエさん」


 ブークリエさんは片手にコーヒーが入っているであろう白い紙コップを持ちながら俺の方へとやって来る。

 おそらく任務帰りの報告書を打ちに来たんだろうな。


「今日はもう上がりか?」

「清掃員のサブ任務を終えたので、後は今日の夜にシルバーさんと一緒に戦闘員のメイン任務が入ってます」

「おー、頑張れー」


 ブークリエさんが、コーヒーを飲んで俺の報告書を画面で見る。


「おお、坊主英語の報告書できるようになったのな」

「まだまだですよ、もう少しフランクな英語の言い回しとか勉強したいです」

「無理しすぎんなよー? 坊主は真面目だからよぉ、心配しちまうんだわ俺」

「ありがとうございます、ブークリエさん」

「そういえば、後もう少しでクリスマスだなぁ」

「? はい、そうですよね」


 ブークリエさんは周囲をちらっと確認すると、俺に耳打ちしてきた。


「なあなあ、坊主はシルバーと過ごすのか?」

「ぶっっっっっ!!」


 翔太は全力で画面に唾を飛ばしてしまった。

 汚ねえなぁ、とブークリエさんは呆れられ、俺はブークリエさんの方に振り替える。


「ぶ、ブークリエさん!? きゅ、きゅきゅきゅ、急になんですか!?」

「お? どうした? ヘボ」

「ま、マキシムさん!? いつからそこに!?」

「あからまさに動揺すんなぁお前、もしかしてぇ?」

「なんだ? まーさーかぁ?」


 マキシムさんとブークリエさんはタッグを組んで悪だくみしているのが手に取るようにわかる。

 俺は慌てて、二人に誤魔化すことにした。


「え、えっと、えっとえっとえっと、と、ととと、とにかく!! ブークリエさんも休憩中なんですし、邪魔しちゃ悪いんで俺仕事の続きしますね!!」

「おーおー、そういうことにしといちゃる」

「おー、そうだなぁ。当日の後、たっぷり聞いてやるよ」


 こ、この二人……!! タッグを組むとこんなに悪い奴だったなんて……!!

 と、とりあえずリアナさんに、予定が空いているかどうか、聞いておこう。

 翔太は気持ちを切り替えて、パソコンに報告書を早めに終わらせることを決意した。



 ◇ ◇ ◇



「シルバーさん!! そっち行きました!!」

「わかったわ」


 リアナさんは銃を発砲し、モネーレの瞳に撃ち抜く。


『ギュルルァッ』


 モネーレは黒い血だまりを作って倒される。

 後は清掃員たちがモネーレの残滓を綺麗にしてくれるだろう。

 ……それは、いいんだけど。

 リアナさんの黒い手袋の間から黒い髪がこぼれた。

 小型モネーレに銃で止めを刺したリアナさんはいつも通りクールだった。

 俺は、じっとクリフさんの通信を無視してリアナさんをじっと見つめてしまっていた。


「どうしたの? 青年」

「あ、い、いえ……」

『聞いてるかい? シュネ君』

「あ、す、すみません。撤収します」


 俺とリアナさんは車に乗り、撤収作業に追われる。

 車の中に入り、俺はリアナさんになんてクリスマスを一緒に過ごそうと、どういう言い回しで誘おうかで頭がいっぱいだった。

 その最中、リアナさんが隣の席から声をかけられた。


「青年」

「ふぁ、ふぁい!?」

「どうしたの? 緊張してるように見えるのだけど」

「あ、い、いえ、その……」


 しどろもどろになる俺に、リアナさんは心配げに俺のことをじっと見る。

 ……ど、どうしよう、運転している人は他のアーテルの人なんだったよな。


「……え、えっと、その、ちょっとシルバーさんに聞きたいことがあって」

「私に?」


 俺はリアナさんの目が合わせられなくて、少し頬が熱くなるのを感じる。

 頭をくしゃっと握る俺は、恐る恐る勇気を出して聞いた。


「その……クリスマス、予定、空いてますか?」

「今の所、空いているけど」

「じゃ、じゃあ……一緒に、過ごしませんか? クリスマス」

「……構わないけど」

「え!? ほ、本当ですか!?」


 俺は嬉しくて、リアナさんの方に勢い良く振り返る。

 リアナさんは少し面食らった顔をして、……ええ、と小さく言う。


「じゃ、じゃあシルバーさんの好きな物、たくさん用意しておきますね!!」

「……青年、流石に近いわ」

「え!? あ、す、すみません!!」


 俺は慌てて、車のドアまで下がるとリアナさんは無表情、というか、少し困った顔をしているのが見て取れた。

 ……リアナさんも、こんな表情をするんだ。


「……じっと女性の顔を見るのは、どうかと思うわ」

「あ、す、すみません!!」

「謝り過ぎよ、気になっただけだもの。そこまで貴方が謝る必要はないわ」

「……え、えっと、その、楽しみです。リアナさんと、一緒にクリスマス過ごせるの」

「……そう」


 リアナさんは小さく囁いた。 

 俺は浮かれる中、運転席の同じ同僚の人に申し訳なくなりながらも、部屋に戻って就寝した。

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