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勇者パーティーにいるギャンブラーは何かを企んでいる  作者: レギュラー
第1章 大喰いは〇〇を食べられない
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第7話 這い寄る敗北


「……発動、賭博開帳(ギャンブル・オン)」


即座に地面からいつものテーブルが現れ、

円形の結界が俺とモーグを包んでいく。


「なんだ~これ」


状況を理解していないモーグの前で

俺は黒の法衣を脱ぎ、姿を現す。


「ようこそ、モーグさん」

「なんだ~お前~」

「俺はデジ、ギャンブラーだ」

「魔王様が言ってた奴か~」

「聞いているなら話が早い、

 モーグさん俺とギャンブルをしよう」

「え~オラはただ食べたいだけ~

 ギャンブルも食べ物ならいいど~」


う~む、話がイマイチ通じていない気がする。

というか、この間のグルガ&リゼル戦で俺のスキルレベルも上がって、

結界を壊される可能性は低い。


今後、ギャンブルの承諾はいらないな。

さっさとジャジ子を召喚してしまおう。


愚図るモーグを横目に俺は指を鳴らした。


そして、現れる審判者ジャジ子。

なんだか、少し笑っている気がする。


「パラッパ~、現れました審判者!

 お、今回は十六破将と直接やり合うんですね!」


「いいから、コイツとやるギャンブルを出してくれ」


「なんだか余裕そうですね、デジさん」


コイツ。

俺の考えが読めるのか?


確かに俺は今、目の前にいる頭悪そうなモーグを若干舐めている。

正直、頭脳戦で負ける要素はなさそうに思える。

だが、ギャンブルは誰にでも平等だ。

それが俺にとってのギャンブルでもある。

だからこそ、舐めてかかってはいけない。


「閃きました!今回のギャンブルは『食(しょく)すデイパック』」


ん?


「簡単に言うと

 相手のデイパックに入っているものを食べるギャンブルです!

 詳細はこちら!」


・基本ルール:対戦相手が所持しているデイパック、その中から無造作に取り出したアイテムを食べる


・先攻・後攻を決めて、交互に相手のアイテムを食べる


・相手が食べ終えてから

 制限時間3分以内にアイテムを食べられなかった時点で負けとなる

 ただし、容器に入れなければ保管できないものは中身だけを食べればよい。容器は対象外とする。


・対戦相手のデイパックが空になるまで食べ切った場合、食べた側の勝利


・一度食べたものを口から吐き出すとその時点で負けとなる


・暴力行為禁止、また死亡した際はその時点で負けとなる


・勝者特典:勝者は任意の相手へ強力なバフ(強化・回復・恩恵)を与えることが出来る

 その効果量は賭けたものに比例する


「おお~、コイツのデイパックの中身を食えるのか~

 やろうやろう、ギャンブルって最高だど~」


そりゃ、お前にとっては最高だろ。

……このギャンブル、モーグに有利すぎないか?


「おいジャジ子、コイツが斧とか持ってたら絶対に食えないぞ俺」

「はいはい、そう来ると思いました。

 そこは大丈夫!こちらに超高性能ミキサーを用意しました!」


とっても悪い笑顔でジャジ子がテーブルへミキサーを置いていく。

見た目は普通だが、

容器の中で幾重にも連なった鋭利な刃が

血を求めるように鈍い光を放っている。


「このミキサーは結界内に限り神器以外のものを全て砕けます!

 粉々にすれば物理的には食べることが可能となるはずです」

「……そりゃそうだろうけど」


俺が不満を零すと、過去見たこともないほど冷徹な目で

ジャジ子が告げてくる。


「デジ、貴方だけは私のギャンブルを否定してはならない」


……その通りだ。

この結界を作り、ギャンブルを挑んだのは俺自身。

大体、ギャンブル=頭脳戦ではない、

これは俺が一番理解している。

賭けるものさえあれば、それは全てギャンブルなのだ。


「さあ、では何を賭けましょうか!

 モーグさんは何を賭けますか?」


「食べればいいんだろ~、ならオラは絶対負けないから

 何でも賭けるど~、あ、そうだ。オラの命を賭けるど~」


「おお、強気ですね!デジさんは何を賭けましょう?」


「……俺も命を賭ける」


最悪だ。

コイツ、馬鹿だからこそタチが悪い。

これでこちらだけが命を賭けることによる勝ち方を全パターン潰された。


――今回、俺は勝てない。


それでも命を賭けないといけない理由は数個あるが、

一番大きいのは、「死亡した際は負けとなる」というルールが提示されている点だ。


これは言い換えれば、

ギャンブル中に死ぬ可能性があるということを指し示している。

つまり、勝利後に致命傷を負っていることもあるわけだ。


その際、軽いものを賭けていた場合、

俺自身の回復がその致命傷に届かない。


それを踏まえると今回のギャンブルは

半ば強制的に命を賭けないといけない状態に引き込まれている。


――もう一度言う、俺は勝てない。


俺は決してギャンブルの天才ではない。

ただ、ギャンブルが好きなだけ。


実際、この異世界に来てから俺は何度かギャンブルで負けている。

それでも、生死の掛かったものは全て勝利してきた。


だが、この「食すデイパック」勝ち目が一切見えない。


自分のデイパックの中身は勿論、把握している。

そしてその中にモーグが食べられないものは恐らくない。

逆にモーグが極端な話、斧を10本所持していれば、

胃の容量的に食べられなくなるだろう。

それは根性や気合で何とかなるものではない。


「では、早速、先攻後攻を決めてください!」

「オラは先攻がいいぞ~早く食べたい」

「……じゃあ、俺は後攻で」


クソッ。

このルールで先攻が得することなんて全くない。


そんなことも理解できない奴に、

俺は今負けようとしている。


考えろ……考えろ。


表情にも声にも出さない。

だが、額を流れる冷たい汗が焦りを誘発させてくる。

 

結界外で戦っているシャインはきっとこう思っている。


今回、デジはどうやって勝つんだろう、と。


俺はそれに答えなければならない。


……ダメだ。

 

俺は負ける。 

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