第15話 笑う魔王
デジが大喰いのモーグとギャンブルを行う数分前。
結界から遥か遠く、闇を纏う魔王城。
その玉座には魔王が腰かけていた。
黒いマントを羽織り、悠々と足を組んでいる。
褐色の肌に顔立ちは美形そのものだ。
見た目こそ20代青年。
しかし、その身長は2メートルを超え、
醸し出す空気は禍々しさに満ちていた。
そして、魔王の前には
かつてデジとのギャンブルに敗れたリゼルの姿があった。
膝と片手を地面につき、顔は俯いたままだ。
デジに漆黒の法衣を奪われ、緑のボロ布が露出している。
以前は艶やかな光を放っていた長髪も乱れ放題で、
整っている顔にも汚れが目立つ。
「魔王様、申し訳ございません。
獣王グルガ様は殺害され、私もデジとやらのギャンブルに敗れました」
魔王はデジを映す映像を見ながら答えていく。
「よい、お前とデジのギャンブル最高だったぞ」
「……はぁ」
「はっはっは!デジから言わせるとリゼル、お前不合格らしいな」
唇を噛み締めるリゼル。
それを無視して魔王は笑いを止めようともしない。
「それよりもだリゼル。今からモーグとデジがギャンブルを始めるぞ」
「大喰いのモーグ様ですか!」
「魔族一の大喰いであり、
上司にしたくない十六破将、150年連続ダントツの1位を飾ったあのモーグだ」
それは関係ないのではとリゼルは思ったが、
流石に魔王へ突っ込むことが出来なかった。
映像の中ではデジとモーグと審判者が互いにルールを確認している。
「おお、食すデイパック!これデジ勝ち目ないぞ」
「見たかリゼル!デジのやつ人の頭を涙目で食べてるぞ!」
「見ておりました」
「おいおい、毒を引き当てたらしいぞ!これデジはどうすると思う?」
「……飲むでしょうね」
「ははははは!!デジの奴、自分で腹を裂いたぞ!最高だ!」
「……彼ならやるでしょう」
「あのパンツ、昨日ユカから戦利品として奪ったものだな!
余には見えていたぞ、アレには魔力が込められている!」
「そのようで……拘束魔法が発動していますが、モーグ様相手では」
「おお、耐えておる。ユカも中々に面白いではないか!
デジは……はっはっは!まだ必死に生きようとしている!」
そして、ユカとデジの勝利で食すデイパックは決着を迎えた。
魔王は再び笑い始める。
「くくっ……はーはっはっは!!」
玉座の間に笑い声が響いていく。
リゼルは黙って魔王を見つめている。
(モーグ様が敗れたというのにこの方は……)
魔王が涙を拭い、一言だけ呟いた。
「面白いな」
十六破将の一角。
大喰いのモーグ。
勇者パーティーの力では勝てないと見込んで送り出したその力は
食べることに特化していた。
「勇者は苦戦しながらも戦った」
その中でデジがまたギャンブルを仕掛けるのは容易に想像できた。
しかし実際に行われたのは
デジにとっては最悪の、モーグにとっては最高のギャンブル。
食すデイパック。
「ギャンブラーは最後まで足掻いて自らの腹を裂いた」
映像ではデジが死んだモーグへ向けて一言添えていた。
「ほう、合格なのかモーグは」
魔王が横目でリゼルへ視線を向けると
再び唇を噛むことしかできないリゼル。
「このギャンブルどう思う?リゼル」
沈黙が数秒続き、リゼルがゆっくりと口を開く。
「デジが勝つと思っていました」
魔王が眉を大袈裟に上げる。
「ほう?」
「方法は分かりませんが、何かしらの手段が隠されているものかと」
顔を下へ向けこの後の魔王の言葉をリゼルは覚悟していた。
「なかったな、いや実際にはあったがデジはないと思っていた。
……隠していたのはユカの方か」
リゼルはもう片方の手も地面につけて、
強く拳を握りしめた。
「……私の買い被りでした」
「ふふ、そうではない。奴が必死にもがいた姿こそが
ギャンブルの本質ではないかと余は思うのだ」
「そうでしょうか?」
「……わからん。だが余は楽しめた。それがすべてだ」
映像の中にいるデジを熱く見つめる魔王。
「デジ、ギャンブルは面白いな。
……さあ次は誰を向かわせるか」
第1章、完結しました。
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