↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の花嫁 無能と蔑まれたわたしのスキルは、魔界ではチート技でした?! 温厚な魔王様に溺愛されるのは想定外です……‼︎  作者: あきはる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/29

晴れる予言


魔界にやってきてから数日。レミリアは、この魔王城での生活に拍子抜けしていた。


「なんだか、思ったより平和ね……」


最初こそ、命をなげうつ思いで魔界へやってきた。しかし、特記すべき異変があったのは、最初の晩だけだった。


ルーナと城の中を探検した次の日からは、レミリアは城の中で自由に過ごしている。人間界でそうだったように、決まった時間に起きて、ルーナに伴われて身支度を整えたあとに食事を取る。その後は、基本的に自由時間だ。いつしかルーナも、レミリアのことを「お嬢様」と呼ぶようになっていた。


ルーナに案内された後も、レミリアは数日かけて自分で城内を探検してみた。

中は客室らしき部屋や空き部屋ばかりで、人間界の王城とよく似た作りになっている。いくつか施錠されて入れない場所はあるものの、それ以外に特段目新しいものはない。


一度、中庭を散策しているときに、面白いものを見つけた。人間界では見たこともないような植物が茂る、菜園である。魔界の空の色を映しているのか、葉や茎はどれも濃い紫色で、蕾の先には黄色や白の花を咲かせている。根本の方には、果実と思われるものを実らせて、茎をしならせているものもあった。


夕食時にルーナへ聞いてみたところ、どうやらそれらは食用の植物らしい。


「ああ、あれは料理長が庭師に場所を借りて、栽培しているものなのですよ。多くはお嬢様のお食事に使われる食材です」


「そうなんですか」


確かに、あそこに実っていた果実や植物は、どれもみずみずしくて美味しそうに見えた。でも、あそこに植えられているものは、人間界で食べていた食材とは見た目が異なっている。調理されると形まではわからないので、気が付かなかったのだろうか。


「魔界には人間界の植物が自生しないため、料理長が似たものを取り揃えているのです。しかし、それらはどれも希少なものですから、ああして自家栽培しているのですよ」


「どうりで美味しいと思いました」


「ふふ。もしお気に召したら、熟した野菜や果物は、お嬢様が自由にお持ちになっても構いませんよ。この城のものは、すべてお嬢様の自由にされてください」


「本当ですか。ありがとうございます」


レミリアは、それを聞いて心を躍らせた。


そんなわけで、それ以降レミリアは事あるごとに菜園へ通って、野菜たちの成長を観察するのが日課になっていた。――そんなある日のことである。


***


「お嬢様。今日は晴れるという〝予言〟が出ています。よって、残念ながら今日は外へ出ることは許されません」


朝、いつものようにレミリアの部屋へやってきたルーナが、真剣な口調で告げた。

聞き慣れない言葉に、レミリアは首をかしげる。


「晴れる〝予言〟?」


「はい。この魔界には予言者がおり、魔界の天気を予言するのです。我々魔族は陽の光のもとでは生きられません。よって、あらかじめ天気を予言することで、晴れる日に外へ出ることを避けられるのですよ」


「そんなものがあるなんて知らなかったわ。でも、本当に当たるのかしら。なんだか晴れるようには見えないけど」


レミリアは、部屋の窓から外の様子を眺めた。相変わらず、外は分厚い曇天の空模様で、少しも日がさす気配がない。


「予言者たちの天気予言は、必ず的中します。これまでもずっとそうでしたから。今日は正午過ぎから、晴れ間が覗くそうです。そういった日には朝からカーテンと窓を閉めて、夜になるまで室内で過ごすのです」


そう言いながら、ルーナは窓際へ進み出て、室内にある三つすべての窓のカーテンを閉め切った。


「お嬢様は人間ですから、おそらく外に出ても障りはないと思われます。しかし、そうすると私たちがお嬢様をお守りすることができません。城の敷地内とはいえ、危険が無いとも限りませんから、今日はお部屋でお過ごしください」


「わかったわ。大人しくしています」


晴れた日の魔界の様子に興味を持っていたレミリアであったが、ルーナに釘を刺されてしまった。


着替えを済ませた後、朝食をとりに廊下へ出る。


すると、城内のあちこちで、使用人たちが窓という窓を閉め切っているのが目に入った。城中にランプの明かりが灯されて、さながら夜のようだと錯覚してしまう。


朝食を摂り終えると、レミリアは自室にぽつんと一人取り残された。


「――魔界の晴れ間って、どんなものなのかしら」


しばらくすると、レミリアは次第に好奇心に苛まれ始める。


ルーナに言いつけられた手前、こうして室内にこもってはいるが、だんだんと外を見てみたいと思う自分を抑えられなくなってきた。


魔界に来てから、今日が初めての晴れの日になるという。ここへ来てからずっと、空には暗雲が立ち込めていて薄暗かった。それが晴れると、どんな風になるのか。


この部屋もカーテンが閉め切られている。けれど、窓の方を凝視してよくよく観察してみると、カーテンの隙間がにわかに明るくなっているような気がしてきた。


「この部屋には私一人しかいないし、私は日光に触れても障りは無いと言っていたわ。少しくらい覗いてみても大丈夫よ、きっと」


早くも好奇心に負けたレミリアは、遂にカーテンへ手をかけて、それをめくった。


「こ、これは……」


――窓の外には、驚きの光景が広がっていた。


窓辺に差し込む、まばゆい陽光。いつもは灰色にくぐもっているはずの壁や柱が、日差しを受けて白っぽく輝いている。


「ま、眩しい……」


空には魔界特有の紫色の雲が、風に乗って流れてゆく。日差しは差しているものの、上空にはまだ雲が多い。これは、その合間から覗いた束の間の晴れ間だった。


それでも、もう何日も日差しを見ていなかったレミリアにとっては、思わず目がくらんでしまうほどのものだった。


――しばらくして目が日差しに慣れてくると、ここでレミリアはあることに気がつく。


(……あれ? 地面に生えている草木が、あまり元気が無いような)


レミリアの部屋の窓の外には、南の回廊へと続く中庭が広がっていた。一面に芝が敷かれて、ところどころに背丈ほどの植木が植えられている。

気分転換によく訪れていたので、レミリアは庭の様子を覚えていた。


昨日までは青々と茂っていたはずの芝や植木が、どうしてだか今は葉がしおれて、ヨレヨレと枝から垂れ下がっている。


(……もしかして、魔界の植物は、日光に弱いのかしら)


人間界であれば、植物が日光を好むことは常識だ。

しかしここは魔界である。大半が曇り空であるこの地に自生する植物たちであれば、逆に日光に弱いこともあり得るのではないか。


だとすれば、レミリアには気がかりなことがあった。


(北の回廊の横にあった菜園の野菜たちは、大丈夫かしら……)


この様子では、おそらく菜園の野菜たちも被害を受けている可能性がある。毎日その成長を見守るのが日課になっていたレミリアは、あそこにもうすぐ収穫時を迎える野菜がたくさん実っているのを知っていた。


「急いで様子を見に行かなくちゃ」


レミリアはいても立ってもいられずに、部屋を飛び出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。