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魔王の花嫁 無能と蔑まれたわたしのスキルは、魔界ではチート技でした?! 温厚な魔王様に溺愛されるのは想定外です……‼︎  作者: あきはる


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誘拐事件③


そんなことを考えている内に、あたりはいつの間にか夕暮れ時になってしまう。

不意に部屋の扉の施錠が解かれる音がして、何者かが部屋の中に入ってきた。


「お妃様、時間です。儀式の間まで一緒にお越しください」


レミリアはすくみあがった。


戸口から姿を現したのは、さきほどルシウスとともにいた使用人のエーギルだった。彼は丁寧な口調とは裏腹に、屈強な体躯をした大男である。エーギルは部屋の中にいるレミリアの手を強引に掴むと、そのまま引きずって行こうとした。


「ちょ、ちょっと、離してください!」


「往生際が悪いですね。おとなしくしてください」


レミリアの必死の抵抗も虚しく、エーギルは彼女を軽々と担いでしまった。

レミリアはその場でジタバタと抵抗する。


「は、離してください!」


思わず叫ぶと、レミリアは咄嗟にUVのスキルを発動させて、その顔を殴りつけた。


『バシンッ!』


「ぐわっ! 何をする」


男は殴られたあたりを手で覆いながら、よろめいた。

そのすきに、レミリアは肩から転げ落ちて、部屋の隅まで後退する。


「貴様……俺の顔に一体何をした?」


振り返ると、エーギルは何やらしきりに両手で顔を覆ってうめき声をあげていた。苛立たしげにのたうち回りながら、再びレミリアに襲い掛かろうとする。


「や、やめてください!」


再びつかまってしまうのを恐れたレミリアは、再度UVを発動させて手をじたばたさせる。

すると、レミリアの手が触れた箇所から「ジュッ」という音を立てて、まるで端から焼け焦げてしまっているかのように、どんどんと傷が増えていく。


「どうして……いったいどうなってるんだ。や、やめろ――っ」


次第に男の勢いは弱まり、叫び声を上げながら後退る。

しかし傷口はどんどんと体中に広がっていって、ついには全身が灰になって消滅してしまった。


後には、レミリアだけが取り残される。


「い、いったい何が、どうなっているの……?」


灰になった残骸を呆然と見下ろしながら、レミリアはその場にへたり込んだ。


「まさかこれが……UVのスキルの、真の使い方だとでもいうの。爺やが言っていたのは、このことなのかしら」


レミリアは恐々と自分の両手を見下ろした。

この間、ハチの魔物をはたき落としてしまった時と同じだ。レミリアのUVのスキルは、まるで太陽の力を身にまとっているかのように、相手を消滅させてしまう。このスキルはどうやら、小物の魔物だけでなく、魔族に対しても有効であるらしい。


なんとか敵を倒すことが出来たレミリアであったが、未だに自分が行ったことが信じられないでいた。


しばらく呆然と座り込んでいたレミリアだったが、ここであることに気がつく。

見上げれば、先程エーギルが入ってきた戸口は半開きになっており、廊下の方から明かりが漏れている。


(戸口が開いているわ。これで屋敷から抜け出せるかも……)


レミリアは恐る恐る戸口から廊下の方を覗き、周囲に誰もいないことを確認すると、急いで部屋から抜け出した。


レミリアは人目につかないように気配を消しながら、慎重に廊下を進んでいった。

幸いにも廊下に人の気配はなく、あたりは静まり返っている。


ふと窓の外に目を向けると、いつの間にか日はすっかり沈み、澄んだ夜空には大きな白い満月が浮かんでいた。


(今宵を乗り切ることができれば、まだ機会はある)


ルシウスたちは、吸血鬼が眷属を増やすには満月の夜に儀式を行う必要があると言っていた。

今晩それを行うことが出来なければ、次の満月まで待つしかない。そうなれば、それまでの間、時間を稼ぐことができる。


(何としてでも、今宵だけでも敵を掻い潜って生き残るのよ)


レミリアはきつく決心すると、そろそろと身を潜めながら先を急いだ。


***


―――魔王城にて


一方その頃、遠方へ視察に出ていた魔王たちのもとに、城から一報が入った。


「魔王陛下、大変です。お妃様とルーナが、お城から忽然と姿を消しました」


「なんですって」


魔王が目を見開くのと同時に、そばで公務に付き添っていたレギュラスが驚愕の声をあげる。


「一体どうして、どこへ消えたというのです」


「どうやら、使用人のルーナがお妃様を外へ連れ出したようなのです。昼過ぎに、城の裏門から出ていくところを目撃した者がおります。只今、城内の使用人や衛兵たちが総出で行方を捜索しておりますが、未だに手がかりは掴めておりません」


「……ルーナが、どうしてそのようなことを」


報告を聞いていたレギュラスが声を荒げる。

その横で魔王は黙したまま、しきりに自分の薬指にはめた指輪に視線を落としていた。


「――確かに、レミリアは城から抜け出したようだ。彼女は今、北部領主ブランドルー公爵邸にいるらしい」


「ええっ! ブランドルー公爵のもとに? 一体どうして、そのようなところへ」


レギュラスが驚愕している横で、魔王はなおも指輪に視線を落としたまま、何か考えごとをしていた。


レミリアと魔王が婚姻の儀式のときに結んだこの指輪には、不思議な力が備わっている。

指輪は魔力を秘めていて、契約で互いをつなぐとともに、自分の居場所を相手に伝えることができるのだ。レミリアが持っている指輪にも同じ機能が備わっているが、彼女は持てる魔力が乏しいので、おそらく使いこなせないだろう。


「なぜ、レミリアがそのような場所にいるのか、見当もつかないな。しかし公はかねてから、私に対して不穏な動きが目立っていた。――レギュラス、私はこれからブランドルー公爵邸へ向かう。お前たちは先に城へ戻っていろ」


「お、お待ちください。魔王様お一人では危険です。ここは一度城に戻って、準備を整えて――」


「そのような暇はない」


魔王はレギュラスの進言をぴしゃりと跳ねのけると、次の瞬間には転移魔法を放ち、その場から姿を消してしまった。


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