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魔王の花嫁 無能と蔑まれたわたしのスキルは、魔界ではチート技でした?! 温厚な魔王様に溺愛されるのは想定外です……‼︎  作者: あきはる


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執務室にて(魔王視点②)


「どういうことだ?」


魔王は訝しむ。


「魔王様も鈍いですね。不本意ながら、あなたは唯一の弱点である日光を克服されたのですよ。魔族はもう、人間を脅威と思う必要はなくなります。あの娘の力を用いれば、我々は人間界に攻め込んで、彼らを支配することさえ出来てしまうかもしれません」


「――まさか。私はそのようなことはしない」


魔王は目を見開いた。しかし、レギュラスは強気な姿勢を崩さない。


「なぜそう言い切れるのですか」


「必要がないからだ。人間たちとは、先の戦以来、友好関係を築いている。差し迫った脅威とは言えないし、こちらから再び侵攻する必要性もない」


「それは、我々があちらの世界で昼間動けないから、妥協して友好条約を結んでいるに過ぎません。日光を克服すれば――そもそも人間は、魔族と比べれば非力な存在。日の光という弱点さえなければ、脅威にはなりません。これは好機です」


魔界は世界の外れにある。かつて人間との争いが起きた際、魔族はその圧倒的な魔力で人間たちを討伐していった。しかし、そんな魔族たちには、ある致命的な弱点があった。それは、日の差し込む昼間には行動が出来ないことだ。


魔族は生来、日光に弱い。一度でも陽光を浴びれば、たちまち焼け焦げて消滅してしまう。それは人間の血を引く混血(ハーフ)であっても変わらない。見た目がどれほど人間に近くとも、陽の下に出られない身体であることに例外はなかった。夜の間にどれだけ前進しても、夜が明ければ行動不能になる。ゆえに魔族は、最後までその勢力を伸ばしきることが出来なかった。


「しかし、そんなことは当のレミリアが望まないだろう。あのスキルは今のところ彼女にしか使えない。だから、我々にはどうすることも出来ないよ」


「それは魔王様の匙加減次第でしょう。お妃様が我々の脅威たる“波動”の力を持つことは確かですが、そんなものは魔王様の力をもってすれば、どうにでもなります。むしろ、お妃様は魔王様の花嫁なのですから、そのくらいはして当然かと」


「レギュラス。言っておくが、私はそのようなことを彼女に強要するつもりはない」


魔王はぴしゃりと跳ねのけた。しかし、レギュラスはなおも食い下がる。


「しかし――今に、そのような悠長なことを言ってはいられなくなりますよ。もしこのことを諸侯たちが知ることとなったら、彼らは黙ってはいないでしょう。お妃様の力を利用するよう迫るかもしれません」


言われて、魔王の顔が少しだけ曇った。

彼らは、各地方を守護する大領主たちである。魔王ほどではないものの各地に影響力を持っていて、魔王としても無視できない存在だった。


「最も危惧すべきは、お妃様が他の魔族の手に渡った時です。今はたまたま、切り札が魔王様の前に舞い込んでいるだけのこと。ひとたび敵の手に落ちれば、それは魔王様にとって重大な脅威となりましょう」


レギュラスは確信めいていた。言われて、魔王も考え込む。


「確かに、私もレミリアに危険が及ぶことは避けたい。だからこそ、あれ以来なるべくそばに置くようにしている」


レギュラスの言い分は、魔王自身も危惧していることだった。魔界には、レミリアの特異な魔法を脅威とみなす魔族が大勢いる。魔王は彼女を、その闘争に巻き込みたくはなかった。

だからこそ、城を留守にするいくつかの機会には、レミリアを同行させて自ら庇護してきたつもりだった。


「とはいえ、私も常時そばにいてやれるわけでもない。城の中にいればおおむね安全といえるが、それでも用心するに越したことはない」


城の敷地には、魔王自らが施した結界がある。これにより、外敵は簡単には魔王城に侵入できない。

しかし、万が一ということもある。


「今後も、レミリアから目を離さないようにたのむ」


「承知しました」


レギュラスは深々と頭を下げた。

その後、思い出したかのように付け加える。


「ところで、今日はお妃様はどちらに」


「さあね。日課の菜園の手入れでもしているのでは。城の敷地内にいるうちは心配いらない。好きにさせておけばよいだろう」


「……魔王様。なんだか最近、お妃様に対して甘すぎではありませんか?」


「そうだろうか」


レギュラスは、レミリアがやってきてからの二人の様子に不満を漏らした。

正式に嫁いできたとはいえ、魔族にとって人間は所詮、下級の存在とみなされている。

にもかかわらず、魔王はレギュラスから見れば異様なほどに、レミリアを甘やかしていた。


「魔王様の花嫁とはいえ、お妃様は人間の小娘に過ぎません。少しは威厳を持っていただかないと」


「良いんだ。彼女はまだこの世界に来て日が浅い。慣れないことも多いだろうし、あまり不安にはさせたくない」


「で、ですが……」


「レギュラス。お前の方こそ、仮にも私の妃であるレミリアに、そのような口を利くことは許さない」


魔王は鋭い視線を向けて、レギュラスを睨みつけた。言われて、レギュラスもようやく引き下がっていく。


「……出過ぎたことを申しました。お許しください」


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