革売りのジジイ
2人とは解散し1人帰路つく。
一応だが俺達には家がある。家と呼べるほどのものかは怪しいが。
それでも雨風を防ぐには充分だ。
年月を経てすっかり重くなったドアを乱暴に開け荷物を放り投げ天井を見上げる。
雨でも降ってくれれば雨音が慰めてくれるというに。
「寂しいなぁ」
家に帰るとはなんなのか。
ふとそんな考えが頭をよぎる。
心の拠り所なき家はたいして洞窟と変わりなく無機質なものでしかない。
「お~いクソ坊主ー生きてるか〜?」
「鍵なら開いてるよー」
「相変わらずしけた面してんな」
「昼間から飲んでるやつに言われたくねーよだ」
こいつは村の革職人のドウス。
酒を片手にふらつく足で見るからに駄目そうな奴だが腕はたしからしい。
俺が獲物を取りドウスが捌き肉は皆で食べて革は加工して王国に売りに行ってる。
「革が足りなくなったのか?」
「いやー完成したから今日は売りにいくぜぇ」
「付き添いかよ」
今日は売りに行くらしい。一番面倒だ。
なんたって王国に近付くのは命がけだ。
いつ誰が血迷って引き金を引くかわからない。
そんな緊張感の中歩くのはいつまで経っても慣れない。
「あんた1人だと全部酒に変えちまうからな」
「俺だってそんな馬鹿じゃねーよ。まあ酒に飲まれて死ぬのも悪くないがな!ガハハハ!!」
あぁもううるさい。ただでさえ小さい家で大声で笑わないでくれよ。
「さっさと行こうぜ」
「そうだな!酒が俺を待ってるぜー!」
村を取り囲むように森が広がっており、その先には少しばかり平野が広がっており王国への入り口。城門がある
平野に出る前に旗を広げ俺達はあくまで敵じゃないことを示す。
平野に出る瞬間が一番恐ろしい。一斉に銃口が向くのはたまったもんじゃないからな。
「よし坊主よくやったぞ!」
「お前は森に隠れてないで一緒に旗振れよ!隠れてると思われるだろうが!!」
「よっ!さすが村一番の肝っ玉!!」
いつもこんな調子だ。
いつか流れ弾に当たってしまえ
ってこんな冗談言ってる場合じゃない。城門までも慎重に歩く。
「村から革を売りに来ました」
「おう。ちょっと待っとけ」
小一時間もしないぐらいで皺ひとつないスーツを身に纏った商人が到着した。
馬車から降り杖を付きながら門へと近付く。
俺達は門の中に入られないので城門越しに小窓のような場所で交換をする。
「よー!じいちゃん元気そうだな!」
「相変わらず酒臭いやつじゃ。それで今回の品物は?」
「おう!これだ見てくれ!」
いくつかの完成品を商人に手渡す。
手に取り軽く確認して従者に渡す。
「本当に腕だけは良いの〜」
「へっへへ。じいちゃん今回は酒を多めに頼んだぞ」
「おい!」
生活掛かっているっていうのにドウスのやつめ。
だがドウスを静止した瞬間、商人と目が合う。
この商人だけはどうにも苦手で目を逸らす。
言葉こそ温かいが目の奥の冷たさは他の動物にも見たことがない。こういうのは人間特有の目だ。
「まあまあ、それにしても革の状態がかなりいいの狩りはそこの兄ちゃんかな?」
「はい。なるべく即死させるように」
「ほうほう。それはこちらとしても大助かりじゃの〜っといかんいかん。あまり立ち話をすると門兵に怒られるわい。持って参れ」
「はっ!」
米など生活に必要なもの。また、道具などを要望して受け取る。
「じいちゃんは相変わらず太っ腹だね!」
「ふん。絞り取るだけは3流よ。お前らが生活に困ればワシの利益が途絶える」
実際この商人になってからかなり交換率が良くなった。前の商人など両手で持てるくらいの米しか貰えなかったが今ではリヤカーいっぱいにもらえる。
そのお陰でドウスのおっさんもやる気を出して良いものを作れている。
「ドウスの製品は好評でな。こぞって貴婦人達が買いに来るわい」
「へっ!差別してるくせにそういう所は目を瞑るから嫌いなんだよ」
「ワシも同意見じゃ。まあ売れればいんじゃ」
「違いねぇ。じいさんまた来月も頼むぞ!」
「待っておるぞ。あとそこの若者名を教えてくれないか?私はリーチャルという」
「俺の名前はレオナルドだ」
「そうかいい名前じゃな」
何度も会っていたが名前を聞かれたのは初めてだ。少し警戒したがなんでもなさそうだ。
これ以上は門兵が待てないので重くなったリヤカーを引いて帰る。




