月下の誓い
「ドウス。いつもすまない」
「何言ってんだ村長!わりぃと思ってんなら今日は朝まで付き合ってもらうぜ!」
「「おぉー!!」」
ドウスが王国から持って帰った酒を男も女も手に取り村はどんちゃん騒ぎだ。
普段は飲まない村長までも顔を赤くして、歌っている。
ったくどうして大人はこうなのか。
「おいしけた面してんなガキ!」
「しけた面って言われたの今日2回目だぞ!この村の挨拶かこのババア!」
「なんだとこのやろー!」
この酔っぱらいの女は村の仕立て屋だ。
賤民である俺達が綺麗な服を着られているのはこの人のお陰だ。性格はドウスと同じで少し難ありだが。
「よし決めたぞ!お前の次の服は可愛いクマさん付けてやんよ!」
「ふざけんな!」
やんややんや言いあっていると誰からか聞いたソフィアが走って止めにきた。
「ちょっともう!レオもナナさんもこんな日まで喧嘩しないのー!」
ソフィアは仕立て屋ナナの所で勉強しており、弟子に見られたナナはバツが悪いだろう。
「ちぇー年寄りは年寄り同士で騒いでくるよ!若者同士だからって乳繰りあうなよー!!」
「ナナさん!?」
気まずい空気だけを残して飲み会の輪に突撃していった。あのババアには苦味のある部位だけ渡そう。
「2人ともー!ここにいたんだね!」
テオが大人達の中から抜け出すように逃げてくる。
ナイスタイミングだ。
「レオ無事でよかったよ」
「ま、まあな」
「良かったー!でも本当に凄いよレオは。皆が楽しそうに笑ってる。レオのお陰だ!……」
「そ、そうか…な…?」
「僕も頑張ってレオやソフィアみたいに貢献したいなぁ」
つぶやくような声だが俺とソフィアにははっきり聞こえた。
焚き火の明かりさと対照的に下を向くテオの顔には陰りがみえる。
真面目な性格なテオだから今の自分の状況に納得がいってないのだろう。
だけど俺とソフィアは知っている。テオは両国との交渉役として任命されている人の元で日々学んでおりまだ勉強中なだけ。これからこの村にとって不可欠になるのはテオの方だと。
俯くテオの手をそっとソフィアが握る
「不安になることないよ。私達には出来ないことをやろうとしてるんだから。
それにね……私はこの村が大好きで3人で揃うことがもっと好き。だからこの場所を守ってくれるのはテオだって私は信じてるから!」
「ソフィア……」
「そうだぞテオ。でもまあ失敗した時は俺が最前線に立って守ってやるからよ!」
「レオ……2人ともありがとう!僕もこの村が好きだから絶対に守り通してみせるよ!」
「いい顔になったね。ねぇこれさ……」
ソフィアが服から取り出したのは大人達が飲んでいるものと同じボトル。つまり酒だった。
「ソフィアそれどうしたんだよ!?」
「声大きいから!さっきナナさんから盗っちゃったの…」
「どうしてソフィア?僕たちはまだ飲めないのに…」
「ち、違うの!あんなふうに読むんじゃなくてさ……」
テオと顔を合わせて何か心当たりあるか確認したがどうやら本当に知らないようだ。
「私達。家族とか知らないけど、レオとテオのことは本当の家族みたいに思ってる!だから…その…盃を交わす…みたい…な…?」
再びテオと顔を見合わせるが今度は笑ってしまった。
答えは決まっている。
「ソフィアは優しいな」
「ほんとだよ」
「えぇ!?だめかな…?」
「そんなわけないだろなあテオ」
「うん。もちろん」
大人達の喧騒から少し離れ開けた場所に出る。
ここなら月も良く見えて景色も申し分ない。
「ソフィア貸してみ?」
いつもドウスが開けている要領で。
2人の盃に注ぐ。
「レオには僕がいれるよ」
「ありがとう」
自然と3人とも手を伸ばしちょうど中心で止める。
波打つ月に願いを込めて
「俺達3人どこで生まれたかなんて知りもしねぇ。だが今日まで生きてきて分かった事がある。俺達は家族だ。この先どんな困難が待ち構えようとも俺達3人は力を合わせて生き抜く!!」
「私達の!」
「僕達の誓いに!」
「「「乾杯!!」」」
盃の酒を一気に飲み干す。
乾杯とか盃の作法は知らないけど今日2人と飲んだこのお酒の味は決して生涯忘れねぇ。
忘れちゃいけねぇんだ。




