勝負の行方
「では、魔力パズルに触れた瞬間からタイマー押しますので、ご自身のタイミングで行ってくださいね」
タイマーを担当しているエオルもいつでもボタンを押せる準備は万全だ。あとはジライが触ればいよいよ対決がスタートする。
「スゥー、緊張するわね。……よし、行くわ!」
おっ、ジライが一つ目の魔力パズルを掴んだ!タイマースタートだ!そして、ジライは両方の手のひらを開いてその上に魔力パズルを置いたぞ。
「……なるほどね、これムズッ」
悩みつつ真剣にパズルを解き進めるジライ。どうやら苦戦している様子だし、このままタイムが伸びてくれればいいのだが……。
パカッ
「やった、ギミックがわかれば簡単ね!」
え、もう一つ目をクリアしただと!?下手すると俺が普通にやるのよりも早いタイムで解いたぞ!
「なっ、早っ!?」
「三十秒で一つクリアです!」
「次!」
次の魔力パズルを手に取り再び両手のひらに乗せる。これはもしや、俺と違って「送り込む魔力を抑える」という手間が無い分、スムーズに取り組めているんだな。くっ、これは結構ヤバいんじゃないか……!?
「はい、楽勝ー!」
「おっ、一分で二つ目クリアです!」
「や、ヤバいヤバいヤバい……!」
一つ辺り三十秒と素早く魔力パズルを解いていく!このままじゃ負けてしまう!た、頼む。どこかで詰まってくれ〜!!
「よし、これでラスト!」
「一分半で三つ目もクリア!」
「これは……終わったか?」
全然詰まる予感がせずにサクサクと進んでいくんだが。自分で勝負の題材にするくらいだから、やっぱり自分に得意なのを選んでたのか?
パカッ
最後の一つもそのままのペースでクリアしてしまった!
た、タイムは一体何分なんだ……!?
「ストップ!タイムは二分一秒です!」
「うーん、あのミスが無ければ二分切れてたかも」
て事は、ほぼノーミスで、四つの魔力パズルを解き切ったのか?ど、どうしようこれ……生理とか関係なく勝てる気がしない……。
「それで、次はそっちの番よ!」
「は、はい!」
魔力パズルをくっつけて元通りにしたジライが「早くやれ」と催促をしてきた。いやぁ……勝てる気がしない。でも、今更逃げられないからやるしかないよな。
カウンターに向かって立ち、魔力パズルを眺めるが、さながら負けイベントのような絶望感が襲ってくる。
「スゥー、ハァー。まずはリラックスしてっと……」
薬を飲んだとはいえ生理痛はあるしイライラもしているので、まずは心を落ち着かせる事が最重要だ。魔力を抑えないとそもそもパズルに挑む事すらできない。
「大丈夫、練習したからやれるはず……!」
「ムクロンさん、頑張ってください!」
「早くしてくれない?私そろそろ用事なんだけど」
ジライに急かされたのでもう精神統一の時間は終わりにしよう。心の準備はまだできてないが、あぁもうやるしか無い!
「触った!タイマースタートです!」
えっと、さっきジライは両手で持ってたよな?だったら俺も同じ構えをしてみるか。おおっ、確かに中の様子がわかりやすいし魔力も入っていきやすい。
「ん?あ、これダメだ。詰まるわ!」
内部の仕掛けがわかりやすいというメリットはあるが、魔力が余分に入って行きやすく詰まりやすくなってしまった。俺はやっぱり片手だけでやる事にしよう。
パカッ
「や、やっと一つ……!」
「タイムは、四十秒です!」
「えー?遅くなーい?」
途中で一度止まったせいかジライよりも一十秒も遅いタイムだ!
「ヤバいーー!入らないって!!」
あぁもう、焦ったせいで魔力を送り込みすぎてまた詰まってしまった!あー、イライラするーー!!イライラのせいで起きた失敗にイライラするせいで無限ループに入っちゃってる!い、一度落ち着かなくては。
「フゥー。一つ一つ、丁寧に……!」
深呼吸して少しは落ち着き、冷静さを取り戻したので魔力を絞ってようやく普通に挑戦する事ができるようになった。でも、確実にタイムロスが発生していた。
「きたっ!」
「タイムは一分二十秒!」
「なっ!?」
「アハハハッ!これは勝ったわね!」
俺が勝つためには残り四十秒であとの二つを解き切らなきゃならない。そんな事は不可能に近いのでジライは余裕そうな表情で勝利宣言をした。
「くっ、これはヤバい……!あっ」
よりによって、このタイミングで血が出てきた。し、しかしこれによって逆に冷静になれた気がする。ゾーンとでも言うのだろうか?魔力の制御が完璧にできるようになった。しかし時間が無い……それならこうするしかない。
ガシッ
「なんと、残りの一つも同時に取り掛かりました!」
「二つ同時!?そんな難しいことができるのかしら?それともヤケクソになった?」
両方の腕でそれぞれ別々で魔力の操作をしていく。どうせ一つ一つやってても間に合わない。だから、ここはこの方法に賭ける!
「ふぅ〜、来た」
パカッ
最初に取り掛かっていた三つ目の魔力パズルを解き終えた。
「現在一分五十秒です……!」
「あと一十秒で勝ち……耐えて!」
焦るべきなのだろうが、俺は動揺しない。いたって平常心で淡々と解いていく……!
パカッ
「ストップ!」
「終わりました」
「タイムはどうなの!?」
「タイムは……二分!」
二分か……。という事は、ジライに勝ったのか。え、俺勝てたのか!?集中し過ぎてて勝負事である事すら忘れていたぞ。
「く〜〜!負けた!」
「あっ、勝ったー!めっちゃギリギリだし!」
「という訳で、勝負はムクロンさんの勝利です!おめでとうございまーす!」
大接戦だったがなんとか無事に勝利する事ができた!これで、マーレスおよびシェーナさんと会っても文句言われなくなる!
「勝負に勝ったから、もう私やマーレスの恋愛については首突っ込まないでね!」
「……フンッ!約束だからしょうがないわね!」
「ちゃんと周りの友達やマーレスのファンにも伝えとくんだぞ?」
「言うわよ。あーあ、推しが一人減っちゃったなー」
減ったって、恋人がいるとわかったら興味無くすのってファンとしてどうなんだ?
バンバンッ
すると、入り口のドアを強い力で引く音が聞こえた。
「あ、来たみたい〜!」
ジライはその後に反応して突然猫撫で声を出し始めた。
「はーい、今開けますねー!」
ガチャ、とエオルが扉を開けると、そこにはイケメンで筋肉はあるがチャラくて軽薄そうな若い男性が立っていた。
「ジライ、デート行こうぜ」
「「え、デート!?」」
まさかのジライの彼氏の登場に、俺はエオルと互いに顔を見合わせた。
「ごめんねー、バーくん!今用事終わったよ!」
「じゃ、ささっと行こうぜ」
バーくんと呼ばれたその男はジライと手を結びつつも俺達二人を何故か睨んできた。なんだこの、ガラの悪い鼻につくヤツめ!!
「マーレスを狙ってたんじゃなかったのか!?」
「え?いやいや、あの人は好きだけどー、バーくんの事も好きだからさー。じゃあね私行くから」
そうして、二人は何も買わずにイチャイチャしながら店を出ていった。……おい。結局俺はこんなツラい状態であの地雷女に付き合わされただけって事かよ!!あーもう、すっっっごいイライラしてきた!!!!
「あの(自習規制)で(自習規制)で(自習規制)な女め!(自習規制)で(自習規制)の彼氏に(自習規制)られてしまえ!」
「ちょっ、ムクロンさん!?落ち着いてください!!」
扉が閉まって聞こえないのをいい事に、溜まっていた不満を全部吐き出してやった!すぐにエオルには止められたけど、言いたい事言えてめっちゃくちゃスッキリした!
(自習規制)はピー音で読んでください。




