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第99話 勝負の行方

「では、魔力パズルに触れた瞬間からタイマー押しますので、ご自身のタイミングで行ってくださいね」


 タイマーを担当しているエオルはいつでもボタンを押せるように構えている。あとはジライが触ればいよいよ対決がスタートする。


「スゥー。緊張するわね。……よし、行くわ!」


 ジライが一つ目の魔力パズルを掴んだ。タイマースタートだ。そして、ジライは両方の手のひらを開いてその上に魔力パズルを置いたぞ。


「……なるほどね、これムズッ」


 悩みつつ真剣にパズルを解き進めるジライ。どうやら苦戦している様子だし、このままタイムが伸びてくれればいいのだが……。


 パカッ


「やった、ギミックがわかれば簡単ね!」


 もう一つ目をクリアしただとっ。下手すると俺が普通にやるのよりも早いタイムで解いたぞ。


「なっ、早っ!?」

「一分で一つクリアです!」

「次!」


 次の魔力パズルを手に取り再び両手のひらに乗せる。やはり、俺と違って「送り込む魔力を抑える」という手間が無い分、スムーズに進められているんだな。くっ、これは結構ヤバいかもしれない。


「はい、楽勝ー!」

「おっ、二分で二つ目クリアです!」

「や、ヤバいヤバいヤバい……!」


 一つ辺り一分と素早く魔力パズルを解いていく!このままじゃ負けてしまう。た、頼む。どこかで詰まってくれ。


「よし、これでラスト!」

「三分一十秒で三つ目もクリア!」

「これは……終わったか?」


 全然詰まる予感がせずにサクサクと進んでいくんだが。自分で勝負の題材にするくらいだから、やっぱり自分に得意なのを選んでたのか?


 パカッ


 最後の一つもそのままのペースでクリアしてしまった。

 タイムはどのくらいなんだ……?


「ストップ!タイムは四分三十秒です!」

「うわっ、あそこでミスしたのが痛かったわー!」


 ――て事は、ほぼノーミスで、四つの魔力パズルを解き切ったのか?

 ど、どうしよう……。生理とか関係なく勝てる気がしない。


「それで、次はそっちの番よ!」

「は、はい!」


 魔力パズルをくっつけて元通りにしたジライが「早くやれ」と催促をしてきた。勝てる気がしないが、今更逃げられないからやるしかない。

 カウンターに向かって立ち、魔力パズルを眺めるが、さながら負けイベントのような絶望感が襲ってくる。


「スゥー、ハァー。まずはリラックスしてっと……」


 薬を飲んだとはいえ生理痛はあるしイライラもしているので、まずは心を落ち着かせる事が最重要だ。魔力を抑えないとそもそもパズルに挑む事すらできない。


「大丈夫、練習したからやれるはず……!」

「ムクロンさん、頑張ってください!」

「早くしてくれない?私そろそろ用事なんだけど」


 ジライに急かされたので精神統一の時間は終わりにしよう。心の準備はまだできてないが……やるしかない。


「触った!タイマースタートです!」


 運命のタイマーがスタートした。よし……集中だ。


「フゥー……。あ、ダメだ、詰まった」


 力んでしまっているのか、魔力を送り込み過ぎて上手く解けない。練習では上手くいったのに、本番だとプレッシャーを感じて緊張してしまう。


「や、やっと一つ……!」

「タイムは、一分三十秒です!」

「えー?遅くなーい?」


 途中で一度止まったせいかジライよりも三十秒も遅く一つ目を解けた。この差は大きくてなかなか埋められないだろう。


「ヤバいーー!入らないって!!」


 次は、焦ったせいで魔力を送り込み過ぎたのが原因で詰まってしまった。あぁ、イライラする。

 イライラのせいで起きた失敗にイライラするせいで無限ループに入りそうだ。い、一度落ち着かなくては。


「フゥー。一つ一つ、丁寧に……!」


 深呼吸して少しは落ち着き、冷静さを取り戻したので魔力を絞ってようやく普通に挑戦する事ができるようになった。しかし、再びタイムロスが生じてしまった。


「きたっ!」

「タイムは三分!」

「なっ!?」

「アハハハッ!これは勝ったわね!」


 俺が勝つためには残り一分半であとの二つを解き切らなきゃならない。そんな事は不可能だと決めつけたジライは余裕そうな表情で勝利宣言をした。


「くっ、これはヤバい……!あっ」


 よりによって、このタイミングで血が出てきた。

 し、しかし、これによって逆に冷静になれた気がする。 予想外の事が起きたせいか、ある一つの奇抜なアイデアを思いついた。勝つ為には、これしかない。


「なんと、残りの一つも同時に取り掛かりました!」

「二つ同時!?そんな難しいことができるのかしら?それともヤケクソになった?」


 両方の腕でそれぞれ別々で魔力の操作をしていく。どうせ一つ一つやってても間に合わない。だから、ここはこの方法に賭けるしかない。


「ふぅ……。来た!」


 最初に取り掛かっていた三つ目の魔力パズルを解き終えた。


「現在四分二十秒です……!」

「あと一十秒で勝ち……耐えて!」


 焦るべきなのだろうが、俺は動揺しない。ここで詰まっては負けるので、平常心で淡々と解いていく。


 パカッ


「ストップ!」

「終わりました」

「タイムはどうなの!?」

「タイムは……四分八秒!」


 やった、ジライに勝った。……あぁ、今は早くナプキンを変えにいきたい。


「く〜〜!負けた!」

「あっ、勝ったー!めっちゃギリギリだし!」

「という訳で、勝負はムクロンさんの勝利です!おめでとうございまーす!」


 大接戦だったがなんとか無事に勝利する事ができた。

 これで、シェーナさん(ついでにマーレス)と会っても文句言われなくなる。


「勝負に勝ったから、もう私やマーレスの恋愛については首突っ込まないでね!」

「……フンッ!約束だからしょうがないわね!」

「ちゃんと周りの友達やマーレスのファンにも伝えとくんだぞ?」

「言うわよ。あーあ、推しが一人減っちゃったなー」


 減ったって、推しに恋人がいるとわかったら興味無くすのってファンとしてどうなんだ?


 その時、入り口のドアを強い力で引く音が聞こえた。


「あ、来たみたい〜!」


 ジライはその後に反応して突然猫撫で声を出し始めた。


「はーい、今開けますねー!」


 ガチャ、とエオルが扉を開けると、そこにはイケメンで筋肉はあるがチャラくて軽薄そうな若い男性が立っていた。


「ジライ、デート行こうぜ」

「「え、デート!?」」


 まさかのジライの彼氏の登場に、俺はエオルと互いに顔を見合わせた。


「ごめんねー、バーくん!今用事終わったよ!」

「じゃ、ささっと行こうぜ」


 バーくんと呼ばれたその男はジライと手を結びつつも俺達二人を何故か睨んできた。なんだか、ガラが悪くて鼻につくヤツだ。


「マーレスを狙ってたんじゃなかったのか!?」

「え?いやいや、あの人は好きだけどー、バーくんの事も好きだからさ。じゃあね、私行くから」


 そうして、二人は何も買わずにイチャイチャしながら店を出ていった。

 ……結局、俺はこんなツラい状態であの地雷女の道楽に付き合わされただけだったのか。

 そう思うと、全身から怒りが込み上げて来た。


「あの(自習規制)で(自習規制)で(自習規制)な女め!(自習規制)で(自習規制)の彼氏に(自習規制)られてしまえ!」

「ちょっ、ムクロンさん!?落ち着いてください!!」


 扉が閉まって聞こえないのをいい事に、溜まっていた不満を全部吐き出した。

 すぐにエオルには止められたけど、言いたい事言えてめっちゃくちゃスッキリした。

(自習規制)はピー音で読んでください。

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