第100話 指名手配犯、来店
[祝]100話目!
――ジライとの勝負の日から三日後。俺とエオルは今日も今日とてプレイヤーにて仕事をしていた。
ようやく生理が終わって体調は万全になった。
勝負の翌日の日もお店を開いていたのだが、その日も指名手配されている日本人の青年は現れなかった。
昼休憩中に二人で部屋で昼ご飯を食べていた俺達の元に、同一犯と思われる被害情報をまとめた資料が国から届いた。
「何が書いてあるんだ?」
「一緒に見ましょう」
資料を入り口で受け取ったエオルが部屋に戻ってきたので、俺達は顔を近付けて内容を確認する。
「えぇと、「被害は全て窃盗であり、いずれも路地裏や人の気配が無い場所で姿を消した」と書いてあります」
「以前に俺が逃した時と同じか……」
やはり、ヤツは人気の無い所で姿をくらます。ヤツが能力を使って逃げる前に、追いついて会話しなければ。
「盗まれたものは……図書館で魔道具や魔法の仕組みに関する本が数冊と、他のいくつかの店では炎魔法に関係する魔道具が盗まれたようです」
「炎魔法?ヤツはそれを集めて何をする気なんだ?」
ヤツが盗んだ魔道具で何を企んでいるかはわからないが、なにか大きな危険がこのティエスカに迫っているのは間違いない。
こっちから闇雲に探すわけにも行かないから、アイツの方から来てもらうしかないのが辛いところだ。
ヤツが準備を終える前に来店するのを神様に祈りつつも、引き続き午後からも仕事を再開しつつ観察を続ける。
「ありがとうございましたー!……ふわぁ。昼飯食べたからか眠くなってきた」
「その気持ちわかります。僕も急に眠たくなってきました……」
昼過ぎだし仕事もそんな忙しくないので、エオルも珍しく睡魔に負けそうになっている。二人とも眠たくても、昼食以外でまとまった時間も取れないから昼寝はできないし耐えるしかない……。
「いらっしゃいませー……!?」
その時、店の扉を開けて、指名手配されている青年が入ってきた。布で顔を隠しているが、以前に目撃した時と全く同じ顔をしているのですぐに気が付いた。
「……あっ。い、いらっしゃいませー!」
エオルもこの青年が指名手配犯だと気付いたようで、必死に隠そうとはしていたが、恐怖から声がうわずってしまっていた。叫んだり取り乱したりせず、すぐに気付かないフリをして作戦を開始してくれたのはナイスだった。
「…………」
なぜか、青年がカウンターにいる俺の事をじっと眺めている。まさか、実は気付いている事がバレたのか?
……いや、違う。俺の胸をガン見しているだけだ。女性は胸を見られているのに気付くとは言われているけど、こんなにわかるとは思わなかった。
…………てか見過ぎだろ。どんだけ見てるんだ。
「…………」
しばらくしたら、ついに動き始めて貴重な商品があるコーナーに向かった。どうやら、何かお目当ての商品を探しているようだ。
……今、さりげなく魔道具を手に持った。そして、平然と玄関から出ていった。
「ムクロンさん、お願いします!」
「あぁ、わかってる。隠密スキルを使って気付かれないようにヤツを追う!」
自分がほとんどの人から感知されない状態になってから、ワープして店の外に出てヤツを探す。
ワープで玄関のドアの向こうに出ると、青年はバレていないかを気にしているようで店の方をチラチラと振り返りながらも早歩きでどこかへと向かっていった。
どうやら、姿を消している俺のことは完全に見えていないようなので、"飛行"も使って通行人の邪魔にならないように上を飛んで追いかける。
「路地裏に入った……!」
青年を追っていくと、以前に逃げた時と同じで路地裏へとやってきた。再び何かしらの手段を使って逃げられてしまうかもしれない。
仕方ない。ここは姿を現して、マオウグンという単語を出してカマをかける作戦を実行しよう。
「ちょっとキミ!」
「うわっ!?」
細い道の前で立ち尽くしていた青年の前に着地して、隠密を解除して姿を現した。
驚いた青年は焦って別の方に走って逃げようとしている。いきなり攻撃して止めると怒らせてしまうので、回り込んで話術で止めなければ。
ワープして、彼の進行方向に現れる。
「少し話がしたいんだけど……」
「あっ、ぶつかる!」
急に現れたせいで、青年が避けきれずにぶつかって倒れてしまった。
……胸に何かが乗っている。
「うひゃっ!?」
青年に押し倒されて、彼の左腕が俺の右胸を鷲掴みにしている。
まるで漫画みたいなエッチなハプニングが起きたが、まさかされる側になるとは思わなかった。
「ご、ごめんなさい。これは事故なんだ!」
青年は慌てて立ち上がり恥ずかしそうな顔をしながらわざとじゃない事をアピールして謝る。
話は通じるみたいなので、これはチャンスだ。もしマオウグンなら情報を聞き出さなくては。
「待って。あなた――マオウグンよね?」
「は、はい。え、お前がなぜそれを知っている?」
認めたって事は、この青年、やっぱりマオウグンだ。話を聞き出したあと、良きところで捕まえて国に報告しなくては。
ここからは俺の話術に全てが懸かっている。相手はどんな能力を持っているかわからない未知の存在だが、なんとか俺の事を信用させたい。




