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第101話 マオウグンの正体

「落ち着いて!私はあなたを救いに来たの!」


 警戒されないように無害な事をアピールしなければ。なにか信じてくれそうなセリフを言おう。


「私は女神……マカロンよ!」


 相手が日本人なら異世界系に馴染みがありそうだし、いきなり女神様が現れたとしても信じてくれるはずだと思い、女神様のフリをする事にした。

 もし信じてくれずにワープして逃げられて仲間に報告されてしまった時のために偽名を使っておく。


「女神だと?そんなの信じられないが……」


 青年が疑心に満ちた目で俺の顔をじ〜っと見てくるので、満面の笑みを続けて「女神様ですよ感」をこれ以上ないほどにアピールする。

 次第に表情筋がピクピクしてきたが、()る一歩手前でようやく青年が目線を外してくれた。


「まぁ、どっちでもいいや。それにしても……」


 青年はそう呟いた後にチラッと俺の胸を見てきた。コイツ、もしかして俺に気があるのか?

 俺と同じ、童貞かつ非モテのオーラを感じるぞ。


 下心ではあるが警戒は薄れたようだし、会話して情報を残さず聞き出さなくては。

 同時に、逃げられた時の為にホーミングして敵に当たる魔法をこっそり唱えてマーキングしておこう。


「"逃さなぬ雷(チェイス・ボルト)"」


 よし、これでコイツがもしワープして消えたとしても、これを飛ばして追跡すれば居場所がわかる。


「それで、あなたの名前は?」

「俺はアラタ・オガミだ。女神なのに名前わかんねぇのか?」

「お、おほほほほほ!ど、どうやらあなたを追ってこの世界に来た時にド忘れしちゃったみたい!」


 あ、危なかった。咄嗟に誤魔化したがストレートに質問しては怪しまれてしまう。

 アラタの境遇やマオウグンについて知っている素振りをしないと偽物の女神だとバレてしまいそうだ。


「俺の世界から来たのか?」

「そ、そうよ!」

「ふ〜ん。()()()()()()ってのに、神様は生きてたんだな」

「そうなのよ〜!……は?今なんて?」


 今、確かに、地球が滅んだって言った。

 ――一体どういう事だ?


「マオウグンが侵略してきて地球は滅んだぞ?人類はみんなくたばったが、知らないのか?」

「え…………。あ、そん時昼寝してたから……知らないわ」


 「マオウグンによって滅ぼされた世界からやってきた」って……。でも、アラタはさっき自分もマオウグンって言ったよな……?


「それじゃ、あなたはなんで生きてるの……?」

「巨大な宇宙軍艦に乗って脱出した。俺はその船のエンジニアだったからな」

「宇宙軍艦!?なにそれ!?」


 俺と同じで現代の世界からやって来たと思っていたのに、急にSF過ぎる近未来の話が始まった。


「大量の兵器を搭載した一万人が搭乗可能な宇宙船の事だが?」


 そんな、常識みたいに言われても困る。

 しかし、宇宙を飛ぶデカくてビームとかが付いている船だというのは想像がつく。


「よくわからないけど、それがあればマオウグンを倒せるんじゃないの?」

「フッ、ハハッ!」


 なぜかアラタは突然笑い始めた。

 もしかして、思い出し笑いだろうか。


「かもな。正直、あの船で戦ってたら勝ってたかもしれない。でも、俺は確証が持てなかったし、何より俺を雑に扱う他の奴らが気に食わなかった。だから、自爆装置を作動させて俺だけ脱出して生き残ったのさ」


 コイツ……生き残るために他の一万人近くの人を殺したのか?

 それより、そんな事をしたのになぜ生き残っている?なぜ異世界に来ているんだ?


「えっ、じゃあなんで生きてるの?」

「あぁ、これは俺もマオウグンになったからだ」

「え?なんで、どうして?」


 つまり、「アラタ・オガミは元々普通の人間だったのに、敵であるマオウグンになった」というのか。

 どういう仕組みだ?


「宇宙船に忍び込んでいたマオウグンの一人にこう言われたんだ。「この船を爆破すれば、君は人類最後の一人になれる。そしたら、君は異世界を巡って永久に生きられる」ってな!」

「…………!?」


 じ、人類最後の一人だと?

 今の話をまとめる限り……「マオウグンとは、それぞれの世界で唯一生き残った最後の人間がより高度な存在へと昇格したものであり、異世界を巡りながら、その世界の人類を最後の一人になるまで殺し続ける者達」って事か?

 ――まるで、世界を蝕み死に至らせるガンじゃないか。


 ――今まで、どれほどの人間が死んだのか想像も付かない。


「うぷ……」


 そんなヤツらが実際に、今この世界に現れている。それも、各世界を転々としてもなお敗れていない最強の敵が。


 そう考えると、あまりの恐怖で吐き気を(もよお)した。それと、エイダが言い遺した「絶対にみんなで生き残って」というメッセージの意味がたった今理解できた。


 ――「世界でたった一人で生き残る」か、「勝ってみんなで生き残るか」、マオウグンが既に侵略を開始したこの世界では、その二つに一つしか結末が無いのだ。


「おいおい、幻滅するなよ女神様。確かに俺はこの手で自分の世界を終わらせたが、俺という存在はずっと生き続けるんだぜ。嬉しいだろ?」

「…………」


 自分だけ生きようと大量殺人をしたのによく平然としていられるな……。反吐が出るほどのとんでもない邪悪な人間だ。

 それも、悪の心に取り憑かれていた、実際に素の状態は温厚だったエイダとは違う。マオウグンになる前から、根っからの悪人だ。


「俺を救いに来たんだろ?それなら、俺と付き合わないか?マオウグンにも女は居るけどみんな俺に当たりが強いんだよ。それと、俺よりも強いから気に食わないしさ。……それとマカロンさんめっちゃタイプだし。俺の仲間になれよ」

「…………」


 感情に任せて、今すぐにこの男を木っ端微塵に吹き飛ばしてやりたいところだがグッと堪える。

 (しゃく)だが、コイツだけが唯一の手がかりである現状、媚びて情報を聞き出すしかない。

 アジトの場所も聞き出したらぶっ飛ばして、捕えて国に引き渡してやる。

要約すると、マオウグンはいろんな世界でなんとか最後まで生き残った強者あるいは卑怯者の集まりです。

転生者ボーナスならぬ生存者ボーナスによってチート級の力を授かってます。

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