第102話 アラタと鬼の元凶について
「え、ええ。わかったわ。私の世界で唯一生き残ったのがあなたなんだもの。私はずっと付いていくわ」
めっちゃくちゃ不服だが、話を聞き出すために仕方なく彼女になってやろう。好きって言えば警戒を薄めてくれるはずだ。
「キター!ついに俺にもついにモテ期が訪れた!へへへ……!」
アラタはそう言って何かを企んでいる様子で薄ら笑いを浮かべている。これは……同じく二次元のオタクだった俺にはわかるが、エッチな妄想をしているに違いない。
「それで、アラタはこの異世界で何をやっているのかしら?」
「それは俺のセリフだ。マカロンは、神様なのになんで働いてるんだ?」
「それは〜……、神様だけど力が弱くなっちゃって、お金が手元にないから働くしかなかったの」
アラタは万引きをしていたので一銭も持ってないはずだ。マカロンも同じ状況で転移したと思わせる。
「お前っ、働くとか良い子ちゃんかよ。盗んだ方が楽だろ」
鬼と違って見た目は普通だから労働できるのに、面倒だからという理由で盗みを働いていたのか。働いて稼いだ金で買えば脚がつく事も無かったのに。
「私みたく傷付く人がいるんだから盗みはダメよ。働いて買って?何を集めてるかは知らないけれど」
「あぁ。実はあと、この部品を取り付けるだけで兵器が作れるんだよ」
「兵器……?」
やはり、盗んで集めた物で何か危険な物を作っていたのか。しかも、完成する一歩手前だった。
もしもコイツが他の店で盗んでいたのなら、今頃完成しているところだった。
「この世界には魔法っていう概念があるらしく、その原理を本で勉強して解析して、炎魔法を用いた兵器を使った。俺って理系だからさ、現地の物で武器を作れるんだぜ」
「なるほど……」
恐らくエイダと同じで魔法を使えないはずなのに、魔法の仕組みを勉強して兵器を作っただと?
エンジニアしてただけあってものづくりは得意なのか。
「そうだ。前に放送で森に鬼が出たって言ったんだけど、アラタ何か知らない?」
せっかくなので、森に現れた鬼の異変を起こしている元凶と知り合いじゃないか聞く。あわよくば本人の居場所や姿が判明すればいいが。
「……アイツの仕業だな。俺、アイツ嫌いだな。森に居たのに追い出されたしさ。頭悪い脳筋のくせにめっちゃ強いから気に食わない」
アラタは元は森に潜んでいたが鬼を率いるリーダーが現れた事によってティエスカに行かざるを得なかったようだ。
――そして、めっちゃ強いらしい。
「じゃあ、ずっと森に居たの?食事や睡眠に洗濯とかどうしてたの?」
森の中で過酷なサバイバルをしていたにしては痩せているようには見えないし、服も綺麗で体臭も臭く無い。
「マオウグンは食事や睡眠の必要が無いからな。どっちもしなくても生きていける。ただ、人になりすます時の為に一応はできるぞ。あと服は勝手に綺麗になる」
エイダは食事も睡眠もしていたけど、アレは俺に怪しまれないようにやっていたんだな。
睡眠も食事も要らないって、マオウグンは本当に人間なのか?
「それと、その世界に合わせて衣装も変えられる。これが俺の元の服装だ」
アラタの服が一瞬でオシャレな作業服に変わった。これがエンジニアとしての正装で、前の世界で着ていた服なのか。
「手首についた装置で溶接や成形ができる。どうだ。カッコいいだろ?」
「スゴい……!」
未来の技術力のおかげで、大きな機械が無くても一人で兵器製造が可能らしい。
この服は周りから浮いているので、再びアラタは服装が元の西洋風の庶民の服に戻した。
「えーっと、鬼なの?森方にいる人って」
「あぁ。額から角が生えている」
「どこに居るかわかる?」
「知らねぇよ。森のどこかで鬼を生み出してるんじゃねぇか?」
「鬼を生み出す……!?」
思えば、鬼は球から現れていたので、元から人間ではなくて量産型の兵器だったのか。
「そう。アイツは子分の鬼を作れるんだ。どうやっているかは詳しくは知らないがな」
「なるほど……」
「なぁ。さっきから俺の事以外に質問し過ぎじゃないか?」
マオウグンについて探っている事に勘づいたのか、怪しまれた。さすがに森にいるマオウグンはそんなに関係ない話だったので、アラタが機嫌を損ねてしまった。
「いや、放送で言ってたから知らないかなーと思って質問しただけよ!」
「……本当か?」
「本当よ!」
このアラタという人間、話を聞いた感じだと信じられずに仲間を殺せるくらい人間不信が強いタイプだ。
「美人と話せるならなんでもいいや」って感じで、俺が女神だと言うことすら本気で信じてはいないのだろう。
「なぁ。マカロンさんはこの世界に来て何日目だ?」
まさかそんな事を聞かれるとは思ってなかった。
どうしよう。アラタより先に来ていたら「俺がアラタを追って異世界に来た」という設定と矛盾してしまう。
「えぇと、五日前よ」
「五日前か……なるほど」
アラタと初めて遭遇したのが五日前だったので、そう言ったが、納得したような表情を見せている。その時には俺の顔は見られていなかったようで良かった。
怖かったが助かった。
「――ところで、黒曜の騎士ってヤツを知らないか?」
いきなりアラタが黒曜の騎士の話題を出した。
「え、えぇ。放送で名前を言っていたわ。確か、異変を解決した謎の戦士よね?」
「そうだ。ヤツはマオウグンを一人殺したからな。そして、鬼の事件現場にも現れている……。要注意なヤツだ」
アラタも放送を聴いていたのか。それも、禁断の果実にまつわる異変を報告した時から。
黒曜の騎士を警戒しているようだか、まさか目の前にいるこの美少女がその正体だとは思うまい。




