アラタと鬼の元凶について
「え、ええ。わかったわ。私の世界で唯一生き残ったのがあなたなんだもの。私はずっと付いていくわ」
内心めっちゃくちゃ不服だが、話を聞き出すために仕方なく彼女になってやろう。ラノベじゃあるまいし、そんな簡単に女の子が好きになってくれる訳ないが、この際仕方ない。好きって言った方が警戒は薄まるだろうしな。
「キター!ついに俺にも春が訪れた!へへへ……!」
アラタはそう言って何かを企んでいる様子で薄ら笑いを浮かべている。これは……同じく二次元のオタクだった俺にはわかる。エッチな妄想をしているに違いない!俺をイメージしてあんな事やそんな事を……想像したら気持ち悪いが、シェーナさんでやっていた俺には文句が言えない!
「それで、アラタはこの異世界で何をやっているのかしら?」
「それを言うなら、マカロンさんの方もだろ。神様なのになんで働いてるんだ?」
「それは〜〜、神様だけど大した力が無いしお金も無いから働くしかないなー、って思って」
本当は億万長者と言えるほどの金額を持ち込んで異世界にやってきたが、マオウグンはエイダのようにお金を持っていないだろうから嘘をついた。コイツだって、お金持ってるならわざわざ万引きする必要がないし、一銭も持ってないんだろう。
「働くとか良い子ちゃんかよ。盗んだ方が楽だろ」
鬼と違って見た目は普通だし普段は割とまともに振る舞えているから労働すれば良いのに面倒だからという理由で盗みを働いたのか。前はサラリーマンで、異世界来てからも働いている俺を見習えよ!
「私みたく傷付く人がいるんだから盗みはダメよ。働いて買って?何を集めてるかは知らないけれど」
「あぁ。実はあと、この部品を取り付けるだけで兵器が作れるんだよ」
「兵器……?」
やっぱコイツ、盗んで集めた物で何か危険な物を作っていたのか。しかも、完成する一歩手前だった。……本当に危ない。もしもコイツが他の店で盗んでいたのなら今頃完成しているところだったしめっちゃラッキーだった。
「この世界には魔法っていう概念があるらしく、その原理を本で勉強して解析して、炎魔法を用いた兵器を使った。俺って理系だからさ、現地の物で武器を作れるんだよね」
「なるほど……」
恐らくエイダと同じで魔法を使えないはずなのに、魔法の仕組みを勉強して兵器を作っただと?エンジニアしてただけあってものづくりは得意なんだな。
「そうだ。前に放送で森に鬼が出たって言ったんだけど、アラタ何か知らない?」
せっかくだし、森に現れた鬼の異変を起こしている元凶と知り合いじゃないか聞こう。あわよくば本人の居場所や姿が判明すればいいが。
「……アイツの仕業だな。俺はアイツ嫌いなんだよ。森に居たのに追い出されたしさ。あんなに頭悪い脳筋のくせにめっちゃ強いから気に食わない」
なるほど、アラタは元は森に潜んでいたが鬼を率いるリーダーが現れた事によってティエスカに行かざるをえなかったのか。しかもめっちゃ強いだと?なんだか、マオウグン達の中でも強さによって上下関係ができあがっている気がする。
「じゃあ、ずっと森に居たの?食事や睡眠に洗濯とかどうしてたの?」
森の中で過酷なサバイバルをしていたのか?その割には痩せているようには見えないし、そもそも服も綺麗で体臭も臭く無い。……一体なぜなんだ!?
「マオウグンは食事や睡眠の必要が無いからな。どっちもしなくても生きていける。ただ、人になりすます時の為に一応はできるぞ。あと服は勝手に綺麗になる」
エイダは食事も睡眠もしていたけど、アレは俺に怪しまれないようにやっていたんだな。睡眠も食事も要らないって、本当に人間なのかコイツら?
「……鬼なの?森方にいる人って」
「あぁ。額から角が生えている」
「どこに居るかわかる?」
「知らねぇよ。森のどこかで鬼を生み出してるんじゃねぇか?」
「鬼を生み出す……!?」
一瞬、どういう事だ?と思ったが、思い返すと鬼は球から現れていたので、元から人間ではなく兵器として作られたと考えれば納得はできる。
「アイツは鬼を作れるんだ。どうやっているかは詳しくは知らないがな」
「なるほど……」
「なぁ。さっきから俺の事以外に質問し過ぎじゃないか?」
うっ、マオウグンについて探っている事がバレたか!?さすがに森にいるマオウグンは今そんなに関係ない話だったからアラタが機嫌を損ねてしまった。本当は自分個人に対して興味を持ってもらいたかったのだろう。
「いや、放送で言ってたから知らないかなー、と思って質問しただけよ!」
「……本当か?」
「本当よ!」
このアラタという人間、話を聞いた感じだと、信じられずに仲間を殺せるくらい人間不信が強いタイプだ。俺が「信じて!」と言ってもすぐには信じてくれない。というか、俺が女神だと言うことすら本気で信じてはいないのだろうな。
「……なぁ。マカロンさんはこの世界に来て何日目だ?」
えっ、まさかそんな事を聞かれるとは思ってなかった。えーと、どうすればいいんだこれ。アラタより先に来ていたら「俺がアラタを追って異世界に来た」という設定と矛盾してしまう。仕方ない、ここは勘で構えるしかない!
「えぇと……五日前よ」
「五日前か……」
すると、アラタは納得したような表情を見せた。五日前にアラタと遭遇したのだが、その時には俺の顔は見られていなかったらしい。あー、良かったー。ビビって生きた心地がしなかった。
「なぁ。黒曜の騎士ってヤツを知らないか?」
いきなりアラタが黒曜の騎士の話題を出して来たぞ。会った事がないから面識無いのに、なぜコイツは黒曜の騎士を探ろうとしているんだ?
「え、えぇ。放送で名前を言っていたわ。確か、異変を解決した謎の戦士よね?」
「そうだ。ヤツはマオウグンを一人殺したからな。そして、鬼の事件現場にも現れている……。要注意なヤツだ」
アラタも放送を聴いていたのか。それも、禁断の果実にまつわる異変を報告したときから……!どうやら黒曜の騎士を警戒しているようだか、まさか目の前にいるこの美少女がその正体だとは気付かないだろう!




