第97話 対面エゴサーチ
新しく別の魔力パズルを手に取って、マナBさんと同じで両手で包み込んで……これで準備はオッケーだ。
「いらっしゃいませー!」
「……ませー!」
その時、新しく他のお客様が来られたのでエオルの挨拶に滑り込む形で同時に挨拶した。あっ、今が仕事の真っ最中なの忘れてた。
「えーと、ムクロンさん。店の奥でお二人に教えていただくのはどうですか?」
「店員が営業時間中に堂々と遊んでいるのは如何なものか」と思ったエオルから魔力パズルに対する指南は店の外でやってと提案を受けた。三人で固まって話してたら邪魔なので、場所を変えた方が良いだろう。
「えっ、私たち帰った方がいいですか?」
「店長さんが後で教えるのはどーすか?」
「あ、僕は魔力無いので教えられません」
「「あ……。すみません」」
二人は遠慮して帰ろうとしたが、体内にある魔力がゼロに等しいエオルはそもそも魔力パズルに取り組む事ができなかった。
彼女達は、自分たちが教えるしか無いと責任を感じて残る事を決めてくれた。
「それじゃ、奥の方に行こっか」
「ウチらが教えてあげるー」
そうして、自分の部屋なのになぜか二人に招待されるような形で店の奥へと引っ込んでいった。
冷静に考えたら、これって女子高校生くらいの年齢の二人組を自宅に連れ込んでいる事になる。俺が男だったらいやらしいシチュエーションだが、同性なのでセーフだ。
「ここって誰の部屋?」
「物が全然なーい」
「ここは私の部屋だけど……椅子が二つしかないから二人はそこに座って、私はベッドに腰掛ける」
俺はベッドに座ったのだが、二人は椅子に座ろうとしなかった。
「えーっ。教えるなら近い方が良くない?」
「そうそう。近い方がいいよね」
そして、二人はベッドの方にやって来て、俺を挟むようにして隣に座った。
自室のベッドの上で美少女に挟まれるとか初めてなのでめっちゃ緊張してしまう。
「……ねぇ、やらないの?」
「ウチら待ってるんだけど?」
「まっ、まだ心の準備が……!って、パズルの事か」
「「プッ、アハハハハハハ!!」」
うっかり童貞みたいなリアクションをしたら二人のマナに笑われてしまった。
「大丈夫。私達だって初対面の子を襲うことはしないって」
「そうそう。こういうのは仲良くなってから……ね?」
二人が何か百合の香りがする意味深な会話をしたが……ひとまず本題に戻ろう。
「じゃ、じゃあ早速試そう!」
手のひらに収めた魔力パズルに魔力を注ぎ込んでみる。
「ぐぬぬ……!あっ、ダメだ。魔力が太過ぎて穴に入っていかない気がする!」
魔力を穴に入れて鍵状に変化させて開けるというギミックなのだが、力んでしまったせいか魔力を注ぎ過ぎて穴に入らなくなってしまった。
エオルが危惧した通り、俺の膨大な魔力量では量を調節した繊細な操作が難しいようだ。
「力の入れ過ぎかも、リラックスして」
「肩の力抜いてー」
二人からそうアドバイスをもらったのだが、初めて体験する事であるのに加えてあの日なので思考が乱れてなかなか魔力を抑えられない。
「スゥー、ハァー。……もう一回!」
深呼吸して気持ちを落ち着かせ、リラックスした気分でもう一度チャレンジする。今度は細く通すのを意識する感じで……。
「ぐぬぬぬ……。抑えて抑えて、まずは入れないと始まらない!」
数分に渡って挑戦していると、魔力がスルッっと穴を通って抜けて行った感覚がした。やった、初めての成功だ。
「キタッ!初めて入ったよー!」
「おー、おめでとー!」
「行けたら気持ちいいよねー、おめでとー」
やっとスタートラインに立てた事を全員で祝福する。
これによって感覚を掴めたのか、パズルをサクサクと進めていく事ができるようになり、店に置いてある分は一通り解けるようになった。
「むむむ……。あっ、開いた!」
「すごっ、もうマスターしてるじゃん」
「天才か?」
良かったー。これでとりあえず勝負が成立するくらいの腕前にはなれたはずだ。あんまり教えてもらっていないけれど、練習に付き合ってくれたし二人には何かお礼をしなきゃな。
「ありがとう二人とも。お礼に商品安くしとくよ」
「えー、別にいいよ。私何にもしてないしさ」
「そうそう。別に大丈夫ー」
お礼を断るとは、なんとできた子達なんだ。練習にも付き合ってくれるし、人の気持ちを考えられないジライよりも軽く一百倍は優しい。
「あとは焦らなきゃいけそう。……二日目だけど」
「「あー…………」」
無言で辛さを共感し合う乙女達(俺の心は男だが)。
「ま、頑張ってね」
「今度結果教えてねー」
「あ、見には来ないんだ」
俺の対戦相手であるジライとはクラスメイトとの事なので、興味があるなら時間や場所を知らせようとしていたのだが、どうやら皆無らしい。
「だって……ジライちゃんと会うと面倒だし」
「ほんとそれな」
「へー、そうなんだ」
ジライの見た目だけは可愛かったが、性格がキツイし地雷系とかで、同性から嫌われるタイプなのだろう。
「それじゃ、お邪魔しましたー」
「またねー」
「あっ、ちょっと待って!」
二人は店に戻るためにそそくさと部屋から出ようとしたが、俺は彼女達を呼び止めた。
「「なに?」」
「いや、そのー、二人は黒曜の騎士の事ってどう思ってるの?」
彼女達とは今までも何度か会っているが、その時に黒曜の騎士に関する事を話している事が多いので、ちょうどいい機会だし直接聞いてしまおう。
「えーっ、そんないきなり……。街のみんなはいろいろ言っているらしいけど、私はヒーローみたいにミステリアスでカッコいいから好きだなー」
おっ、マナAさんは俺の事が好きって言ってくれてる。
うへへ、嬉しくてニヤけそうだけどバレちゃうから我慢我慢。
「ウチが思うに、トピエ団長は黒曜の騎士とくっつくんじゃない!?」
「なっ!?なんでそう思ったの!?」
そんなに絡みが無いのに変なカップリングができあがっている。
いやでも、黒曜の騎士として一番長く会話したのはトピエさんだから妥当なのか……?
「黒曜の騎士との会話の事を思い出していたトピエ団長はなにか様子がおかしかったし!」
えええ……。トピエさんは俺の事が好きなのか?出会ってすぐだし素顔も知らないのに?
捕まったら交際を申し込まれたりするのかな。なら捕まってもいいか……。
いやいや、捕まって素顔がバレたら男として生きられなくなる。それに、トピエさんだってきっと男性と付き合いたいはずだ。正体が一十八歳の美少女だって知ったらブチギレるに違いない。
「アハハ……。ありがとね二人とも。話ができて良かったよ!それじゃ、また今度ね!」
そうして、二人は俺の部屋から出て、買い物して帰っていった。
全員が疑っているわけじゃなくて、黒曜の騎士にファンがいる事を知れて嬉しかった。おかげで俺のメンタルも回復できた。
「お待たせエオルー、パズル解けたよー」
「おかえりなさいムクロンさん。それと、犯人は現れませんでしたよ」
「オッケー、了解」
仕事が終わるまで二人で注意して観察していたが、結局その日は犯人が現れる事はなく、商品が盗まれた形跡もないなど平和に業務を終える事ができた。
裏設定:マナA &マナBはビアンカップル




