第96話 仲良し女子二人組の秘密
「あ〜、どうしよう……。い、いらっしゃいませ〜」
勝負の事が不安で仕方ないが、切り替えて目の前のお客様に対応する。
「……なんていうか、店員さんも災難だったね」
「ジライちゃんって人の話聞かないからねー」
常連である、仲良し女子冒険者二人組はそう言って俺を励ましてくれた。「ジライ」というのが、先ほどの少女の名前だろう。
だとしたら名は体を表し過ぎているほどピッタリなネーミングだ。
「二人は知り合いなの?」
「そう。中三の時に同じクラスだった」
「同じくー」
その割には、先ほどバッタリ会った時もお互いに気まずそうな顔をしていたので仲はそれほど良くなさそうだ。
「魔力パズルでジライと勝負する事になったんだけど勝てるかな?」
知り合いならジライの魔力パズルの実力を知っているかもしれないので質問する。
「えー、知らないし興味なーい」
「ウチらと同レベくらいじゃね?」
相手の実力を知る事はできなかったが、二人が魔力パズル経験者である事がわかった。
「魔力パズルやった事あるの?」
「まぁね。普通の人よりは得意な気がする」
「じゃあ、ウチらが教えたげよっか?」
「お願いします!」
偶然、魔力パズルに詳しい人が訪れてくれてラッキーだった。ようし、勝負は明日の昼だから時間も無いし、今仕事中だけどこの二人に教えてもらおう。
「オッケー!マナ、私が教えるべき?」
「えー、マナよりウチが教えたいなー」
……うん?なんか、今の会話おかしかったぞ。
「え?今の会話どういう事なの?」
「あー、そういや言ってなかったっけ」
「ウチらって名前同じなの」
「あぁ、そういうことか……!」
なるほど、二人とも名前が同じだったのか。今まで何回も来てくれたのに全然知らなかった。
名前被りも、当然この世界にあるんだな。
ファミリーネームが無いから、被ったら完全に同じ名前になる。
「不便じゃない?名前が同じ人と仲が良いってさ」
「えー、そう?」
「逆に、同じ名前だから友達になれたんだよねー、ウチら」
へえ、そんな出会い方もあるんだな。俺の学校でも苗字同じ人は居たけど仲悪かったし、この二人って別に名前が同じじゃなくても仲良くなってそうな気はするが。
「えぇと、じゃあマナさん」
「なに?」
「えー、どっちの事?」
「えぇと、昨日の報告会で喋っていた、一人称がウチの方」
「あっ、アレ聞かれてたのかー!恥ずかしいー」
一人称がウチで魔法使いの格好をしている方のマナは昨日の出来事を思い出して照れている様子。
「どっちを呼んでるかわかるようにする方法ってあるの?」
あまりに不便なので、別の呼び方ができないかを本人達に聞く事にした。
「それじゃ、こうするかー。私がマナAね」
「ウチがマナBでーす」
わかりやすくしろとは言ったが、ゲームでモンスターが複数いる時に用いるアルファベットを自分たちの名前につけるとは思わなかった。
一人称が「私」で剣士の格好をしているのが「マナA」さん、一人称が「ウチ」で魔法使いの格好をしているのが「マナB」さんだ。
「気を取り直して、マナBさん。魔力パズルの指南をお願いします!」
「オッケー。お店にあるヤツ借りるねー」
マナBさんは球体の形をした魔力パズルを持ち準備が完了した。
「いくよー。でも基本的には感覚というか、魔力が今これのどこにあるかをイメージして、中の物を動かして開いて行く感じー……。はい、開いたー」
魔力パズルに半分に切れ目が入ったかと思うと、そこが割れて魔力パズルがちょうど半分ずつに別れてしまった。
「え!?壊れちゃったのこれ!?」
「大丈夫。また合わせたら自動で閉まっていくから。どう?これで参考になった?」
「う〜ん……。実際にやってみようかな」
参考になったかと言われればなったが、説明自体はよくわからなかった。
百聞は一見に如かずともいうし、俺も実際に触ってできるかどうか確かめよう。




