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第89話 あとは村人に任せよう

「"無重力(ログラ)""飛行(フラウェ)"!クソッ、間に合ってくれよ!」


 リーダー格を倒したのに鬼達が消えなかったという事は、先程の黒子が異変を引き起こしていた元凶では無かったという事になる。が、それについて考えるのは後回しだ。


「そろそろ魔力も少なくなってきたな……」


 魔法を連発したのと、回復に魔力を使ったので体内の魔力が底をつき始めている。黒曜の鎧はいたるところがボロボロになっているが、次第に自己修復が始まった。


「マズイ、もう家の近くまで迫っている!」


 高速で飛んで村まで戻ったが、鬼達はもうすぐ村人達の居る場所まで到達しそうだった。だが、今すぐ攻撃すればギリギリ間に合う。


「"雷の牙(サンダー・ファング)"、"雷の牙(サンダー・ファング)"、"雷の牙(サンダー・ファング)"!」


 鬼達がまとまって行動していたおかげで、大技を続け様に三発撃っただけで全ての鬼を撃破し、バラバラにする事ができた。


「ふぅ……。あっ、まだ最初の鬼が残ってる!」


 息を整える暇も無く、最初に村人達に任せた鬼を探しにいく。

 すると、一体の鬼が村人達を鋭い爪を用いて襲い、ムキムキの村人や最初に出会った村人も深い傷を負っているのを見つけた。

 しかし、精一杯抵抗したおかげで鬼の方も既にボロボロになっている。


「くらえっ!」


 鬼のすぐ近くに居る村人に魔法が当たっては危険なので、飛んで近付いて鬼の首を切断した。


「グギャッ」


 攻撃は見事に鬼の首筋に直撃し、ごろんと鬼の首が地面に落ちた。すぐに首元から黒い煙が出始めたが、この状態でも襲ってくるので注意しなければ。


「バリア!」


 やむなく魔力の消費がかなり大きいバリアを鬼の頭と体がある場所に張り、その二つを覆った。

 ――これで、鬼は隔離できた。


「大丈夫か?今治すからな!」


 深い傷を負っていた村人達をその場で回復させ完治させた。……回復やバリアを使ったせいで魔力がほとんど残っていない。


「そうだ、もう一体の鬼はどこに!?」


 最初に村人達にお願いしたのは二体だったはずだが、今この場に居るのは一体だけだ。


「もう一体は俺達が倒したよ。ヒールありがとな、おかげで助かった!」

「おおっ。やるな……!」


 よかった、俺みたいにめっちゃ強い人じゃなくても、頑張れば鬼を倒せるらしい。

 マオウグンは死んだら死体が残らず完全に消滅するから、逃げたのか死んだのかわかりにくい。


「なんだったんだ、今の化け物は……?」

「あっ。スゴい筋肉……♡」


 ムキムキでワイルドな男は服が破れてセクシーな筋肉が露わになっていて、ちょっとドキッとしてしまった。まずいぞ、だんだん精神が肉体に引っ張られている気がする。

 気を取り直して、彼らに鬼についての説明をしよう。


「――コホン。今のは、鬼と呼ばれる怪物だ」

「オニ……?」

「とても凶暴で、死んでも消滅するまでは攻撃し続けるから要注意だ」

「消滅って、おかしくねぇか?死んだら黒い煙になる生き物とか知らねぇぞ?」


 始めに出会った、斧を持った村人は激しく困惑していた。この世界でマオウグンについて知っている人が少ないから、誰でもこの不可解な現象について戸惑うだろう。俺だって初見じゃビックリしたし、無理もない。


「ヤツらはそういう、特殊な存在なんだ。マオウグンっていう、えーっと……悪い集団だ」


 なんて説明すれば良いのかわからない。「異世界から来た木や鬼が所属する集団」って言っても混乱するだけだろうと思って要約したが、悪の軍団以外の単語が出てこなかった。


「なるほどなー。でも、お前はなんでそんなに詳しいんだ?」

「俺はソイツらを倒す事が使命だからさ」


 そういや、ここにもあとで国の調査団が来るって言っていた。調査団メンバーは恐らく全員ワープを使えるし、トピエさん以外にもワープサーチ持っている人が居そうだ。

 見つかったら面倒だ。今の俺はボロボロなので、戦ったら分が悪い。


「ここにもうすぐ国から調査団が派遣されると思うから、今この村で起きた事を君たちが伝えてくれ」

「あぁ……。了解した」

「おう、わかった。だが、お前からは伝えないのか?」

「あいにく俺は信用されていないっぽくてね。それじゃ、あとは任せたぞ!」


 調査団がいつ来るのかはわからないが、聞き込みを兼ねてまずはこのスービエ村を訪れるはずだ。俺が直接国に報告するのができない現状、あとは村人達に任せるしかない。

 かなり疲れたから部屋にワープして帰ってきた。


「あーっ!疲れたーーー!!」


 帰ってくるなり、すぐに鎧をポーチにしまって魔力回復薬を飲み、ベッドに倒れ込んだ。

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