第88話 鬼の捕獲を目指して
「剣で……いや、再生しないという保証は無いな」
エイダの場合は斬られた腕が一瞬で再生していたのだが、今回はあの時とは違う。
エイダ自身が木の人間だったから再生能力があった可能性がある。現に、下っ端の鬼は再生能力が無かった。
異変の元凶と戦うのは今回が二回目なので、マオウグンに関する情報がまるで足りていない。
「魔法で弱らせたいが……効くかどうか試そう!」
先程、炎魔法で攻撃された時は全く効かずに吸収されてしまったが、炎以外なら通用するだろうか?一度、異なる属性の魔法を、魔力を抑えて放ってみる。
「"放電"!」
「ぬおっ!?」
素早く雷の魔法を当てると、黒子は痛そうな声を出して、布にも少し傷が付いた。
どうやら雷魔法は通用するらしいので、炎だけを吸収してしまうようだ。
「うおおおおおお!これでどうだ!」
両腕からずっと雷を発生させて黒子に攻撃し続けていく。
「ぐおおおおおっ!?」
着実にダメージを与え続けられている。そして、見たところ再生や回復しているようには見えない。
顔が次第にボロボロになっているのに治る気配がないのだが……これは絶え間なく攻撃しているせいなのか?
攻撃をやめた途端に治る可能性もある。
「ぐううっ……!やめんか!」
「あぶねっ!」
黒子が手に持っていた鉄扇のうち一つをこちらに投げ付けてきた。
慌てて回避できたが、電撃を浴びせるのをやめたせいでヤツを脱出させてしまった。
「ケホケホッ……フーッ」
身動きの自由を取り戻した黒子はおもむろに袖から、鬼が飛び出る丸い玉を取り出し、それをスービエ村に向かって投げた。
「なにッ!村を狙っただと?なっ、鬼があんなにたくさん……!」
並大抵の戦力を持った人では敵わない鬼が、スービエ村付近に一十体も現れてしまった。そして、ヤツらは走って村に向かっていく。
――このままじゃ、村のみんなが一方的に殺されてしまう。
「"フラ……"!」
またしても、鎖分銅をくらってしまい、飛ぶのを阻止されてしまった。
「くっ、またか!」
「先程の礼、たっぷりさせてもらうからのぅ」
「二度同じ手はくらうまい」と、鎖を常にピンと張れて歩きながらも手元に一つ残った鉄扇を構えて近付いてくる他、鉄扇を常に体の前で構えている。
これじゃ、頭突きなんてしたら俺の頭に刃物が突き刺さるだけだ。
「さて、ウヌを殺して、村の記録を取るとするかのぅ」
これはヤバい……。もはや、俺か黒子、どちらかが死ぬか決まる状況になってしまった。
黒子を弱らせて人間に戻したとしても、村に向かっている鬼達が消滅する訳じゃないだろうし、もはや、弱らせて捕まえる暇もない。
可哀想だが、村にいるフォイユさん達やみんなを守るためにこの黒子は倒し――いや、殺さなければならない。
だが、どんな方法で倒すべきだろうか。縛られてて剣もまともに動かせないので魔法でなんとかするしかないが、運悪く手の平が俺の体の方を向いてしまっている。
――ここは、自分ごと相手を攻撃するしかない。
「"電爆撃"」
「ん、なんじゃあ!?」
ドラゴンをワンパンで倒す事ができるほど強力な雷魔法を、自分の体を中心として発動させる。
発生した大きな雷の球に黒子も巻き込まれた。
「ぐおおおおおっ!?」
「いてええええ!!!」
黒曜の鎧でかなりダメージが軽減されてるとはいえ、高火力をくらっているので激痛が全身を襲う。
特に、手のひらが当たっている部分はひどかった。
「はぁ、はぁ……終わった。ヒール」
すぐにヒールで治せるので痛いのがずっと続かないのが本当に助かる。
もしこの回復機能が無かったらこんな自爆攻撃は死んでもやりたくない。
「ヤツはどうだ……?」
黒子の様子を見ると、全身がボロボロになった地面に倒れており、次第に来ている布を含めた全身が黒い煙に変わり始めた。身動き一つ取れていないので、このまま完全に消滅するはずだ。
「これで鬼も全部消えるはず……」
手を合わせて死者を弔ってから、村へと向かっている鬼が消滅したかどうか確認する。異変の元凶が居なくなったので鬼も消え始めるはずだが……。
「ウソだろ……。消えてないじゃねーか!」
リーダーが死んだというのに、鬼は依然として存在し続けて、村への侵攻を進めている。体が黒い煙に変わっていく気配は全くない。
これはマズイ、早く鬼達を退治しに向かわなくては。




